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2010年12月20日号
第18回 大蔵大根
江戸時代、豊多摩郡(現在の杉並区あたり)の源内という農民が作ったといわれる「源内つまり大根」が世田谷の大蔵原に伝わったのが大蔵大根。全体が艶やかな純白で、根の上部から先の方まで同じ太さの円筒形で先端が丸くつまっているのが特徴だ。昭和40年代までは世田谷区のいたるところで栽培されていたが、いつの間にか病気に強く栽培しやすい青首大根に取って代わられてしまった。しかし、10年ほど前から栽培しやすい交配種(F1)の大蔵大根が栽培されるようになった。
今回うかがったのは、小金井市で「江戸東京野菜でまちおこし」のプロジェクトに参加している農家、高橋健太郎さん。26歳という若さで、ほとんど一人で農園をきりもりしている。高橋さんの大蔵大根は固定種だから伝統の品種だ。大蔵大根は農業を始めた4年前から栽培。「毎年1000本ほど収穫して近郊の学校給食や直売所などに出荷していますが、今年は猛暑の影響で初めに蒔いた種が全滅。200本くらいになりそうです」と高橋さん。「伝統野菜はほかの野菜に比べて不揃いでロスも多い。でも困ったことやわからないことがあると、近所の農家の先輩たちがアドバイスしてくれる。僕は周囲の人たちに恵まれているんです」
高橋さんはJA東京むさし小金井直売会「小金井江戸東京野菜研究会」の副会長も努め、小金井地区農業の貴重な担い手の一人となっている。
「自分で種を蒔き、育て、それを食べておいしいと言ってくれる人がいる。それがうれしくてたまらないんです」と照れながら話す高橋さんの笑顔と、まっすぐに伸びた大蔵大根の艶やかな白さがまぶしかった。
本記事でご紹介した大蔵大根を使った料理「大蔵大根とベーコンのスープ煮」のレシピはこちらをご覧ください。