HOME » NEWS TOKYO バックナンバー » よみがえれ!江戸東京・伝統野菜シリーズ » 第1回 寺島なす
2009年8月20日号
第1回 寺島なす
浅草の北東、隅田川の東岸、墨田区東向島はかつて寺島といい、江戸の人々に新鮮な野菜を供給する近郊農村だった。元禄郷帳(1688~1704)によれば、この地域一帯は、水田を主としていたが、隅田川上流から運ばれてくる肥沃な土はナス作りにも適し、ここで作られるナスは、その名も「寺島ナス」と呼ばれていた。
収穫したナスは、船を使って千住や本所四ッ目、神田等の青物市場に出荷された。しかし、関東大震災により、下町は壊滅的な被害を受けたため、肥沃な農地は被災者の住宅用地に変わってしまい、以後、名産の「寺島のナス」は、幻のナスとなってしまった。
このナスを復活させようと取り組んでいるのが、東京都農林水産振興財団・食育アドバイザーの大竹道茂氏。農業生物資源研究所に保存されていた種子を取り寄せ、東京都野菜生産団体連絡協議会会長でナス作り名人の星野直治氏に依頼し、苗木に育て、かつて寺島ナスの名産地であった東向島にある第一寺島小学校で創立130周年記念事業として、全校児童らによる栽培が今年の5月から始まった。
大竹氏曰く、「卵くらいの大きさが肉質が締まって一番食べごろ」だとか。「幻の味」が食べられる日が待ち遠しい。