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大庭麗のイタリア食材紀行 第26回2016年07月20日号
第26回 香りを楽しむイタリア版アイスコーヒー
1600年代の初頭に、ベニスの商人によって北イタリア、ヴェネツィアを拠点に、ヨーロッパ全域に普及していったコーヒー。イタリアでは“カッフェ”と呼ばれ、エスプレッソマシーンで濃く抽出されたエスプレッソコーヒーを指します。
小さなデミタスカップに注がれた約30㏄~40㏄のコーヒーにお砂糖を加えて、熱々を一口か二口でさっと飲むのがイタリア流。朝起き掛けに1杯、職場に着いて1杯、食後に1杯、誰かと落ち合って1杯、休憩に1杯……と、生活の中の区切り、区切りには常にカッフェの存在があり、まさにイタリアの人々にとって欠かせない生活の一部です。
そんなカッフェの国イタリアならではの、夏のコーヒーの飲み方に、カクテル用のシェイカーを使って作られるアイスコーヒー“カッフェ・シェケラート”があります。氷を入れたシェイカーにエスプレッソと砂糖を加えてシェイクしたもので、グラスに注ぐと上部にできる独特な泡が特徴です。
しばしば、バニラビーンズや、シナモンスティック、ナツメグ、スターアニスなどのスパイスや、リキュールをコーヒーと一緒にシェイカーに加えて風味づけがされたりもします。
以前私の暮らしていた南の地域では、レモンの皮の黄色い部分をコーヒーと一緒にシェイカーに加えて振ったものがポピュラーでした。通常、レモンと言ったら紅茶との組み合わせを思い浮かべることから、コーヒーにレモン!?と一瞬驚きますが、実際のところ果汁は加えないので、酸味は一切なく、レモンの皮の持つエッセンスのみが冷たいコーヒーの中に溶け出し、さわやかさを演出します。
その味わいを知って以降、すっかりその味の虜になってしまい、レモンの入っていないカッフェ・シェケラートは、なんだか物足りないなぁと、思ってしまいます。
みなさんも、今年の夏はぜひ、冷たいレモン風味のイタリア版アイスコーヒーを試してみてはいかがでしょうか。
<大庭 麗(おおば うらら)プロフィール>
東京都生まれ。2001年渡伊。I.C.I.F(外国人の料理人のためのイタリア料理研修機関)にてディプロマ取得。イタリア北部、南部のミシュラン1つ星リストランテ、イタリア中部のミシュラン2つ星リストランテにて修業。05年帰国。06年より吉祥寺にて『イル・クッキアイオ イタリア料理教室』を主宰。イタリア伝統料理を中心に、イタリアらしい現地の味を忠実に再現した料理を提案し、好評を博している。
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