HOME » サイトマップ » NIPPON★世界一<技術・技能> » (83)ロンシール工業(株)
NIPPON★世界一 The83rd2016年04月20日号
日本にある世界トップクラスの技術・技能—。それを生み出すまでには、果たしてどんな苦心があったのだろうか。日本初となる塩化ビニル(塩ビ)素材の製品化を手がけて約70年。長年蓄積された技術と経験により、床材や壁材をはじめ、多様かつ機能性の高い塩ビ製品で、我々の日常を支え続けてきた。近年は新たに「抗ウイルス性」機能も加わり、その力を生かした健康で安全な生活空間を、あらゆる場面に広げようとしている。
(取材/種藤 潤)
東京を代表する公共交通機関のひとつ、JR山手線。その最新タイプの車両「E235系」の床面には、優先席などの表示がくっきりと、それでいて違和感のない色彩とデザインで表現されている。実はこれ、ロンシール工業株式会社の塩ビ製品のひとつである。
「相当数の乗客が利用する床面ですから、その耐久性はもちろん、急停車などの際でも足元が滑ったりしない防滑性も重要です。また水分や汚れなどにも強く、さらに車内表示を印刷するなどの対応力もあります。塩ビ素材に特化し続けてきた弊社だからこそできる製品だと、自負しています」(ロンシール工業株式会社 執行役員開発事業部長の常盤昭夫さん)
山手線だけでなく、都内を走る私鉄線、さらに都バスの床面にも同社製品は取り入れられており、都内を移動する人々の足元を支えている。
交通機関だけではない。病院や学校、幼稚園、高齢者施設など公共施設を中心に、住宅、工場などさまざまな建物にも、実は同社の製品は幅広く取り入れられている。
「床や壁面が中心ですが、塩ビは可塑性(柔らかく形を変えやすいこと)が高く、さまざまな形状に対応できます。大げさでなく、生活空間のあらゆるシーンで塩ビ製品は活躍できると思っています」
加工しやすく、扱いやすく、燃えにくいのが特徴
塩ビ素材には3つの特徴があると、常盤さんは語る。
「まず、前出の可塑性。他の素材に比べて加工しやすいのが塩ビの特徴です。次に、調整のしやすさ。配合調整により柔らかくも硬くも、自在に操ることができます。これらの特性を活かすことで加工の幅が広がり、幅広いジャンルの製品化が可能になります。さらに難燃性(燃えにくさ)もポイントで、もし燃焼したとしても時間が経てば自然に消えます」
これらの長所にいち早く着目したのが、今から約70年前。当初はビニル傘や雨合羽を製造していたが、1950年代に入ると床材の製造に着手。そこから本格的に建築資材関係の製品化に乗り出し、今日に至るという。
機能性と多様性を両立、健康面、環境面にも配慮
同社は現在、床材を主に取り扱う「建装部門」と、塩ビの高い防水性を生かし、屋上などの防水シートを扱う「防水部門」、塩ビ壁紙を扱う「壁装部門」、戸建・集合住宅の防水を扱う「住宅部門」、冒頭の山手線などの車両の床材や、金属加工品などの表面保護に用いられるフィルム素材など、高い加工技術を用いて国内外に受注開発を行う「開発事業部門」で構成される。
「弊社製品の最大の長所は、長年培ってきた技術を用いた高い機能性と、幅広いニーズに応えられる点にあります。例えば、精密機械工場の床面などは、わずかでも静電気が起こってはいけない場合があります。そうした帯電防止の床材なども製造しています。また、山手線のように幅広いデザインに対応できる表現性も持ち合わせています」
そうした技術は海外でも高く評価され、塩ビ製品では困難とされてきた海外の鉄道車両向け難燃規格に、世界で唯一適合する製品も開発している。
「それから人々が安心して使用できる健康・安全面にも力を入れ、社会問題にもなっているシックハウスの原因となるVOC対策にいち早く着手しました。さらに環境に優しい製造体制を整えるため、環境対応プラントの構築や、Reduce、Reuse、Recycleを推進する『3つの「R」』も展開しています」
抗ウイルス製品を開発
さらに安全な建材を提供
さらに2年前からは、新たな機能が加わった。近年、冬場になると問題になるノロウイルスやインフルエンザなどの「ウイルス」に対して高い効果を発揮する『ロンプロテクト』技術だ。第三者機関の試験により、同社製品にウイルス付着後、1時間では97%以上、6時間後には99.9%以上の抗ウイルス効果が確認されているという。
「O-157やMRSAなど細菌に効果がある『抗菌』は、今や当たり前になりつつあります。一方で十分に確立していなかった抗ウイルスという特性は、2年間をかけて実現することができました。長期間使用する場合の耐久性能も十分に備えています」
特にウイルス対策が重要な高齢者施設や学校などでは、『ロンプロテクト』の床材の導入が進行中だ。今後は壁面に加え、幅広い場面で適用できるフィルムなどにも『ロンプロテクト』を応用、生活空間のあらゆる要素の「抗ウイルス」化を推進したいと、常盤さんはいう。
「特に東京は、2020年に向けて公共機関を中心に大幅な建て替えが進みます。そのなかでぜひ『ロンプロテクト』の機能を加えた弊社製品を取り入れ、さらなる健康で安心な空間づくりが進むことを期待しています」
お詫びと訂正
※本紙の右上の写真2点のキャプションが入れ替わっておりました。正しくは、上の写真が栃木県の「獨協医科大学 教育医療棟」、下が大阪府の幼稚園「第2善児童園」でした。関係の方に深くお詫び申し上げ、訂正させていただきます。
タグ:ロンシール工業(株) 塩化ビニール製品 内装材 床材 壁材 E235系車両床 ロンプロテクト