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大庭麗のイタリア食材紀行 第20回2016年01月20日号
第20回 古代ローマから続く伝統料理“ポルケッタ”
日本から10人ほどのグループでイタリアを訪れた際、知り合いのイタリア人がポルケッタ(豚の丸焼き)を食べる食事会を企画してくれました。「いいだろう。ポルケッタ!」と見るからに、こちらよりもイタリア人たちが大喜びしていたポルケッタ の夕べ。
それもそのはず、イタリア中部に伝わる伝統料理のポルケッタは古くから、地域の祭をはじめ、特別な行事や結婚式など、多くの人々が集まる場で食べられてきたため、常になんだか特別で、みんながウキウキとする食べ物のようです。
その歴史は地域によって異なりますが、すでに養豚の文化があった古代ローマや、紀元前8世紀~1世紀にイタリア半島中部にあった都市国家郡エトルリアにまで遡ります。内臓と骨を取り除いた豚肉に、塩、胡椒、皮付きにんにく、レバーをはじめと した刻んだ内臓類、それらと一緒に味の決め手ともなる香草がたっぷりと加わります。
この香草の風味によって、できあがりのポルケッタには強い地域性が出るとも言われます。ローマ近郊をはじめトスカーナなどの地域では、ローズマリーを、ラッツィオ、ウンブリア、マルケ州では野生のフェンネル、もしくはその花を用います。
全長1mはある豚肉を紐で巻き、長い場合は10~20時間かけて特別なオーブンで低温加熱し、中心までまんべんなく火を入れます。このように時間をかけて加熱することで、豚肉の余分な脂は落ち、表面の皮目はカリカリ、中身はしっとりジューシーに仕上がります。
その巨大なポルケッタは、多くの人々に振舞われながら、焼いたその日のうちに薄くスライスして食されるのが伝統です。完全に冷め切る直前の若干あたたかい温度が、香草や豚肉の風味が最も引き立って美味しいと言われます。また、ポルケッタをパンに挟んで、パニーノとして食べるのもポピュラーな食べ方です。
イタリア各地では、ポルケッタ祭も多く開催され、2010年には、全長44・93mのポルケッタがギネス記録となりました。
<大庭 麗(おおば うらら)プロフィール>
東京都生まれ。2001年渡伊。I.C.I.F(外国人の料理人のためのイタリア料理研修機関)にてディプロマ取得。イタリア北部、南部のミシュラン1つ星リストランテ、イタリア中部のミシュラン2つ星リストランテにて修業。05年帰国。06年より吉祥寺にて『イル・クッキアイオ イタリア料理教室』を主宰。イタリア伝統料理を中心に、イタリアらしい現地の味を忠実に再現した料理を提案し、好評を博している。
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