第5回 なす本来の味がする江戸東京・伝統野菜が復活
雑司ヶ谷なす
取材協力/江戸東京・伝統野菜研究会代表 大竹道茂
大竹道茂の江戸東京野菜通信 http://edoyasai.sblo.jp/
なすを生でかじって「甘い」と感じたことがあるだろうか。
今回取材した江戸東京・伝統野菜の「雑司ヶ谷なす」は甘い。市場に出回っているいわゆる「千両なす」と食べ比べてみてもあきらかに違う。皮も厚く、硬く、口の中でキュッキュッと音がなるほど。
「これが本来のなすの味です」と雑司ヶ谷なすを今年から栽培し始めた練馬区の農家・加藤和雄さんは言う。
雑司ヶ谷なすは、現在の豊島区雑司ヶ谷一帯で栽培されていたもの。西山(中野・豊島以西の丘陵部)と呼ばれた地域で栽培されていたので、別名「山なす」と呼ばれるようになった。
今年から、JA東京あおばが江戸東京・伝統野菜復活プロジェクトの一環として、豊島区立千登世橋中学校で復活の取り組みを支援しているが、加藤さんは生産農家として育苗などの協力をしている。
「どういうなすができるのですかと加藤さんに聞かれましたが、初めて栽培するので、“できてみないとわからない”と答えるしかなくて(笑)。うまくできたとしても果たして売れるのだろうかと不安はありました」とJA東京あおば地域振興部の伊藤信和さん。運よく、病気にもほとんどかからず、初めての栽培にしては上出来で10月ころまで収穫できそうだという。評判も上々で、加藤さん宅の近所にあるJA東京あおばの直売所「こぐれ村」ではオープンと同時にほとんど売切れに。このほか、2カ所の直売所と学校給食、地元のホテルにも出荷している。
「形が揃いにくいし色ぼけもしやすい。でもそれが伝統野菜の特長なのでしょう。直売所に並ぶのを待っていてくれる人のためにも、来年も挑戦してみます」
●JA東京あおば直売所こぐれ村
練馬区大泉学園町2‐12‐17 TEL:03・3925・3113(10時~17時、水曜休)
本記事でご紹介した「雑司ヶ谷なす」を使った料理「雑司ヶ谷なすの翡翠煮」の作り方はこちらをご覧ください。