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NIPPON★世界一 The87th2017年02月20日号
ホリマサシティファーム(株)
日本にある世界トップクラスの技術・技能−。それを生み出すまでには、果たしてどんな苦心があったのだろうか。
食を中心にあらゆるものが手に入る東京に暮らしているとピンとこないが、実は世界的な食糧不足は、想像以上に深刻だ。その一つの切り札として、欧米で注目されているのが、「アクアポニックス」という新たな食料生産システム。その日本での本格事業化に着手する企業に、今号では注目する。
(取材/種藤 潤)
世界的な食料不足問題に関しては、すでに多くのメディアが取り上げているので、詳細は省くが、その要因の主なものは、(1)人口の急激な増加、(2)その人口分を補うだけの食料供給体制が整っていないこと(もしくは体制の構築が困難)であることである。特に(2)に関して、農産物については、世界的な砂漠化の進行、水不足などが要因としてあげられ、水産物については、クロマグロに漁業規制がかかるなど、天然資源の乱獲による枯渇が問題視されている。
こうした現状を打破するためには、従来型の自然環境に依存した農業や漁業の形態とは異なる、地球環境と共存した持続可能「サステナブル」な生産体制の構築が求められる。そしてその有力な生産手法のひとつとして、近年注目されはじめているのが、「アクアポニックス」というシステムである。
水耕栽培+養殖の有機循環型エコシステム
日本ではまだ聞き慣れない言葉だが、すでに欧米を中心に研究開発が進み、実際に生産された食物は、飲食店などに導入されている。
では、「アクアポニックス」とはどんな仕組みなのか? 一言で言えば「水耕栽培(Hydroponics)」と「水産養殖(Aquaculture)」を融合させた、有機循環型エコシステムである。独立したシステムである双方を結合、制御して循環させることで、エネルギーや水の消費を最低限に抑えながら、高品質な農産物、および水産物が育成できる。しかも、生産性も優れているのだ。
具体的には、魚が育てられる養殖の水槽では、魚の排泄物からアンモニアが生成、それがバクテリアによって亜硝酸塩、さらには硝酸塩へと変化して、植物の成長に不可欠な要素となる。その水は植物を栽培している水槽へと送られ、そこで硝酸塩や他の栄養素は植物に吸収されて魚にとって最適な状態の水となり、再び魚のいる水槽へと戻ってくるのだ。
エコロジーかつサステナブル安全安心な生産が可能に
このシステムを用いることで、先にあげた食料生産の課題を解決しうる、持続可能「サステナブル」な形で野菜や魚を安定的に生産することができ、さらには化学肥料や農薬、除草剤、殺虫剤などを用いずに、安全・安心な状態で農産物を生産することも可能だという。
また、耕地がなくても生産できるため、水不足が進む地域でも最低限の水があれば生産できるだけでなく、東京の都市部でも屋上など、限られたスペースを活用して、食物を生産することが可能になる。これが実現すれば、フードマイレージ(食料輸送距離)を削減しながら、新鮮な野菜を都市部に安定的に供給することができるわけだ。
未来に貢献できる事業としてあえて異分野に参入
「このシステムを知った時、これこそが我々が新たに取り組むべき事業だと確信しました」
そう語るホリマサシティファーム株式会社の堀雅晴代表取締役は、ベアリング等の機械部品を扱う商社、堀正工業株式会社の代表取締役でもある。次なる事業展開として、真に社会から必要とされるビジネスを模索している時に「アクアポニックス」に出合い、全く異なる分野へ足を踏み入れたのだ。
「世界的な食料不足は明らかで、自給率の低い日本にも、その影響は必ずあります。それを見据えた、これから求められる農業を事業化することが我々の使命だと思ったのです」
堀正工業のネットワークにより、低コストかつ高品質な植物が育成できる機器の製造体制を整える一方、世界的に「アクアポニックス」の研究が進むハワイ大学と提携し、共同研究体制を構築。そのつながりで同技術の先端研究者であるBradley“Kai”Fox博士を技術顧問として招聘。現在国内では大分県、海外ではハワイに大規模な研究施設を建設しており、販売体制を整えている最中だ。
「3月に千葉・幕張で開催されるFOODEX JAPAN 2017への出展を皮切りに、本格的に国内へのPR・販売を開始します。ぜひ多くの方にアクアポニックスの魅力を直に感じてもらい、導入をイメージして欲しいです」(堀社長)
近い将来、農業×養殖のスタンダードになる可能性を秘めたこのシステム。東京の街だからこその活用方法も、これから見つかりそうである。
タグ:アクアポニックス 水耕栽培 水産養殖 ホリマサシティファーム