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2010年1月20日号
第8回 東京うど
うどは、数少ない日本原産の野菜の一つ。国内では各地に自生し、古代から山菜として食されてきた。
うどの軟化栽培が江戸に伝わったのは江戸時代後期の文化年間(1800年代初め)頃とされ、「井荻うど」や「吉祥寺うど」と呼ばれていた。特に冬から春にかけては野菜が不足していたことから、この時期に生産されるうどは独特の歯ざわりと香りで、江戸庶民に歓迎された。戦後、東京では関東ローム層を利用した穴蔵栽培法が開発され、現在、「東京うど」のブランドで取り引きされている。
練馬区立野町の農家・井口良男氏のお宅では、東京うどの栽培は古く、江戸時代から現在まで続いている。井口氏は竪穴式のムロではなく、主にビニールハウスの中で土を1メートルほど掘り下げ、天井部分をムシロで囲いトンネル状にした真っ暗の中に株を植える「おかぶせ」の方式で東京うどを栽培している。ハウス内を15~16度に保つ温度管理が大変で気を遣うそうだ。伏せこみから約1カ月で出荷となる。
「東京うどは連合会で規格が統一されています。規定の箱に入れる出荷の目安は約80センチ。その頃合をはかるのが難しい。日に当てないように日が暮れてから懐中電灯で照らしながら様子を見る」という。「東京うどは、まず自家の畑で種株を育て、翌年に高冷地の農家に委託し根株を栽培してもらうので、収穫までに2年かかります」と井口氏。手間がかかるうえに、骨が折れる作業の割には採算をとるのが難しい。
春を告げるあの香りと歯ざわりは、篤農家のたゆまぬ努力と知恵なくしては存在しないのだ。
本記事でご紹介した東京うどを使った料理「東京うどとせりのザボンサラダ」の作り方はこちらをご覧ください。