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大庭麗のイタリア食材紀行 第22回2016年03月20日号
第22回 春の訪れを知らせるミモザの花
優美さ、堅実、秘密の恋、友情、神秘、感受性、思いやり―。そんな花言葉を持つ黄色い小さな綿毛のようなミモザの花。イタリアでは“女性らしさと強さ”を象徴し、女性の日(国際女性デー)のシンボルとして知られています。
1911年、ニューヨークの繊維工場で働く女性たちが、労働条件の改善を求めるストライキを起こし、それに激怒した雇い主が工場に火を放ち、多くの女性が命を失った悲劇を追悼して制定されたのが3月8日の国際女性デーです。
イタリアでは1920年代より、この日を女性の日として祝いはじめました。1940年代に、ある女性活動家が“田園などで誰もが見つけることのできるような貧しい花をこの日のシンボルに”と提案したのがはじまりで、暗い冬の終わりを知らせ、春の訪れを感じさせるミモザの花が選ばれました。
この日は街角のお花屋さんをはじめ、街中がミモザで溢れ、イタリアの男性は、家族や恋人、職場の同僚、友人など、身の回りの女性たちみんなにミモザの花を贈り、日頃の感謝をして女性の日を祝福します。
カクテルのミモザを片手に、女性同士で女性の日を祝うグループも、この日はたくさん見かけます。
そもそもは、パリの有名ホテルのバーが発祥のこのカクテル。フランス産のシャンパーニュではなく、北イタリアのスパークリングワインのひとつ、プロセッコとオレンジ果汁を使ってつくるのがイタリア流です。
また、氷を入れたシェイカーに、オレンジ果汁、グレープフルーツ果汁とパイナップルジュースを少量加えてシェイクしたアペリーティーボ・ミモザと呼ばれるノンアルコールカクテルは、アルコールが苦手な女性をはじめ、“子どもだってもちろん、女性でしょ”と言わんばかりのイタリアの子どもたちも楽しめるカクテルです。
1950年代にローマ近郊で生まれたこの時期を代表するトルタ・ディ・ミモザは、黄色いミモザの花をイメージしたケーキ。日本の卵に比べて、黄身の黄色味が強いイタリアの卵をふんだんに使って焼いたスポンジケーキにカスタードクリームをたっぷり挟み、ケーキの表面には、ダイス状にカットしたケーキクラムを纏わせています。
イタリアの春の訪れは、まさに黄色のミモザカラーではじまります。
<大庭 麗(おおば うらら)プロフィール>
東京都生まれ。2001年渡伊。I.C.I.F(外国人の料理人のためのイタリア料理研修機関)にてディプロマ取得。イタリア北部、南部のミシュラン1つ星リストランテ、イタリア中部のミシュラン2つ星リストランテにて修業。05年帰国。06年より吉祥寺にて『イル・クッキアイオ イタリア料理教室』を主宰。イタリア伝統料理を中心に、イタリアらしい現地の味を忠実に再現した料理を提案し、好評を博している。
タグ:大庭麗 ミモザ 国際女性デー トルタ・ディ・ミモザ