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大庭麗のイタリア食材紀行 第25回2016年06月20日号
第25回 貴族のサラミと呼ばれる伝統的なサラミ
イタリア中部のアッペンニン山脈を望むマルケ州の小さな街、ファブリアーノに伝わる、別名“貴族のサラミ”サラ—メ・ディ・ファブリアーノ。
19世紀、イタリア王国統一に貢献した英雄ジュゼッペ・ガリバルディが、その美味しさを絶賛し手記に綴ったことでも知られ、現在ではその伝統的な製法は保護指定がされています。イタリアで最も名の知れた美食家が「もはやどこを探しても、ここまでこだわって作られたサラミはないだろう。我々が普段口にするサラミとはそのすべてが異なり、唯一無二のサラミだ」と賞賛する、その貴重なサラミを紹介します。
通常、サラミは肉を挽肉状にすることから、肉の端切れや脂肪分の多い部位を用いることで、コストを抑えるのが通説ですが、このサラ—メ・ディ・ファブリアーノは、豚肉の最良の赤身の部位(本来生ハムづくりに用いる腿肉と肩肉)と脂身の中でも特に良質な背脂を14%のみ使ったこだわりの製法。まさに貴族のサラミと呼ばれる由縁です。
特定地域内で、ドングリや大麦、たっぷりの小麦のふすま、そしてトウモロコシといった非遺伝子組み換えの天然飼料で大切に飼育された最上級の豚の肉と、塩と胡椒のみで調味され、白ワインに浸しておいた、薄い天然の豚腸で腸詰。手作業で紐にぶら下げられたのち、暖炉の周辺の柔らかな熱で、数日間余分な水分を取り除き、温度14℃、湿度80%の環境でさらに60日以上の熟成がなされます。
表面を良質のカビで覆われた最高の熟成度合いのそれらは、専門機関によりクオリティー検査が行われ、その選別を通ったもののみが、認定マークのついた特別な紙で包装され、その名を名乗ることを許されます。
その断面は、ワインレッド色に輝き、所々に散りばめられた口溶けの良い真っ白な脂身の断面と、存在感のある粒胡椒。肉本来の甘みと長く続く風味が特徴の、一度は味わうべきイタリアを代表するサラミです。
<大庭 麗(おおば うらら)プロフィール>
東京都生まれ。2001年渡伊。I.C.I.F(外国人の料理人のためのイタリア料理研修機関)にてディプロマ取得。イタリア北部、南部のミシュラン1つ星リストランテ、イタリア中部のミシュラン2つ星リストランテにて修業。05年帰国。06年より吉祥寺にて『イル・クッキアイオ イタリア料理教室』を主宰。イタリア伝統料理を中心に、イタリアらしい現地の味を忠実に再現した料理を提案し、好評を博している。
タグ:大庭麗 イタリアの最高級サラミ サラーメ・ディ・ファブリアーノ マルケ州 ファブリアーノ ジュゼッペ・ガリバルディ