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【100号記念座談会】一億総活躍社会を支えるウーマン・パワー2016年04月20日号

 

100号記念特別座談会

司会 幣紙主筆 平田 邦彦

女性は発想が柔軟なので、組織にとらわれずに仕事ができます。(益田)

平田 東京都では女性の活躍をテーマに絞った「東京都女性活躍推進白書」を2月16日に策定しました。これによりますと、女性管理職の比率は都内では15・8%、全国水準より高いけれども、国際社会では下位。6歳未満の子どもがいる都内の男性の家事・育児に当てる時間は一日当たり1時間17分と、スウェーデンに比べて約2時間短いそうです。

 このようなデータを列挙し、結婚・出産・介護などライフスタイルに合わせた柔軟な働き方を選択できるなど、今後目指すべき3つの方向性が示されていますが、それぞれのご経験から女性が働くことについての思いをお聞かせください。

100号記念座談会風景

筑紫 私は会社を作ってもうすぐ20年ですが、女性でも意欲と能力がある人がちゃんと働けるように、在宅でもフレックスでも仕事ができるようにしてやってきました。ですので、ここにきて一億総活躍と言いますか、とにかくお子さんが生まれたら保育園に入れて、すぐ復帰する、みたいな流れになっていることにちょっと違和感があります。

 特に女性は、出産や育児がありますね。女性のライフステージの中で、働き方が柔軟であればいいのですが、結局はそういうシステムを作らないで、とにかくみんな働けというふうになっています。これでいいのかなという感じはありますね。

水野 私も筑紫さんと同じ意見です。私はシングルマザーでしたが、子育てをしながら仕事ができたという経緯があります。オーガニック検査員や食品検査員というのは、女性にとって就きやすい仕事だったんですね。自分で検査の時間を選べますし、フリーランスでもできますから。

 実は今、娘が産休に入っているんですが、住んでいる地域の保育園の待機児童が1100人くらいで、仕事に戻りたくても保育園に入れない可能性が高いらしいんです。そのような実情がある上に、早く復帰しないと仕事に戻りにくい環境もあります。

 女性に「働きなさい」と言いますが、女性が自由に伸びやかに選択できるチョイスがないなあという気がします。やはり体制作りですね。女性が子育てを長くしてもOK、またはすぐ復帰してもOK、どちらも選べる状態を作って「働いてください」とならないと、ちょっと難しいと思います。

益田 私は映像コンテンツの世界で働いていますが、この世界は非常に女性に向いていると思います。

 理由は3つありまして、1つは、女性は環境適応型なので、時代の流れに合わせていろいろと適応できること。ダーウィンは、「最後に生き残る者は、強い者でもなく量が多い者でもなく、環境に適応する者だ」と言っていますが、まさに適応できるのが女性なんですね。

 2つ目は、女性の明るいファッションとか笑顔を見ると元気が出る。女性は職場を明るくするんですよ。3つ目は、女性は発想が柔軟なので、組織にとらわれずに仕事ができる。ですので、この世界ではけっこう女性が活躍しています。

平田 これは私見ですが、女性が云々という言い方をすること自体が、ある意味で女性蔑視と差別の根っこなんじゃないかと。確かに、女性でなければできないことはあると思います。子どもを産むことは女性にしかできないわけですから。

 ただ、男であれ女であれ、人間であるということからスタートアップすれば、役割の違いというものはあるにせよ、ヒューマンパワーとしての価値には男も女もないということを理解するべきなんでしょうね。

 

男女を問わず、やる気がある人、ワクワク仕事をやっている人は伸びます。

平田 女性であって損をした部分、得をした部分というのがあると思います。そのへんのところをご披露いただけますでしょうか。

筑紫 損したこともあったし、得したこともあったと思うので、バランスが取れているような気がします。それは男性でも同じではないでしょうか。実は損していたのかもしれないけれど、受け取り方次第で得したと思うこともあるかもしれないので、女性だから損をしているというような議論の持っていき方は、私の実感ではあまり意味がないと思います。

平田 益田さんは外から見ていると、女性であることをものすごくうまくお使いになっているように見えますが、本音のところでは冗談じゃない、こんな痛い目にあったというようなことはございますか。

益田 映画製作にご協賛をいただく場合、トップがOKと言わないと出ないんですね。必ずトップと会わなければいけない。男性の場合は部長から社長というように一生懸命下から上げていくようですが、私は直接電話して会いに行きます。ある大企業の社長がおっしゃるには、「代議士とかいろんな人から紹介されると、会わざるを得ない。でも普通に断る」。ルールがあるんですって、断り方の。ところが、「君の場合は、愛人いるの?とか聞くから、調子が狂ってついつい話してしまい、それでお金を出しちゃった(笑)」となる。人間って、子どもや女性がニコニコしていると気分がいいものでしょう。それは女性の特権かな。

 逆に、マスコミ関係からは、「映画を女一人でできるわけがない。愛人がいるのか。親は何をやっているのか。だんなは何やっているか」と、必ず聞かれました。やっぱりそういう偏見があるんでしょうね。

水野 私もどちらかというと女性でラッキーだったと思います。私が関わっている農業の社会って男性の社会なんですね。検査員は質問しなきゃいけないんですが、男性はプライドがあるので、こんなことも知らないのかと思われるんじゃないかと質問できない。でも、女性は「これ何ですか?」という感じで質問できるので、拍子抜けしてどんどん教えてくれます。それに、女性の検査員が少なかったので、いろんな委員会にも入れていただくことができました。私は女性であったからこそ、農水省とかいろんなところで活躍の場をいただけたと思います。

平田 人選を誤ったかな(笑)。人間には、自分のエンジンを持って動いている人と、人のエンジンにぶら下がって生きている人の両方がいます。男とか女の問題じゃなくて、その人の個性の問題ということですね。

筑紫 民主党政権の時、「すべての女性が輝く社会に」とか言いましたが、とても違和感がありました。「すべての男性が輝く」とは言いませんでしょう。輝きたくない人もいるというか、それは男でも女でも同じだと思うんですよ。

 意欲が低いというか弱い人たちのレベルに合わせて、その人たちの底上げをすることで社会は進歩するんでしょうか。本当に進歩するには、エンジンのある人がもっと進めるようにすること。あるいは環境さえ整えば心に火がつくような人を見つけて、その人がちゃんと動けるようにする。皆さん全員でやりましょうというのではうまくいかないと思うし、時間がかかりすぎると思います。

水野 男女問わずですよね。やはり成功する女性というのは自分でやる気を持っている、それが伝わってくる。男性も同じだと思います。ですから男女問わず、やる気がある人、ワクワク仕事をやっている人というのはどんどん伸びると思いますし、自分で切り開いていくものじゃないのかなと思います。

 

女性にとって子育ては、私の経験では100%付加価値です。(筑紫)

益田 女性はお化粧しなくてはいけないし、生理があるし、ホルモンの波によって更年期はあるし、体調を崩しやすいんですね。だから仕事にも影響を及ぼしますし、健康管理は女性の役割の中でとても大きいと思います。ベッドをおくとか、職場を女性に優しい環境にする工夫があってもいいと思います。

平田 女性であるが故のハンディキャップがあることは確かだと思います。女性であるがゆえにできる役割と、女性であるがゆえにケアしてもらわないといけない部分についてお話し願えませんか。

筑紫 それは女の人のライフステージの中で変わるものだと思いますが、とにかく私が若い女性たちに言いたいのは、いずれいくらでも働けるということです。今は健康ならよほどの肉体労働でなければ、80歳でも90歳でも働いていられます。90歳まで働けるなら、20代、30代にちょっとくらい休んだってどうということはない。お子さんが持てる年代ってあるじゃないですか。その年代に子どもを持ちたいと思う人は持てて、何年かはゆっくり子育てがしたいと思う人はできる。そのことが社会生活の中でハンディにならないようにサポートすることが大事なんだと思います。

水野 アメリカに合計14年間住んでいたんですけど、アメリカのほうが本当の意味で平等というかシビアで、私が言われたのは家で翻訳するのでもいいから、とにかく何らかの形で仕事を継続しておくということでした。いったん仕事から離れてしまうと、精神的に戻りにくいことがありますよね。産休中もフォローしてもらえる、あるいは元の仕事にスムーズに復帰できるような制度があるといいと思います。

筑紫 子育ての時に少し仕事をセーブして、子どもをちゃんと見ることって当たり前だと思うんですね。問題は、今まで自分が積み上げてきた専門性を生かせる仕事に復帰できないとか、せっかくお金をかけてトレーニングして蓄積したものが生かせないこと。これはマネジメントのシステムを変えれば十分に解決できることだと思います。

益田 女性は結婚して子どもを産んでからも、その経験を生かして十分に働く機会が多い。特に介護の職場は女性の力がものすごく発揮されると思います。

 今、少子化対策の一環で国から予算が各自治体に下りているんですが、自治体はそれを使い切れてないんですね。その予算を使いたいという企画が生まれないんですよ、背広の頭の固い人たちは。それで、民間の女性にいろんなアイディアを出してもらって、「おせっかいおばさん」とか「カフェで婚活」「クルーザー婚活」などを始めているところがある。60歳以上になると同性に共鳴する部分が多くなってくるので、おばさん連合みたいのを作って、おばさんの意見をもっと政治に反映していけたらいいですね。

平田 子どもを産み育てている間に身につけたものは、会社では身につけられない財産ですよね。だからその2年間なり3年間というのはむだじゃないと。

筑紫 女の人にとっては、男の人もそうだと思いますが、子育ては私の経験では100%付加価値です。小さな子どもはとにかく危ない。危ない目に遭わせないように、常に先を見るとか状況判断をしていますから、明らかにリスク管理能力が向上します。同じ人が子育てをするのとしないのではまったく違います。子育てをした女の人は、絶対に使えるようになるというのが、今までうちで働いた女性たちをみて実感したことです。

平田 これから少子高齢化に向かっていくわけですから、人間としてのウーマン・パワー、マン・パワーをどう生かしていくのか。意欲のある人、ない人、全部インボルブされるような仕組みをみんなで考えていくことに尽きるのでしょうね。

水野 本当にそうですね。女性だけの意見じゃなくて、男性の部下の立場の人たちの意見も聞いて、どうあるべきかということをもっと考えるべきですね。

 

 

 

 

タグ:女性活躍推進法 東京都女性活躍推進白書 女性の活躍 ワークライフバランス

 

 

 

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