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NEXT東京街づくり 第5回 八王子市2017年01月20日号
八王子市
八王子とパッションフルーツ。一見関連のないこの両者だが、実は昨今、急速につながりが深まっている。8年前に地元若手農家を中心にはじまった生産は、近年、教育機関や商工会議所も巻き込み、2020年を見据えた新たな発展を見せようとしている。
(取材/種藤 潤)
八王子の新たな特産品として徐々に浸透
八王子は農地面積772ha(2015年)を有する、都内有数の農業エリアである。都内の1割を占める農地では日常食卓に並ぶさまざまな農産物が生産されているが、実は名産と呼べるものはなかった。ところが、ここ数年で地元を中心に急速に名産として浸透しつつあるのが、「パッションフルーツ」である。
中央道八王子ICから5分ほどにある「道の駅八王子滝山」は、休日には駐車場が満車になる程の人気を博す道の駅だ。その一角には「パッションフルーツ」が置かれるスペースが。生果そのものから、ジュース、ジャムなどの加工品が並んでいる。
「おかげさまで、地元ではずいぶん認知されてきました。定期的に箱単位で購入するお客様もいます」(JA八王子 指導経済部 指導広報課の中村芳博係長)
その「パッションフルーツ」を作っているのは、40代を中心とする若手農家10名で形成される、「JA八王子パッションフルーツ生産組合(以下、生産組合)」だ。
東京屈指の農業地として特産物を作り上げたい
そもそも「パッションフルーツ」とは? その名からも想像できるように、熱帯、亜熱帯地方で栽培されるフルーツだ。甘さと酸っぱさが絶妙なバランスの味わいで、各種ビタミン、葉酸に加え、血流を促進するナイアシンなど、多様な成分が含まれているのも特徴だ。
とはいえ、八王子にゆかりのある農産物ではなかった。きっかけは、生産組合の一人である石川耕平さんが、小笠原諸島へ農業研修を兼ねて訪れたことだ。
「もとはゴーヤに代わるグリーンカーテンになる植物として注目し、果物もできるということで、苗を販売できると思ったんです」
八王子で実際に育ててみると、気候的に十分生産できることがわかった。その後、周囲の同年代の農家に話し、生産を提案。他の農家たちも徐々に関心を持ち始め、グループで千葉県へ研修に行くなど、研究会として活動するようになっていった。
「都内を代表する農業エリアとして、名産を作りたいという気持ちもあったけれど、八王子独自の品種を育てたい気持ちもありました。それができれば競合なく販売でき、価格競争をする必要がなくなりますから」(生産組合組合長の澤井孝行さん)
もう少し本格的に取り組んでみよう……そんなとき、ちょうど地元農家の支援を強化しようと思っていたJA八王子が、部会として組織化することを提案。2013年、生産組合が誕生した。
生産者、JA、学校、商工会議所全てが喜ぶプロジェクトに
JAの生産組合化することで、JAのネットワークも活用でき、活動の幅は着実に広がった。そして八王子における「パッションフルーツ」の存在感は増していった。
生産組合化は、新たな地元のつながりを生み出した。そのひとつが、専門学校。日本工学院八王子専門学校・テクノロジーカレッジ・応用生物学科の学生が、地元食材を活用した地域連携プロジェクトとして、「パッションフルーツ」を取り上げたいと提案。現在、同科が成分分析や新商品開発、食べられない部分の活用法、栽培時のデータ収集などを担い、学生視点での「パッションフルーツ」の可能性を模索している。
もうひとつが、商工会議所だ。「サイバーシルクロード八王子」という商工会議所のビジネス支援団体が、新たな対象として農業を掲げ、JA八王子を経由してつながった。まだはじまったばかりだが、今後、全国販売網の整備や六次産業化、資金調達などの支援を行なっていくという。
「専門学校や学生も、商工会議所も、JA八王子も、我々と関わることでそれぞれ大きなメリットがあった。そんな誰もが喜ぶ連携体制を、八王子のパッションフルーツが作ってくれました」(澤井さん)
今後は生産量を増やしつつ、産学農連携体制を生かし、「パッションフルーツ」ブランドを本格化させたいという。そしてその先には、2020年を見据える。
「海外の選手たちに、パッションフルーツのおいしさを体感してもらい、八王子ブランドとして世界に発信させたいですね。そのためにも、まずは五輪会場の中心の東京の東側に受けいれられるよう、取り組んでいきたいと思います」(生産組合のひとり、濱中俊夫さん)
タグ: 八王子市 パッションフルーツ JA八王子 日本工学院八王子専門学校・テクノロジーカレッジ