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1 The Face トップインタビュー2015年11月20日号
株式会社CSS技術開発 代表取締役 高城雄三さん
植木屋になるべく上京。入った会社が公園を専門に築造する造園の会社だった。公園づくりのおもしろさに目覚め、測量技術を身につける。世界初のポケコンで測量用ソフトを開発。このソフトを広く普及させるべく独立。会社を立ち上げたものの、ライバル会社に違法コピーされてしまった。大きな損害を受けたが、これをバネにさらなる技術向上を図り、造園測量から土木・堤防測量などの新規分野へ進出。業界トップクラスの会社に成長させた、株式会社CSS技術開発代表取締役高城雄三さんにお話をうかがった。
(インタビュー/津久井 美智江)
自社開発のソフトを盗まれたことで新たな技術が生まれ、新事業へ進出
—この度は東京商工会議所主催の第13回「勇気ある経営大賞」優秀賞の受賞、おめでとうございます。
高城 ありがとうございます。身に余る名誉ある賞をいただきまして、私も力がわいてきたところです。
—多くの企業の中から御社が選ばれた理由はどんなことだと思われますか。
高城 みなさん苦労は同じようにされていると思います。社員がソフトを持って辞めてしまったとかね。しかし、それをバネにして、その都度以前よりも強くなって蘇ってきた。そのへんが審査員の心を打ったのではないかと思います。
—ソフトを持ち出されるということがあったのですか。
高城 今から10年前に社員が転職先に自分のソフトだと偽って、勝手に持って行ってしまったんです。我が社はソフトの会社でもあり、私が30年以上前に開発し、改良を繰り返したその測量ソフトが一番の売り物なんですね。転職先はそのソフトを使って同じような仕事を始めましたので、お客さんを取られてしまいます。それで、著作権侵害の裁判を起こしたのですが、裁判というのは3年、4年と時間がかかる。その間に体力が落ちては困りますから、相手にはない技術力でさらにいいものをつくり、もっと効率のいいものを次々と開発していきました。
それから、それまでは我が社は造園工事の測量が主な仕事だったのですが、土木業界に進出することにしました。なぜかと言うと、我が社のソフトを違法にコピーした会社は土木関係だったので、主に土木業界にそのソフトを売りはじめたからです。しかし、土木業界に進出してみると、造園とはまるで違って、全く新しい技術を必要と した。そこで、普通の測量会社が持っていない技術を次々と編み出しては特許を取り、危機を乗り越えることができたのです。
—ある意味、ソフトが持ち出されたことで、新しい技術を開発したり、新しい業界に進出するきっかけになったということですね。
高城 そうです。あの出来事がなかったら、今のCSSにはなっていないと思います。
例えば、道路は10年もすると轍(わだち)ができるので、舗装をやり直すんですね。どこの測量会社も何年も前の古い技術を使って測っていたために、交通規制をしないと測れない、あるいは夜間に測らなければならなかった。そこで、歩いて転がすだけで道路のでこぼこが10㎝ピッチで、しかも高さが1~2㎜の 精度で測れる「コロコロ測量」を開発したのです。今は国交省のNETIS(新技術情報提供システム)に登録されて、都心の多くの道路で使われています。
—開発には社長自ら携わっていらっしゃるのですか。
高城 いざとなると火事場の馬鹿力でいろんなアイデアが出てくるので、ソフト開発部長といっしょにそれを具体化しています。最近では、端末を持って歩けば一人で測量ができるワンマン測量機「おまかせ君ワンマン」を作り上げることができました。
きちっとした測量があって美しい公園や安全な建造物ができる
—香川県のご出身で、ご実家が花卉園芸場をされていたそうですけれども、家業を継ぐおつもりでいらしたのですか。
高城 はい。東京に出てきたのも植木屋として仕事を覚えたかったからなんです。
九段下にある(株)富士植木という会社を紹介されて、植木屋だと思って入ってみたら公園を専門に造る会社だった。国会議事堂や皇居、高速道路の法面工事、あるいは新宿御苑や上野公園といった国や都の公園など公共事業を主に手がけている会社で、私は公園の仕事をすることになりました。測量して半年もすると、きれいな公園 ができ上がる。植木よりはるかにおもしろいと、はまっちゃったんです。それで、実家を継ぐことはあきらめました。
—植木と造園はそんなに違うものですか。
高城 植木は、剪定とか木を植えることによってきれいな空間を造ります。公園は、同じきれいな空間ではあるけれども、みんなの憩いの場になります。きれいにできた公園は、実際に使ってみると素人でもわかるみたいですね。大勢の人がしょっちゅう利用しますから、管理する役所もお金をかけて手入れをする。だから、ますます人が集まる好循環が生まれるんです。
—きれいな公園とは、どういう公園ですか。
高城 計算どおり、きちっと測量して造られた公園です。そのためにはコンピュータ・ソフトを使って、シミュレーションをやるのが大事だと確信しています。これを当社では「解析測量サービス」と命名し、全国でサービス展開しています。
以前は造っていって合わないと、無理やり曲げたり、すりつけといって無理やり合わせてどうにかして設計に近いものにしたんです。でも、それではきれいなカーブのはずがカクカクとぎこちなく、きれいに見えない。それは一般の利用者も感じると思います。
—測量は、長さもですけど、高低もありますよね。
高城 はい。特に入り口関係、階段の高さとか重要なところはきっちり測ります。これは公園の場合ですけど、土木の場合は現場によって測量精度、許容範囲が決まっているので、まず範囲内に収まるように基準点や水準点を現場に作ります。特に堤防では非常に重要です。高さが何十㎝も狂ったら氾濫しますからね。また、設計図どおり施工して問題ないかどうかというチェックもします。設計者が見落としている可能性もあるので、念のためにもう一度全部測り直すんです。
—工事が始まる前の基礎となる測量と、設計図が正しいかどうか確認する測量があるのですね。
高城 公共測量と工事測量というのですが、公共測量というのは道路を造るとか団地を造るとか、これから設計をするためのもとになる測量ですね。工事測量は工事を始める時に位置の基準点と水準の高さの基準を持ってきて、設計図どおりにできるかどうかを検証する測量です。合わない時は修正した施工図を起こして役所に提出し、担当者がチェックして大丈夫となって初めて承認がもらえ、施工を始められます。
両方をやれる会社は少ないので、役所の方からは「CSSがやっているなら大丈夫だろう」という評価を受けております。
有給休暇は100%以上!高い利益率で改革を進める
—「勇気ある経営大賞」の他にもずいぶんいろんな賞を受賞されていますね。
高城 はじめは賞をもらおうなんて気持ちは全くありませんでした。いい仕事をすればお客さんが評価して、また仕事がいただける。それが私の理念だったんです。
しかし、3年前、新卒者を採用することにした。新卒者に会社のどこを評価したのかと聞くと、会社のことは全然わかっていなくて、先生に紹介されたから来たと。それで、より多くの学生に我が社をアピールしようと、2年ぐらい前から賞をもらうようにしたんです。
—第三者からの評価を受けるということは、学生だけでなく社会的な信用にもつながると思います。
高城 そうですね。我が社の内容をもっと知ってもらい、他社よりもはるかにいい本当の姿を見てもらいたいとインターンシップもやるようになりました。
それと同時に改革をして、有給休暇は完全に消化するようにしました。それも100%以上。以上というのは、例えば有給休暇が20日あるとすると、なぜか2、3日残す。病気や冠婚葬祭のために残しておくわけですが、それでは私の100%という考えとは違ってしまうので、万が一全部使い切ってしまった場合は、翌年の分から前 借りしてもかまわないことにしたんです。その結果、安心して100%以上有給を消化できるようになりました。
—それはいい考えですね。ところで、とても女性が多いという印象ですが。
高城 測量はふつう男の世界で、部屋は土の茶色っぽいイメージかもしれませんが(笑)、うちは造園の感覚ですから緑が多いですね。
我が社では30年前から、必ず男性と女性が組んで仕事をするという形でやってきました。技術の会社ですから、10年やっている人よりも20年やっている人の方がやっぱり上。女性も長く働けるように、働き方は一人ひとりの希望を面接で聞いて決めています。
若い時は子どもが早く帰ってくるから4時までとか、春休みと夏休みは休みたいとか、中学になったら逆に子どもが帰ってこないから、フルタイムにしましょうとか。子供が巣立ったので正社員になりたいとか。従業員の希望はほとんど叶えられています。
—産休とかで一度辞めてしまうと、復帰するのはなかなか大変ですものね。
高城 今も産休で一人休んでいますが、また戻ってきますよ。
それから、正社員もアルバイトもパートも基本的に全員参加で、毎年海外旅行に行っています。外国に行って見聞を広め、社会勉強をしてほしいと始めたのですが、 これで団結心というか、いっしょに頑張るという意識が高まっていると思います。
—経費は会社が負担されるのですか。
高城 儲けているからいいんです。利益率は他社の10倍ですから。
それもこれもライバルと戦っている最中にいろんな技術を開発し、それをソフトでさらに磨きをかけてきたからこそだと思います。
よく、機械を買えば同じことができるのではないかといわれますが、普通はその機械の能力を30%ぐらいしか使っていません。しかし我が社では、どの機械もその能力を出し切れるよう、ソフトと新技術で磨きをかけていますから利益率が全然違うんです。
当社は利益の1割を賞与で還元する制度を設けております。この結果、社員の年俸は業界平均の1・4倍となっています。利益が出れば従業員への還元をはじめとした様々な会社の改革がやりやすい。そういう意味でも利益は大切だと思います。
—ところで、今年一杯で一線を退かれるということですが、これからの人生のスケジュールは?
高城 ずいぶん東京に長くいたものですから、田舎に戻りたいという気持ちはありますね。ただ、次の社長がちゃんとできるようになるまでは応援団でいようと思っています。
これまでの戦略を継承しつつ積極的に全国展開をして、もっともっと大きくしていってほしいと思います。
<プロフィール>
たかしろ ゆうぞう
1951年生まれ、香川県出身。香川大学農学部卒業後、株式会社富士植木に植木職人として入社、その後造園施工技術者として登用される。1982年、独学で「おまかせ君」の原型を作る。1985年8月、全国の造園施工技術者に便利に使って欲しいという一心で独立し、シーエスエス技術開発を創業。1986年1月、株式会社シーエスエス技術開発を設立、代表取締役に就任。2015年6月、株式会社CSS技術開発に商号変更。
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