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NIPPON★世界一 The79th2015年12月20日号

 

防災カーテン『プルシェルター®』の開発・販売等

●帝人フロンティア株式会社 ●港区東新橋(東京支社)
●2012年設立

防災カーテン『プルシェルター®』の開発・販売等

 日本にある世界トップクラスの技術・技能—。それを生み出すまでには、果たしてどんな苦心があったのだろうか。
 室内で火災が起こった際、カーテンへの燃え移りが被害を拡大させる大きな要因と考えられている。同社は高い防炎性を持つ『プルシェルター®』の販売とともに、火災発生時の初期消火の重要性を訴え続けている。住宅密集、高齢化、外国人の増加など多くの社会問題を抱え、かつ国際的なイベントを控えている東京にとって、それは極めて身近な課題と言えよう。

(取材/種藤 潤)

 

『プルシェルター®』を担当する、帝人フロンティア株式会社 生活資材本部 主管の岸本隆久さん

『プルシェルター®』を担当する、帝人フロンティア株式会社 生活資材本部 主管の岸本隆久さん

 東日本大震災から4年。マスメディア等でも日々の暮らしの中の防災対策を促す機会が増えたが、身近にあるにもかかわらず、意外に注目されていないのが、カーテンの防災対応である。

 実は、カーテンは火災時に非常に重要な防災の役割を担っており、カーテンが防災対応しているかどうかで被害は大きく異なると、帝人フロンティアの防災カーテン『プルシェルター®』を担当する岸本隆久さんは言う。

 「室内で火災が起きた時、被害が拡大するかどうかは、天井に燃え移るかどうかで左右されます。壁は建築基準法の内装制限により、不燃化対策が進んでいますが、燃えやすいカーテンを媒介し、天井に達する可能性は十分にあります」

 カーテンによる初期消火。同社は『プルシェルター®』を開発した2012年から、その重要性を訴え続けてきた。だからこそ、その製品の性能へのこだわりも強い。

 

350℃を超えても燃えない状態を維持

 防炎における重要性から、カーテンは「消防法」という法律の「防炎規制」でも「防炎物品」として指定されており、すでに延焼を防ぐ目的の防炎カーテンは販売されてきた。

 同社も長年防炎カーテンを開発・販売してきたが、既存の防炎カーテンよりも高い防炎性能を持つカーテンを開発することに成功。それが『プルシェルター®』である。

 従来製品で用いられているポリエステル製防炎カーテンは、一般的に220℃を超えたあたりから溶け出してしまう。しかし『プルシェルター®』で用いている素材の場合、250℃あたりから消火性ガスを放出。天ぷら油の発火温度と言われる350℃を超えても、布の形状を維持することができると言う。

 「これまでの製品も一定の防炎性はありましたが、我々の製品は難燃性そのものの性能も高く、耐熱性があり、かつその状態をより長い時間継続することもできます」(岸本さん)

 

世界で最も厳しいといわれるフランス防炎検査基準もクリア

『プルシェルター®』を使った天ぷら油の火災時の初期消火

 さらにカーテンなどの化学繊維の燃焼で懸念されるのが、有毒ガスの発生だが、その点も『プルシェルター®』は問題ないと言う。

 「有毒ガスの発生に関しても、厳しい規格で知られる航空機内で使用する製品に適用される、発生ガス量の基準値をクリアしています」

 同社ではこれらの防炎性能をより客観的に証明すべく、世界で最も厳しい性能基準といわれるフランスの「M1試験」を受け、見事にクリアしている。

 「フランスなどヨーロッパでは、病院、ホテルなどの公共の建物においては、カーテンを壁などの内装材の一部として捉え、壁材並の防火性能を求められます。日本でも、カーテンにおいてそのぐらい高い基準が必要だと、我々は考えています」

 こうした高い性能は、国内の防災関連団体からも評価され、内閣府(防災担当)の構成団体・防災推進協議会加盟の一般社団法人防災安全協会の「防災製品等推奨品」として、カーテンでは初めて選ばれた。

 

一般住宅にこそカーテンによる防災対策を

 現在『プルシェルター®』は、病院、学校などの公共施設からは引合いが増えているが、一方で一般住宅への普及が課題、と岸本さんは語る。

『プルシェルター®』は、簡単に外せるフック『プルック®』を用いており、火災時の避難具としても活用できる

 というのも、現行の「消防法」では、不特定多数の人が集まる施設や高層建築物等では防炎カーテンの使用が義務付けられ、普及が進んでいるが、一般住宅ではあまり広まっていないからだ。だが、一般家庭こそ初期消火が重要であり、カーテンの防災化を図るべきだと、岸本さんは危機感を募らせる。

 「大規模な地震が起きた際には、東京や大阪の住宅密集地では、火災が起こる可能性はほぼ100%だと専門家も指摘しています。そのためにもデザイン性を高めるなど、一般家庭でも取り入れたいと思われる商品開発を進めていく予定です」

 また、施設においてもさらなる普及が必要だと言う。

 「今後国内では、“災害弱者”となりうる高齢者や海外からの観光客が増えると予想されます。そのような人たちが集まる場所での災害被害を少しでも抑えるためにも、施設でのカーテンによる初期消火の準備もさらに広めていきたいと思っています」

 一般住宅が密集し、高齢化が進み、外国人も増加することが予想される東京。五輪が開催される2020年を見据えた都市整備を考えると、少なくとも我々都民は、岸本さんの言葉に真摯に耳を傾ける必要がありそうだ。

 

 

 

 

タグ:プルシェルター® ブルック® 帝人フロンティア

 

 

 

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