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2009年8月20日号
第3回 谷中しょうが
根っこの部分の淡いクリーム色にピンクの茎が映える谷中しょうが。
荒川区西日暮里・諏方(すわ)神社から見下ろす日暮里一帯は、江戸時代からしょうがの産地で、明治16年に上野~熊谷間に鉄道が敷かれるまで栽培されていた。周辺から谷中にかけては、江戸時代からのしょうがの産地で、農家の人たちは豊作祈願のために諏方神社を訪れたという。収穫時がちょうどお盆の時期にあたるため、商人や職人、谷中の寺社などが、お中元の贈答品に利用したことから江戸中の評判になり、しょうがの特産地となった。以来、「谷中」の名はしょうがの代名詞となり、今でも市場や居酒屋等で呼ばれている。
高級住宅が立ち並ぶ閑静な目黒区八雲という都心で6反(約6千㎡)もの農地を持つ栗山道彦氏は、5年ほど前から谷中しょうがを栽培している。「1年目は収穫時期をまちがえて失敗しました」と栗山氏。2年目、3年目は、しょうがの部分がどろどろに溶けてしまったという。「それが病気だとわかり、昨年からようやく収穫が落ち着いてきました」。谷中しょうがの旬は7月下旬から8月中旬と短い。収穫するタイミングも難しい繊細な野菜である。
訪ねた日に「これが一番旨い食べ方」と言われ、採れたばかりの谷中しょうがに味噌をつけてがぶり、といただいた。初めは爽やかなしょうがの香りとサクサクとした食感が口の中に広がり、次第に舌にピリリと辛味が増してくる。まさに盛夏にぴったりの伝統野菜である。