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2011年1月20日号
第19回 新宿一本ねぎ
ねぎの白い部分を使う根深ねぎ。その代表が千住ねぎである。もともと南葛西の砂村(現在の江東区東砂付近)で作られていたねぎが、千住付近の農家の手に渡り、育てられ銘柄化した。昔から千住市場で味に評判のあるねぎで、今の根深ねぎの多くはこの千住ねぎの系統から生まれている。
「新宿(にいじゅく)一本ねぎ」もそのひとつ。「一本」とは分蘖(ぶんけつ)せず1本の株のまま収穫できる根深ねぎのこと。新宿は水戸街道・千住宿から一つ目の宿場町で、現在も葛飾区の地名となっている。この地で代々農家を受け継ぐ矢作東一さんは、妻の安希子さん、息子の倉吾さんと新宿一本ねぎを栽培している。
「ねぎは2月に種を蒔き、収穫は12月と、ほかの野菜に比べて栽培期間が長い。その分、手間もかかります」と東一さん。6月~7月に苗を定植したあと、9月下旬、10月半ば、11月初旬の3回、専用の機械で掘り上げた土を葉のきわまでかける「土寄せ」を行う。白くて柔らかいねぎにするにはこの土寄せが欠かせないという。手間隙かけて育てられた矢作さんの新宿一本ねぎは、お歳暮用に直接販売されるとともに、JAの直売所に出荷している。
取材の当日は、葛飾区立新宿小学校の3年生48名が新宿一本ねぎの収穫体験を行った。これは、葛飾区教育振興ビジョンの一環である、食育推進事業に矢作さんが協力し、今回初めて実施したもの。
「子どもたちがどのような反応を示すか内心不安もありましたが、土を嫌がることもなく楽しく収穫し、後片付けまで丁寧にやってくれたのには驚きました」 翌日の給食に出された新宿一本ねぎは、収穫時の話題とともに完食されたことだろう