HOME » トップインタビュー一覧 » トップインタビュー Vol.107 一億総活躍・働き方改革担当大臣 加藤 勝信さん
1 The Face トップインタビュー2016年11月20日号
一億総活躍・働き方改革担当大臣
加藤 勝信さん
ここ数年よく耳にする「多様な働き方」「柔軟な働き方」という言葉。「働き方改革」は第3次安倍第2次改造内閣の「最大のチャレンジ」にも位置付けられ、9月に発足した政府の「働き方改革実現会議」で具体的に検討を始めるなど、スピード感を持って進んでいる。その責を担っている一億総活躍・働き方改革担当大臣、加藤勝信さんにお話をうかがった。
(インタビュー/津久井 美智江)
働き方改革は、第3次安倍内閣の最大のチャレンジ。
—第3次安倍第2次改造内閣で、国務大臣一億総活躍・働き方改革・女性活躍・拉致問題・再チャレンジ担当、内閣府特命担当大臣(少子化対策・男女共同参画)に就任されました。今のお気持ちをお聞かせください。
加藤 去年、内閣官房副長官から一億総活躍担当大臣を拝命し、今年6月に「ニッポン一億総活躍プラン」を取りまとめ、閣議決定いたしました。その中には新たな3本の矢ということで、強い経済、子育て支援、そして介護などの社会保障の3つを提示させていただきました。
その3本の矢に共通する課題が、働き方改革です。8月の第3次安倍第2次改造内閣のスタートの時に、働き方改革大臣が設けられて、私が拝命することになり、9月に働き方改革実現会議を設置して、今年度末までに働き方改革実現プランを作ることとなりました。しかし、働き方改革の中身を具体的に進めようとするとなかなか大変です。これまであまり進んでこなかった分野なので、総理も最大のチャレンジであり、腕まくりをして取り組むとの強い決意を示されています。働き方改革実現会議の場を通じて、来年の3月までにしっかりと答えを出していきたいと思っております。
—安倍首相は「長時間労働を是正する。同一労働同一賃金を実現し、非正規という言葉をこの国から一掃する」と強調していますね。
加藤 先般、過労死という痛ましい事案がありました。実は長時間労働によって、労働生産性は低くなるんですね。長時間労働を是正すると、働く人の健康にプラスであるのみならず、男性が家事をサポートする時間が増えるということにもなります。男性がどれだけ家事に協力していたかによって、2人目のお子さんが生まれる率が違うという指摘もあります。これは明らかに少子化対策につながっていくと思います。
同一労働同一賃金についても、例えば非正規の形で働いている方の80%以上の方々は、様々な制約等の中でこうした働き方を選択されているわけです。この働き方はそれなりに肯定しながら、しかし処遇の問題があると。逆に言うと、処遇の問題があるために自分に合った働き方が選択できないというのが今の状況だとすれば、処遇を改善し、選ぶことのできる選択肢を増やしていくことがすごく大事だと思います。
なぜ多様で柔軟な働き方が必要かというと、少子化、そして人口減少下にある日本では、いわゆる生産年齢人口は、この20年間で約1千万人減っています。しかも、この3年間では330万人ともっと劇的に減っています。誰がどうやってその減少分を補ったかというと、女性と65歳以上の高齢者なんですね。そういう人たちが全員フルタイムで働けるかというと、これはなかなか難しい。
けれども、多様な選択肢があれば働きたい方はたくさんおられるし、能力を持っている方もたくさんいます。単に働く人が増えるだけではなく、いろんな方にその能力を発揮していただければ生産性も上がります。こうしたことを社会政策であると同時に経済政策としても進めていかなければならないと考えています。
改革には時間がかかる。だから方向性はスピード感を持って出す。
—制度の問題で、やりたいけどできないということもあろうかと思います。
加藤 制度の問題としては、まさに長時間労働は大きな問題の一つです。それから非正規の方の処遇改善。賃金だけでなく、例えば人材投資という面においても正規の方に対する研修等と非正規の方とは違うんですね。仕事に必要なものは正規も非正規も同じように研修していく必要があると思います。
それから、103万円とか130万円の壁がありますね。制度としての壁をなくす努力をしなければいけないと思っていますが、例えば今回130万円の壁が一部大企業を中心に106万円まで下がることになりました。そうなると、その分の社会保険料の負担が、働く人と雇用する側にかかってくるわけです。そういったことに対する企業への支援措置も考えています。
最終的には制度そのものを議論していかないといけないと思いますが、まずはそういうことを一つ一つ乗り越えて、希望に合うように働けるような環境を作っていきたいと思います。
—介護の分野で外国人労働者を受け入れようという動きがございます。日本の労働人口が減ることによって影響はあるのでしょうか。
加藤 外国人の方にその力を発揮していただくという意味においては、技能実習制度を改正する法律案や、介護という資格で入国できる制度を作る法律案を出していて、今国会で成立を目指しています。
それ以外にも、今不足している建設等の分野においては一時的な対応を取らせていただいていますが、先ずは、我々日本人がその力を十分発揮していけるような環境をしっかりと整備していくことが重要だと思っています。
—若者だけでなく、高齢者や女性の活躍が期待されるということですね。特に高齢の方は働くことで健康を維持できれば医療費も抑えられます。
加藤 おっしゃるように、朝起きて何かやることがあることは生き甲斐になりますから、健康長寿にもつながりますし、高齢者や女性が自分で所得を得られれば、それだけ人生設計を描きやすくなります。いろんな意味でメリットはあると思います。
ただ、働き方は一朝一夕に変わるわけではありません。有名なドイツのシュレーダー改革というのがありますが、改革の実効性があがるまでには多少時間がかかるのは当然のことです。ですから、方向性については明確に、そしてスピード感を持って打ち出しつつも、様々な声を聞きながら丁寧にやっていきたいと思います。
自分の人生は自分で考えましょうということにつながっていくと思います。これまでのように22歳で入社したら65歳までこの道しかないというのも一つの生き方ではありますけれども、必ずしも全員に当てはまるわけではありません。いろいろな働き方のバリエーションが用意され、様々なロールモデルも出てくれば、働き方を、生き方を選ぶということになっていくのではないでしょうか。それぞれに合ったライフプランを作ることができるということは、豊かな社会にもつながっていくと思います。
女性活躍の先頭を走っている小池知事に期待しています。
—拉致問題担当大臣も兼務されていますが、進展はございますか。
加藤 東京でも、拉致被害者として認定されている方がお二人、拉致の可能性を排除しえない方が50名近くおられます。
2002年に5人の拉致被害者の方々、そして2004年にご家族の方々が帰ってこられましたけど、それ以降はピタッと止まっています。2年前の日朝ストックホルム合意で、北朝鮮は拉致被害者等を含む「全ての日本人に関する調査を包括的かつ全面的に実施する」と言ったわけですが、合意から2年半近く経過してもなお、拉致被害者の方々の帰国の実現はもとより、帰国に向けた道筋も見えていないことは痛恨の極みであり、誠に申し訳なく思っております。
一方で、北朝鮮は核開発や弾道ミサイルの発射など挑発を繰り返しています。そうした北朝鮮に対して厳しく対応すべく、国連安全保障理事会の新たな制裁決議、あるいは日本独自の制裁措置を検討していかなくてはならないと考えています。
都内でも拉致問題の集会が行われていますが、拉致被害者及びご家族の思いを共有される都民の皆様の声が、拉致問題解決を促す力強い後押しとなると思います。我々もそうした都民の皆様の後押しをいただきながら、総理を先頭に私も一緒になって、解決に向けて努力をしていきたいと思っています。
—40年……。長い時間です。一刻も早い解決を期待しています。
加藤 この問題は安倍政権の最重要課題であり、最優先で取り組むべき課題だと位置づけています。先ほど申し上げた、北朝鮮の度重なる暴挙に対する国際社会の厳しい圧力をテコとしながら、対話を通じて、認定の有無にかかわらず、すべての拉致被害者の方々の一日も早い帰国に向けて、道筋を見出していくためにあらゆる努力をしていきたいと思っています。
—小池新都知事に期待されることは?
加藤 私の仕事の関係で言えば、少子化対策、あるいは女性活躍でしょうか。東京は経済的にも非常にボリュームが大きいですし、全体をリードするポジションにありますから、そういった意味でも様々な取組みをしていただけると思っております。
東京の場合、出生率が低いんですね。若い方がたくさん集まっているわけですから、そういう方々が結婚し、子育てしながら働ける環境を整える必要性は高いですね。特に待機児童の問題は、知事も積極的に取り組むとおっしゃっていますので、連携できることはどんどん連携して前に進んでいきたいと思います。知事自身女性でいらっしゃるし、女性活躍の先頭を走っておられるわけですから、そういった意味も含め期待しております。
—ところで、大臣はお嬢様が4人とか。家に帰られると奥様も含め女性ばかりですね。
加藤 我が家は女性に活躍してもらわないと成り立たないと、いろんなところで申し上げているんです(笑)。
—父親としてお嬢様にはこんな女性になってほしいという願望はございますか。
加藤 4人それぞれ個性もありますが、大事なことは自分で判断して、自ら責任を持って取り組んでいく、自分の人生は自ら切り拓いていくということなんだと思いますから、どうこうすべきとは言いませんが、そのための力をしっかりつけてやりたいと私は思っています。
—お嬢様たちと会話はあるのですか。
加藤 できる限り話す時間を作るようにしています。新聞とは違う情報を彼女たちなりに入手して教えてくれるので、けっこう仕事に役立っている面もありますよ。こんなことも知らないの?と怒られますけどね(笑)。
<プロフィール>
かとう かつのぶ
1955年東京都生まれ。1979年東京大学経済学部卒業後、大蔵省入省。倉吉税務署長、主計局主査等本省勤務の他、郵政省、内閣官房、農林水産省への出向も経験。農水大臣だった加藤六月氏の娘に婿入りし、加藤に改姓。1995年大蔵省大臣官房企画官を最後に退官。六月氏の秘書を務める。2003年衆議院議員初当選。厚生労働部会副部会長、内閣官房副長官・内閣人事局長等を経て、2015年10月に発足した第3次安倍第1次改造内閣において国務大臣 一億総活躍担当・女性活躍担当・再チャレンジ・拉致問題・国土強靱化担当、内閣府特命担当大臣(少子化対策・男女共同参画)として初入閣。2016年8月より、第3次安倍第2次改造内閣において国務大臣 一億総活躍・働き方改革・女性活躍・拉致問題・再チャレンジ担当、及び内閣府特命担当大臣(少子化対策・男女共同参画)に就任。趣味は読書、ウォーキング、ゴルフ、セーリング、オートバイ
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