

第11回 300年の歴史ある農園で新しく始まった
イチゴ
取材協力/江戸東京・伝統野菜研究会代表 大竹道茂
大竹道茂の江戸東京野菜通信 http://edoyasai.sblo.jp/

今年新設した「章姫(あきひめ)」は長さ50m、3列の高設でおよそ1200苗を栽培。 イチゴ狩りの際に車イス、ベビーカーが入れるようにゆったりと幅をとっている
真っ赤な果皮と緑のへたのコントラストが美しく、ジューシーな甘酸っぱさが子どもから大人まで親しまれているイチゴ。その品種は100種類以上にもおよび、最近では1粒何千円もするイチゴも登場している。
調布市の農家、斉藤修太郎さんは、市内に4軒あるイチゴ農家の一人。冬場の直売所にイチゴのような赤みのあるものを置きたいという思いから、練馬区のイチゴ農家に指導を仰ぎ、6年ほど前から「紅ほっぺ」を栽培している。

今年は寒さと日照不足のため1か月ほどの遅れで生育している
斉藤さんは水耕栽培では味わえない“土の力で育てたコク”にこだわり、高設土耕で栽培。肥料も必要以上に与えず、イチゴ本来が持つ甘さを引き出している。今年からイチゴ狩りを始めるために紅ほっぺとの味の違いがわかりやすい「章姫(あきひめ)」の栽培にも取り組んだ。
「紅ほっぺが甘酸っぱいのに比べ、章姫は甘みが強い。来てもらった方々に好きなほうを選んでもらえれば」
斉藤農園ではイチゴ以外にも米、タマネギ、ジャガイモ、トウモロコシなど10種類以上の農作物を栽培。トマト狩りやタマネギ収穫、田植えなどを通じて消費者に野菜や果物を身近に感じてもらえる体験型プランを推進している。

斉藤さんは約300年続く農家の11代目。6年前からはじめた「紅ほっぺ」は「オテル・ドゥ・ミクニ」へも出荷している
「農地が減ってきている今こそ、農業は地域の中の一つであることをアピールしたい。農作物を作って販売するだけではなく、 最終的には“田んぼの中のレストラン”を作って、本当の地産地消を実現したいですね」
農業は奥深くておもしろいと笑顔で話す斉藤さん。ベテラン農家とはまた違った新しい発想が東京の農業を牽引していくのだろう、と頼もしく思った。
●斉藤農園/調布市染地1-17-11
http://www.facebook.com/saitonouen
本記事でご紹介した「紅ほっぺ」を使った料理「紅ほっぺ(いちご)と春野菜のサラダ」の作り方はこちらをご覧ください。