第10回 若手農家が生産・流通に取り組む
亀戸大根
取材協力/江戸東京・伝統野菜研究会代表 大竹道茂
大竹道茂の江戸東京野菜通信 http://edoyasai.sblo.jp/
全長が30~40センチ程度で、先がクサビ状にとがっているのが特長の亀戸大根。文久年間(1861~64年)の頃に江東区亀戸で栽培がはじまったとされ、当地の香取神社では亀戸大根を奉納する「福分けまつり」が毎年3月に行われ、賑わいをみせている。
亀戸の右隣、江戸川区鹿骨でこの亀戸大根を栽培しているのは木村重佳(しげよし)さん。代々続く農家の14代目だ。サラリーマン時代を経て12年前に就農した。
「もともとこの辺りは小松菜の生産地。どこの農家も小松菜を栽培していて、安値安定状態でした。4、5年前に新しくビニールハウスを建て、小松菜の他に何か別のものを作ろうと思っていた矢先に、亀戸大根を専門に扱う地元の割烹店『升本』さんから亀戸大根を作ってみないかと言われたことが栽培のきっかけでした」
栽培当初は周囲に作っている農家もなく、どんなものができるのか不安だったというが、今では10月の終わりから5月中旬まで月に約5000本収穫できるまでになった。
また、木村さんは江戸川区の生産者で「東京野菜マルシェ」というグループを発足。東京産の伝統野菜の生産・流通に取り組み、升本以外にもミクニマルノウチ(中央区)やよしかつ(墨田区)、鴎外荘(台東区)などに出荷しているが、販売してもらえるところがまだまだ少ないのが現状だ。
「伝統野菜はまずどんなものか知ってもらうことが重要。生産者はただ作るだけではなく、どういうふうにアピールして売っていくか、表現者にならないと。そのためにも消費者の皆さんに直接畑に来てもらい、ここで行っていることを伝えていきたいんです」
木村さんは東京の農業を知ってもらうために見学会も随時行っていきたいと話していた。
●東京野菜マルシェ http://www.tokyo-yasai-marche.org/
本記事でご紹介した「亀戸大根」を使った料理「亀戸大根のいも床を使った浅漬け」の作り方はこちらをご覧ください。