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【特集】「東京水道経営プラン2016」を策定2016年05月20日号
水道局では「東京水道経営プラン2016」を本年2月に策定した。本プランは、平成28年度から平成32年度までを計画期間とし、事業計画と財政計画を明らかにしたものである。平成28年度は、計画期間の初年度として、プランに掲げた取組を着実に推進していく。以下、平成28年度の主な水道事業について、プランの3つの柱「基幹的ライフラインの運営」、「取組の進化・発信」、「支える基盤」に沿って説明する。
基幹的ライフラインの運営
◆安定(24時間常時供給)
首都東京の安定給水を継続するため、積雪量の減少や融雪時期の早期化といった、将来の気候変動による影響も踏まえ、長期的な視点に立ち、八ツ場ダムによる安定した水源の確保に取り組んでいく。
また、平成30年代以降、一斉に更新時期を迎える大規模浄水場の更新に備え、更新工事に伴い低下する施設能力に相当する代替浄水施設等をあらかじめ整備し、安定給水を確保しつつ、更新工事を計画的に推進するため、境浄水場、三郷浄水場において代替浄水施設を整備していく。さらに、導水施設の二重化、送水管の二重化・ネットワーク化や給水所の新設・拡充に取り組んでいくことで、水道基幹施設の再構築を着実に進める。
多摩地区水道については、市町営時代に整備された施設の老朽化や、送配水管路のバックアップ機能が不十分であるといった課題があることから、小規模施設の再編や送配水管のネットワーク化を図り、名実ともに広域水道と言えるよう、本格的な施設の再構築を推進していく。
◆高品質(安全でおいしい水の供給)
利根川水系は、流域河川の原水水質に課題があり、平成4年から利根川水系を水源とする全浄水場に高度浄水処理を順次導入し、平成25年度に完了した。一方で、これまで良好な水質を保ってきた多摩川水系では、近年、藻類の繁殖によりかび臭が発生しており、粉末活性炭を注入し対応している。このため、今後の浄水施設の整備では、様々な原水水質に応じた適切な浄水処理を導入していく。
また、水質管理のさらなる強化を図るため、「TOKYO高度品質プログラム」を充実させるほか、安全でおいしい高品質な水を確実にお届けするため、小中学校の水飲栓直結給水化モデル事業を推進するとともに、既存建物の直結給水方式への切替えにかかる工事費の見積りを無料で行うなど、事業を着実に推進していく。
◆様々な脅威への備え(新たな危機管理)
切迫性が指摘される首都直下地震などの大規模地震に備えるため、貯水池の堤体強化や配水池の耐震強化、配水管の耐震継手化などを推進するとともに、停電が発生した際にも、平常時と同様に給水できるよう、自家用発電設備の新設・増強に取り組んでいく。
また、局地的な豪雨により河川が氾濫した場合に備えるため、浄水場や給水所における浸水対策を進めるとともに、火山噴火に伴う降灰やテロ行為による浄水場への異物混入に備え、浄水施設を覆蓋化していく。
取組の進化・発信
◆お客さまとの対話(実感・信頼していただくための対話)
お客さまからの信頼を一層確かなものとするため、より分かりやすい情報を積極的に発信するほか、平成31年度までに給水区域内の全戸(大規模使用者・公共施設等を除く)を訪問する「東京水道あんしん診断」を実施し、多様化するお客さまニーズをきめ細かく把握し、取組に反映させていく。
また、水道事業を理解していただくため、水道キャラバンの充実や工事現場での広報など、地域に根差した広報活動を推進していく。
◆地域・社会への貢献(エネルギー・環境等に配慮した活動)
水道局における年間電力使用量は都内での総電力使用量の約1%に相当し、エネルギーを大量に使用する事業者として、水道事業に伴うエネルギーの効率化を着実に進めていく必要がある。そこで、境浄水場及び三郷浄水場において、大規模浄水場更新時の代替浄水施設整備に伴い、位置エネルギーを可能な限り活用した施設に整備していくとともに、太陽光発電など、再生可能エネルギー等の導入を進め、エネルギー・環境対策を推進する。
また、環境等に配慮した取組として、庁内各局や地元自治体などと連携・協力しながら、「史跡玉川上水整備活用計画」に基づき、玉川上水の適切な保存管理に努めていく。
◆国内外水道事業体への貢献(技術力・ノウハウの発信と貢献)
国内に約1400ある水道事業体の8割以上を占める小規模事業体(給水人口10万人未満)では職員が平均10人程度であることに加え、技術職員の占める割合も大規模な事業体に比べると低く、施設管理等に係る負担が大きくなっている。また、近年、アジアをはじめとした途上国の大都市では、急激な経済成長や人口増加に伴い、水源不足、水質の悪化、施設の老朽化などの課題を抱えている。
これらの様々な課題を抱える国内外の水道事業体に貢献するため、東京水道グループの技術力・ノウハウを積極的に活用し、国内の水道事業体の人材育成や事業運営に協力するとともに、東京水道の国際展開の取組を総合的に体系化した「東京水道国際展開プログラム」に基づき、途上国の水道事情の改善に貢献していく。
そのほか、2018年国際水協会(IWA)世界会議や、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会、さらにその先の将来を見据え、多様な主体と連携し、世界一の東京水道システムをさらに進化させ、国内外へ発信する「東京水道イノベーションプロジェクト」を進めていく。
支える基盤
◆人材(財)基盤(確保・育成)
「人」は、東京水道を支える最大の基盤であり、事業運営には人材(財)の確保・育成が不可欠であることから、水道局と監理団体が一体となって現場の経験に裏付けられた専門知識や柔軟な発想を持った人材(財)を確保・育成することにより、強固な人材(財)基盤を確立する。
そのため、体験型研修などの充実により、危機管理能力や現場における実務能力の向上を図るとともに、コンプライアンスに関する研修を充実させ、職員の意識改革を行うなど、人材(財)の育成に取り組んでいく。
◆運営体制(グループ経営)
水道局では、水道事業における基幹的業務を水道局と監理団体が担う、一体的事業運営体制を構築してきた。これまで、監理団体に対して、モニタリング(経営評価等)の実施などにより指導・監督してきたが、今後は、局の経営方針等の徹底を図るなどガバナンスを強化していくことにより、監理団体とのグループ経営を強化し、公共性の確保と効率性の発揮を両立させながら、責任を持って事業を運営していく。
また、外部専門家の意見の反映や外部監査の実施により、経営の客観性を確保するとともに、情報公開を充実させ、透明性の向上を図っていく。
◆財政基盤(計画的・効率的な財政運営)
中長期的な視点に立ち、持続可能な経営を行っていくため、不断の経営努力として、5年間で150億円の経費節減と収入確保に努める。
また、代替浄水施設の整備にあたり、これまで積み立てた資金を活用するとともに、管路の耐震継手化の財源の一部に引当金を充てる。
さらに、企業債を適切に発行することにより、世代間負担の公平性を図りながら、健全かつ安定的な財政運営を進めていく。
まとめ
水道局は、高度成長期における需要への対応、高度浄水処理導入による質的向上を経て「世界一の水道システム」を築き上げてきた。今後、基幹施設の再構築などを着実に進めていく、いわば「ネクストステージ」を迎える中、水道局では、本経営プランに基づき、ハード・ソフト両面にわたり、将来を見据えた取組を推進するとともに、さらに強固な経営基盤を確立し、公共性と効率性を両立させながら、責任を持って「安全でおいしい高品質な水の安定供給」という基幹的ライフラインとしての根源的使命を全うしていく。
また、これまで培ってきた技術力・ノウハウを確実に引き継ぎ、この「世界一の水道システム」を次世代に繋げていくため、全力で取り組んでいく。
タグ:東京都水道局 東京水道経営プラン2016