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大庭麗のイタリア食材紀行 第35回2017年04月20日号
第35回 地中海沿岸原産のカルチョーフィ(後編)
前号に引き続き、ルネッサンス期のイタリア絵画にも多く描かれた地中海沿岸が原産の野菜、カルチョーフィ(アーティチョーク)についてお話しします。
古くから地中海式ダイエットとして推奨されてきたカルチョーフィには、豊富なミネラル類をはじめ、糖分やたんぱく質の代謝が活発になるビタミンB群、体内での糖の吸収を抑え、血糖値の上昇を抑制する豊富な水溶性食物繊維などが含まれています。また、血中コレステロール値を低下させる働きや脂肪を分解しエネルギー代謝を高める効果もあります。
さらに、シナリンと呼ばれる独特の栄養成分があります。これは、チョウセンアザミを指すラテン語チナーラ(Cynara)を語源とするポリフェノールの一種で、肝機能を高める効果があり、古くからインドやベトナムなどでは、二日酔い予防にカルチョーフィを煎じて飲む習慣もあります。
実はこのシナリンは、おもしろい性質を持っていることでも知られています。口内にシナリンが入ると、一時的に甘みを感じる舌の味覚受容体の働きが麻痺してしまうのです。その瞬間にはこれといった自覚症状はありませんが、そのシナリン成分が消えた直後、うっすらとした独特な甘みを感じます。実際のところ、その甘みは一時的に甘みの感覚が麻痺することで、甘さに敏感になった口内で起こる錯覚なのだそう。
私はシナリンの存在を知るまで、その甘みの余韻は、てっきりカルチョーフィそのものの味だと思い込んでいました。そして、その味こそがカルチョーフィの美味しさであり、魅力だと思っていたのです。
その味にピンと来ない人もいて不思議でしたが、それがシナリンによる錯覚で、感じる甘みは人それぞれ異なると聞いて納得。みなさんもカルチョーフィを口にする機会がありましたら、ぜひその甘みの錯覚を体験してみてください。
<大庭 麗(おおば うらら)プロフィール>
東京都生まれ。2001年渡伊。I.C.I.F(外国人の料理人のためのイタリア料理研修機関)にてディプロマ取得。イタリア北部、南部のミシュラン1つ星リストランテ、イタリア中部のミシュラン2つ星リストランテにて修業。05年帰国。06年より吉祥寺にて『イル・クッキアイオ イタリア料理教室』を主宰。イタリア伝統料理を中心に、イタリアらしい現地の味を忠実に再現した料理を提案し、好評を博している。
タグ:大庭麗 カルチョーフィ アーティチョーク