第4回 都内で唯一「アイガモ農法」によって栽培される
無農薬米
取材協力/江戸東京・伝統野菜研究会代表 大竹道茂
大竹道茂の江戸東京野菜通信 http://edoyasai.sblo.jp/
「おいでーおいでー」という声に反応して、稲田の間からアイガモがピーピーとかわいい声で鳴きながら飛び出してきた。
ここは八王子市内で12代続く農家、澤井保人さんの水田。生まれたばかりのアイガモのひなを1週間ほど育て、田植えをした水田に放す「アイガモ農法」を都内で唯一取り入れている。
澤井さんがアイガモ農法を始めたのは平成5年。前年にドイツ・ミュンヘンへ農業研修に行き、日本でも環境に配慮した農業をやるべきではと考えたという。
アイガモを水田に放飼すると、雑草やいろいろな虫を食べたり、糞が稲の栄養になったりする。本来なら除草剤や農薬、化学肥料を使用しなければならないところを、アイガモの働きにより無農薬米を作ることができる。
澤井さん宅のアイガモも水田で活躍した後、11月には鴨肉になる。「この話をすると必ず『かわいそう』とか『あんなになついていたのに信じられない』と言われてしまいます」と澤井さん。
澤井さん宅で飼っているアイガモは家畜として生まれてきた品種で、マガモとアヒルの掛け合わせ。アヒルの血が入っているのでマガモのように空を飛ぶことはできない。もし『かわいそうだ』といって川や山に逃がしてしまえば、野生本来の鴨と交配してしまい、野生種の環境を破壊してしまうことになりかねないのだ。
「環境に良いことをしようとしてアイガモ農法を始めたのに、結果として環境を破壊することになってしまうんです」
そこで米購入者に事情を理解してもらい、鴨の肉も買ってもらうようにしている。澤井さん宅の無農薬米は予約制(キロ単位)。アイガモ農法を始めた当初は5、6世帯だった契約者も、今では50世帯を超える。
「アイガモの状態を毎日みたり、肉を売らなければいけなかったり、アイガモ農法は苦労が絶えません。でもうちの米を買ってくれる人がいる限り、やめることはできません」
そんな中、今年は特に放射能の問題もある。澤井さんをはじめ、わが国の水田農家たちにとって深憂の収穫時期が近づく。
澤井農場URL : http://homepage3.nifty.com/sawai-farm/
無農薬米などの問合せ:sawaifarm@nifty.com
本記事でご紹介した澤井農場の無農薬米「キヌヒカリ」を使った料理「キヌヒカリ玄米と夏野菜のサラダ」の作り方はこちらをご覧ください。