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【豊洲新市場特集】いよいよ来年11月7日 築地から豊洲へ2015年12月20日号
昭和10年の開場以来、長年にわたり都民の食生活を支えてきた築地市場が、来年11月7日、いよいよ豊洲に移転する。昨年2月に着工した豊洲市場の建設は順調に進んでおり、先月末には舛添知事の現地視察も行われた。現地再整備の断念、土壌汚染対策など多くの苦難を乗り越えてきた築地市場の移転は、多くの関係者の努力により、食の安全・安心の確保、物流の効率化が図られた最新の基幹市場として生まれ変わることになる。世界無形文化遺産に登録されるなど「和食」に対する関心が高まる中、2020年オリンピック・パラリンピックに向け、豊洲市場への期待は大きい。
多くの困難を乗り越え実現
日本を代表する市場と言えば「築地」、これは誰もが認めるところだ。生鮮食品を扱う目利きによって培われたブランドイメージは世界にも通じ、多くの観光客が訪れ、場外市場と相まって食文化の拠点として連日賑わいを見せている。
しかし、開場から80年を経て施設は老朽化、物流形態の変化など市場を取り巻く環境への対応が迫られ、平成3年に現在地での再整備に着手することになる。ところが、工事の長期化、整備費の増大、さらに営業をしながらの工事による影響など多くの問題が発生、ついに平成8年、築地での再整備は中止に追い込まれた。
その後、業界団体との協議が重ねられ、平成11年に移転整備に方向転換することが決まり、平成13年12月、「第7次東京都卸売市場整備計画」において豊洲への移転が決定された。
築地からの移転には当時、さまざまな意見があったが、関係者による長期間に及ぶ努力の結果、平成18年10月には市場関係者との間で大筋合意に達することができた。
その後、新たな市場施設をどのようにするか、さらに協議が重ねられ、平成24年11月に施設計画についても合意、豊洲移転に向けた環境は整った。
万全の土壌汚染対策を実施
一方、豊洲にはかつて、ガスの製造工場があったことから、その土壌汚染への対応が課題となった。主な汚染物質は都市ガスの製造過程で生成されたベンゼン、ヒ素などの副産物で、まず、敷地全域を綿密に調査、その結果、高濃度の汚染は一部にとどまり、敷地全体が汚染されていないことが明らかになった。
その後、専門家により対策が検討され、法令で求められる水準を上回る手厚い対策を講じることが決定された。
具体的には、まず、土壌汚染対策では、ガス工場操業時の地盤面の下2メートルまでの土を入れ替えるとともに、その上に2・5メートルのきれいな土壌が盛られた。
地下水汚染対策では基準を超える汚染が見つかった区画の地下水を汲み上げて浄化、また、将来にわたり水質を監視、地下水位を一定に保つとしている。
こうした対策により、一生涯住み続けても健康に影響が生じることはない環境が確保されている。
安全・安心に加え魅力向上も
豊洲市場の敷地は約40ヘクタールと、現在の築地市場の約23ヘクタールから大幅に拡大される。また、都心から2~4㎞、築地から2・3㎞と近く、首都高などの道路、地下鉄、ゆりかもめなどの鉄道と、交通面でもよい条件が整っている。
豊洲市場では築地市場が担ってきた生鮮食品流通の円滑化と価格の安定という機能に加え、食の安全・安心のさらなる向上、物流の効率化、食文化による賑わいの創出など、都民のさまざまな期待に応える施設を目指すとしている。
【食の安全・安心の確保】
「開放型」で温度管理が不十分だった築地市場と異なり、豊洲市場では、卸売場や仲卸売場を「閉鎖型」施設とし、産地から消費までを一貫した低温で管理する「コールドチェーン」を実現、魚や野菜の鮮度を保持する。
【効率的な物流】
荷捌きスペースや駐車場を十分に確保、車両誘導・駐車場管理システムを導入することにより、荷物の搬送をスムーズにして物流の効率化を図る。
【多様なニーズに対応】
食生活の変化に伴う新たなニーズに対応するため、加工・小分け・パッケージ等のサービス機能を設けるほか、一時保管庫を強化する。
【環境への配慮】
約12ヘクタールを緑化するとともに、太陽光発電の導入、外気冷房システムの採用、ターレットやフォークリフトなど場内運搬車両の電動化、リサイクルの推進などにより、CO2排出量を築地市場より低減させることを目指す。
【市場の魅力向上】
「築地ブランド」の魅力を受け継ぐとともに、食文化を紹介する東京の新たな観光拠点として、一般の人も利用できる「千客万来施設」を整備し賑わいを創出、市場の魅力を一層高めていく。
加工施設を新たに設置 青果棟 5街区
5街区には青果部の施設を配置しており、中心となる「青果棟」は延べ床面積9・7ヘクタール、3階建ての建物で、1階は卸売場、仲卸売場、2階は卸会社及び仲卸会社事務所、3階は加工パッケージ施設となっている。
卸売場、仲卸売場は東西316・5m、南北90mの平床、閉鎖型の大空間で、東半分を卸売場、西半分を仲卸売場としている。
売場全体を22℃で温度管理するとともに、外周四面に積込場を配して効率的な搬入搬出を実現することで、荷の鮮度を保つよう配慮している。
仲卸売場は中央吹抜け部分に築地市場と同様の2階建て構造の店舗を99区画設置し、外周部には平床型の店舗スペースを45区画設け、築地の青果部と同様の144店舗を確保している。
3階の加工パッケージ施設は近年の新たなニーズに対応するため、加工・仕分けや包装等ができる施設で、15℃の温度管理を行うこととしている。
2階には事務所のほか、見学者用のデッキを設置し、一般客が物流動線と交錯することなく、安全に卸売場の様子を見学できるよう配慮している。
積込場の屋根部分は緑化するほか、本体屋上にはソーラーパネルを設置して太陽光発電を行うこととしており、環境にも配慮した施設となっている。
買出人の利便性が向上 水産仲卸売場棟 6街区
6街区と7街区を水産物部としており、6街区の「水産仲卸売場棟」は延べ床面積17・3ヘクタール、5階建ての豊洲市場で最大の建物である。1階は仲卸売場、2階は仲卸店舗の棚、3階は仲卸業者事務所、関連飲食店舗、4階は買出人用積込場、関連物販店舗、5階は機器スペースとなっている。
仲卸売場は東西324m、南北160mの高床、閉鎖型空間で、25℃の温度管理を行うこととしている。
仲卸店舗は対面長屋型で、2店舗分を1ユニットとする789ユニットを並べ、築地の1575店舗を上回る1578店舗分を確保している。
店舗の前面に買出し人通路、背面に物流通路を配しており、買出し人通路は3階の見学者通路から見下ろすことができるようになっている。
7街区の水産卸売場棟とは、高架道路とした補助315号線の下に連絡通路を設けて売場どうしを接続しており、閉鎖型空間の中で荷の移動が可能となっている。
売場内の荷の移動は主にターレットと呼ばれる小型運搬車両や台車等により行うので、1階売場と4階積込場を往復するためのスロープを棟内に3か所設置するとともに、徒歩の移動のためのエスカレーターも設置するなど、縦方向の動線も確保し、買出人等の利便性に配慮している。
さらに、水産仲卸売場棟は「魅力ある水際都市空間の創出」という豊洲地区のまちづくりの方針に従い、屋上緑化広場を整備し、見学者等に開放することとしている。
この屋上緑化広場は、晴海船客ターミナルを正面に見て、右に東京スカイツリー、左に東京タワーを遠望し、さらに南に目を向ければレインボーブリッジの下を行き交う多くの船を眺めることができる。
物流機能の充実図る 水産卸売場棟 7街区
7街区の「水産卸売場棟」は延べ床面積12・4ヘクタール、5階建ての建物で、1階は魚種別の卸売場、2階は卸会社諸室、3階は塩干卸売場、加工パッケージ施設、4階は転配送センター、5階は卸会社事務所となっている。
卸売場は東西270m、南北114mの広さで、西側の活魚売場以外は高床の閉鎖型としており、10・5℃の温度管理を行うこととしている。
建物南側にトラックバースを並べ、ドックシェルター等を介して荷を売場に搬入し、取引が成立した荷は建物北側の連絡通路を通って仲卸売場へと運ばれる。また、3階にも大型トラックが直接乗り入れられるようにして、塩干・加工品用の卸売場と加工パッケージ施設を配置するなど、限られた敷地を重層的に利用することで、物流の合理化、効率化を図っている。
さらに、豊洲市場が首都圏における生鮮食料品流通の拠点として機能するよう、集まった荷を積み替えて他市場へ配送するための転配送センターを4階に整備する。
1階、3階、4階は大型トラックの動線を確保するだけでなく、閉鎖空間内で各階の荷の移動ができるよう、荷物用エレベーターやターレット用のスロープを設置している。
このように、市場に求められる物流機能の充実を図るとともに、近年増加傾向にある市場見学者にも配慮し、青果棟や水産仲卸売場棟と同様に卸売場を見下ろすことができる見学者通路を設定している。
特に、水産卸売場棟では、築地市場でも人気の高いマグロのセリを間近に見られるよう、売場内に一段高くなった見学者デッキを設置し、見学通路からこのデッキに下り、10・5℃に温度管理された売場と同じ空気の中で、臨場感あふれるセリを見学することができる。環境面の配慮としては、屋上にソーラーパネルを設置し、青果棟とあわせて合計2000kWの太陽光発電を行うこととしている。
豊洲市場支える中枢施設 管理施設棟
「管理施設棟」は延べ床面積2・4ヘクタール、6階建ての建物で、7街区の北東部に建設される。
文字通り豊洲市場の管理機能を集約した建物で、1階から5階に講堂や業界団体事務室、金融機関のほか診療所などの厚生施設が入居し、6階は衛生検査所と東京都事務室が入居する。
各街区を区切る都道環状2号線と補助315号線の交差点に近く、3つの街区に分かれた豊洲市場のほぼ中央に位置することから、こうした管理機能を集約している。
また、3階からはゆりかもめの市場前駅と接続する歩行者デッキに直結する連絡ブリッジが延びており、市場関係者の歩行者動線の要となるとともに、さらに連絡ブリッジを介して水産卸売場棟へとつながる見学者通路の玄関口ともなっている。
このため、3階には関連飲食店舗を配して賑わいを演出している。
管理施設棟はこうした管理機能のほか、防災センター、特別高圧受変電設備、地域冷暖房受入設備など、卸売市場の運営を支える設備面で中枢機能も併せ持っている。
電力会社から66kVの特別高圧電力を受電し、棟内の特別高圧受変電設備で6・6kVに変換する。このほか、地域冷暖房施設のプラントで発電される電力と、市場内の太陽光発電による電力を集約し、3系統の電力を連系したうえで各街区に供給することとしている。
このため、電力会社が停電になった場合でも、他の系統から必要な電力を供給し、冷蔵庫などの機能を維持することが可能となっている。地域冷暖房施設からは冷水を受け入れ、売場の冷房用熱源として活用する。
管理施設棟は、オフィスビルとしての機能と、設備プラントとしての両面を持っているため、補助315号線に面した北面に事務室等を配し、設備機械室等は南面に集約している。
また、各階外周部に設備バルコニーを設け、バルコニーの外側に壁面緑化パネルをランダムに取り付けることにより、緑豊かなリズミカルな外観を形成している。
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