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2010年10月20日号
第16回 つまもの⑥ 穂じそ
しそは芽、穂、葉を利用する一年草。原産はミャンマー、ヒマラヤおよび中国で、アジアの温帯地域に広く分布しているが、日本へは非常に古くから渡来し、各地の縄文時代の遺跡から、しその種や実の出土例がある。
しそは、花が開き始めたものを花穂、花が終わりかけた頃、まだ熟さない実をつけた状態を穂じそ(束穂とも言われる)と呼ぶ。どちらも日本料理を彩る代表的なツマものだ。
今回うかがったのは足立区・扇で15代続く農家、阿出川信夫さん。穂じその栽培は、先代が戦前から始めた。「しその花は下から咲き始めます。収穫は花が終わるのと実がつくタイミングが肝心」と阿出川さん。早く収穫すれば花の部分が多くなり、実が未熟。花の終わりを待ちすぎても今度は実が硬くなり、穂じそ本来の柔らかな触感が損なわれる。熟練の感と経験が頼りだ。
栽培期間は約4か月。阿出川さん宅では、種まきを1番から3番と称し、5月の連休明けから少しずつずらしながら露地で栽培している。「通常なら今は3番のものを収穫しますが、今年は酷暑で1番が全滅。ようやく2番目が収穫でき始めたところです」
また、日照時間が短くなると花が咲き始めるはずが、町の街灯の光が原因で開花が遅れてしまうという。「カバーをかぶせてほしいとお願いはするのですが、なかなかそれも難しい。住宅街の畑なので農薬にも気を遣います」
都心部で伝統野菜を作り続けていくには、気象条件だけではない気苦労があったのだ。