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インフラ整備を加速し都市機能を強化2016年01月20日号
舛添知事にとって2回目の本格予算編成となる平成28年度予算原案が15日、発表された。一般会計で7兆円と、国家並みの規模となる予算配分について、都は「2020年大会と、その先の東京と日本全体に対する『投資』という視点から、先駆的な施策に重点的に配分した」と説明、オリ・パラ競技施設の建設をはじめ、耐震対策、幹線道路整備、バリアフリー化など、都市機能の強化に向けたインフラ整備に力を入れているのが特徴だ。東京都の都市戦略「長期ビジョン」で計画された28年度事業(総額1兆2368億円)についても100%の予算化が図られている。2020年大会まで5年を切り、ますます加速化する東京のインフラ整備について、来年度予算原案をもとにみてみた。
■ オリ・パラ関連施設の整備
2020年大会を成功させることが、東京をより進化した成熟都市に導くことになり、結果的に世界一の都市の実現につながるというのが、現在の都政運営の基本理念だ。
いよいよ佳境を迎える大会準備では、競技施設や選手村等の整備に532億円を計上した。整備にあたっては、世界中から訪れるアスリートや観客が快適に大会を楽しめることはもとより、大会後も都民・国民に親しまれるレガシーとなるよう努める。
2020年大会で、バドミントン、車椅子バスケットボールが開催される武蔵野の森総合スポーツ施設では、メインアリーナ、サブアリーナの建設が進められる。
また、本年夏に開催されるリオデジャネイロ大会を契機とした普及啓発や機運の醸成など、国や組織委員会等と連携して準備を進める。
このほか、2020年大会以降を見据え、誰もが安心・快適に暮らし、訪れることのできるまちづくりに向け、鉄道駅、宿泊施設等のバリアフリー化、障害者スポーツの振興にも取り組む。
■ 震災・豪雨対策の推進
世界一の都市を目指すうえで、世界一安全・安心を実感できる都市の実現は絶対条件だ。中でも近い将来の発生が予測される首都直下地震への対策は喫緊の課題。
そのため、都は現在「木密地域不燃化10年プロジェクト」に取り組んでいるところだが、これを一層加速していくため、943億円を計上、延焼遮断帯の形成や不燃化特区の取組みを重点的に実施する。
さらに緊急輸送道路の機能確保に向け、354億円を計上、沿道建築物の耐震化、無電柱化の推進、街路樹の防災機能強化など総合的な取組みを推進する。
一方、近年頻発する集中豪雨対策では、一時間最大75㎜の降雨(多摩部は65㎜)に対応できるよう、調節池や河道改修、分水路、下水道の整備などを着実に推進する。来年度は670億円を計上、環7地下調節池、野川大沢調節池の建設や、王子西1号線など下水道幹線の整備を進める。
また、地下鉄駅等の浸水対策として、鉄道事業者に対し、新たに駅出入口への止水板設置に補助を行う。
津波・高潮対策には517億円を計上、沿岸部・東部低地帯の水門や堤防の耐震化、内部護岸の整備を進める。
■ 幹線道路整備・交通円滑化
都市機能を進化させる上で、人と物の安全でスムーズな移動を確保する交通インフラ整備は欠かせない。
とくに幹線道路の整備は世界の先進都市と比較して、必ずしも進んでいるとは言えないのが現状だ。
そのため、区部環状、多摩南北方向の道路整備に952億円を計上、環状2号線、放射第25号線、辻原町田線などの骨格幹線道路の整備を進める。
昨年3月の品川線の開通で中央環状線が全線開業した首都高に対しては、21億円を出資、平成29年度の晴海線完成を目指す。
一方、踏切による渋滞を解消し、鉄道によって分断された市街地の一体的なまちづくりに資する鉄道連続立体交差化事業は、事業効果が高いことから、引き続き今年度並みの339億円を計上、小田急小田原線、京成押上線など6路線8箇所で工事を進める。
さらに、自転車の利用拡大を図るため、自転車走行空間の整備や、ナビルートの設置、2020年大会に向けた自転車推奨ルートの整備、運転マナー向上の普及啓発などに取り組む。
■ 環境・エネルギー対策
舛添知事の肝いりで進められている「水素社会の実現」では今年度の12億円を大きく上回る45億円を計上、燃料電池車の導入促進や、中小ガソリンスタンドへの水素ステーションの導入支援など、需要と供給の両面から取組みを進める。
地域や家庭も含めた都市のスマートエネルギー化の推進では、今年度の1・5倍の151億円を計上した。
家庭における燃料電池の導入支援を行うことで、家庭のエネルギー消費を削減するほか、民間事業者に補助を行い、地産地消型再生可能エネルギーの導入拡大を支援する。環境性能に優れたユニバーサルデザイン(UD)タクシーの普及促進にも取り組む。
地球温暖化・ヒートアイランド対策には177億円を計上。
新たに中小テナントビルにおいて「グリーンリース」(環境に優しい建物を運用するために必要な、オーナー・テナント双方の責任と義務を定めた賃貸借契約)の普及促進を図るほか、センターコアエリアを中心とした遮熱性舗装の推進、都営バス停留所へのドライミストの設置などヒートアイランド対策にも積極的に取り組む。
■ 東京港・臨海部の機能強化
国際コンテナ戦略港として、首都圏の物流を支える東京港は、近年厳しい国際競争にさらされており、競争力の強化が喫緊の課題となっている。
貨物取扱量のさらなる増加に対応するため、289億円を計上。外貿コンテナターミナルの整備、内貿ユニットロードターミナルの整備を引き続き進めるとともに、港内の物流の効率化に向けた取組みを進めることで、利便性の向上、港湾コストの削減を図る。
「水の都」東京の再生も大きな課題。78億円を計上し、羽田空港と臨海部、都心を結ぶ新たな航路の創設を促進するとともに、水上タクシーの実用化に向けた実験や船着場としての護岸活用を検討するなど、舟運の活性化に取り組む。
近年、ますます大型化しているクルーズ船がレインボーブリッジをくぐれない問題では、新たな客船ふ頭を臨海副都心に整備する。ターミナルビルは「首都の玄関口」をコンセプトとしたダイナミックな大屋根を持ち、2020年大会までに完成させる予定だ。
タグ:東京都 インフラ整備 武蔵野の森総合スポーツ施設 木密地域不燃化10年プロジェクト 鉄道連続立体交差化事業 水素社会の実現