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大庭麗のイタリア食材紀行 第15回2015年08月20日号
第15回 冬に向けた、真夏のトマトの瓶詰めづくり
イタリアの友人の家で、“今日は簡単にスーゴでもいいかしら?”とシンプルなトマトソースのパスタをご馳走になると、それがとっても美味しいことがしばしば。その多くの理由が、夏に作った自家製の瓶詰めのトマトを使っているから。イタリアではマンションでも、一戸建てでも、ほぼすべての家に貯蔵室があり、旬の野菜を加工、瓶詰めにして貯蔵する習慣があります。夏場のトマトを加熱して漉したパッサータもそのひとつです。
私が以前住んでいた南部の地域では、パッサータづくり専用のトマトを潰して漉す機械を持っている家庭も多く、夏になると、大量のトマトの瓶詰めを仕込んでおり、私も何度かその作業を手伝わせてもらいました。まず一番大切なのは、良質で完熟なトマトの選別。熟れ過ぎていたり、傷のあるものは絶対に使いません。まずよく水洗いし、沸いたお湯の鍋で加熱します。トマトは皮ごと加熱することで、皮の持つトマト本来の風味がしっかりとパッサータに加わるそう。湯から取り上げたトマトは、水気をよく切り、若干崩して、内部の余分な水分を取り除き、その後よく潰して、最終的に漉して皮を取り除きます。数枚のバジルと一緒に瓶詰めして、さらに鍋で煮沸してできあがり。真夏に行われるこれらの作業は、すべて寒い冬の日に食べる美味しいトマト料理のためなのです。
ただ、美味しくできあがったパッサータは、しばしば、冬が訪れる前から食べ始めてしまい、さすがに一冬分は賄えないこともあるようです。
特別に美味しい料理を作りたい時にこそ、使われる特別なパッサータ。それを使った美味しいスーゴをご馳走してもらうと、シンプルな料理が、とても贅沢なおもてなしに感じられます。
<大庭 麗(おおば うらら)プロフィール>
東京都生まれ。2001年渡伊。I.C.I.F(外国人の料理人のためのイタリア料理研修機関)にてディプロマ取得。イタリア北部、南部のミシュラン1つ星リストランテ、イタリア中部のミシュラン2つ星リストランテにて修業。05年帰国。06年より吉祥寺にて『イル・クッキアイオ イタリア料理教室』を主宰。イタリア伝統料理を中心に、イタリアらしい現地の味を忠実に再現した料理を提案し、好評を博している。
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