HOME » トップインタビュー一覧 » トップインタビュー Vol.92 東京信用保証協会 理事長 村山寛司さん
1 The Face トップインタビュー2015年08月20日号
東京信用保証協会 理事長
村山 寛司さん
1937年、当時の深刻な不況の中、中小企業の資金難を打開するため東京府と東京市により設立された『東京信用保証協会』。以来、信用保証事業を行う機関として、東京の中小企業者の資金調達を支えてきた。多様化するニーズに即して、信用保証制度は逐年、充実強化が図られている。中小企業を様々な側面から支え続けている東京信用保証協会理事長、村山寛司さんに、同協会の現在の取り組み、東京の中小企業の現状についてうかがった。
(インタビュー/津久井 美智江)
経営支援を専門に行う「企業サポート推進プロジェクト」
—東京信用保証協会は、都内の中小企業者が金融機関から事業資金の融資を受ける際の「保証人」になってくださる大変ありがたい存在ですが、他にも様々な支援活動をされているのですね。驚きました。
村山 当協会は「東京は中小企業が元気にする」との想いで、都内中小企業者の皆さまの支援に努めている公的機関です。
当協会が「保証人」となることで中小企業者の皆さまの借入を容易にする業務を行っていますが、それだけでなく、これから事業を始めたいとお考えの方や事業を開始されたばかりの方の支援や、厳しい経営環境で苦労されている中小企業者の皆さまの経営支援の取り組みも進めています。
—どのような中小企業者が、東京信用保証協会を利用しているのでしょうか。
村山 現在、都内には約44万の中小企業がありますが、このうち約20万企業が当協会をご利用いただいています。利用率は都内中小企業者の約半数(46%)になります。このうちの8割超(83%)が、従業員数20名以下の小規模事業者です。
昨年度の当協会をご利用いただいたお客さまは、約8万4千件、融資金額では約1兆7百億円でした。
中小企業を取り巻く環境が、リーマンショックや東日本大震災以降も依然として厳しい状況であったことなどから、近年、保証のご利用については件数・金額ともに減少傾向が続いていました。
しかし、徐々にではありますが、景気回復の下支えなどから、昨年末頃から保証利用の金額が増加傾向となっています。中小企業者の間に次に向かって頑張ろうという機運がさらに拡がっていくよう、私たちも頑張っています。
—都内中小企業者を元気にするために、最近特に力を入れている取り組みはどんなことでしょう。
村山 現在、当協会が特に力を入れている取り組みが3つあります。
ひとつは、今年度、経営支援を専門に行う『企業サポート推進プロジェクト』を立ち上げたことです。
リーマンショック以降も、中小企業者にとって経営環境は依然として厳しい状況が続いていますが、そうしたなか、中小企業者のお客さまのなかには、経営の安定化や発展に取り組もうという考えをもっているものの、改善する手法や計画策定に不慣れなため、なかなか実践に移せないという悩みをお持ちの方が少なくありません。
そこでお客さまのところへ、私どもが出向いて直接お話しをうかがい、具体的な支援に結び付けていこうというのが、このプロジェクトです。現在、このプロジェクトに協会を挙げて取り組んでいます。このプロジェクトでは、ご希望に応じて、中小企業診断士などの専門家を無料で派遣するなど、経営改善に向けて総合的な支援を行っています。
一方、返済方法の変更等による資金繰りの安定化を必要とされる方には、引き続き適切かつ柔軟に対応しています。
「元気・東京ネットワーク」と「江戸・TOKYO 技とテクノの融合展」
—無料で専門家のアドバイスがいただけるのですか? それはありがたいですね。
村山 ぜひ、ご活用いただければと思います。
もうひとつの取り組みは、都内の金融機関や関係機関との連携です。現在、都内には中小企業者の皆さまを支援しているさまざまな金融機関や関係機関がありますが、これまで、それぞれが独自に支援を行っていたものを、公的機関である東京信用保証協会が事務局となり、これらの金融機関や関係機関と連携し、より効果的に支援していく仕組みを構築しました。それが、「東京企業力強化連携会議(略称:元気・東京ネットワーク)」です。
この会議は、都内に拠点を置く金融機関・中小企業支援機関、専門家団体など、計80の機関・団体により構成され、アドバイザーとして中小企業庁・関東経済産業局・関東財務局東京財務事務所および東京都にもご参画いただいています。
この会議は大きく「全体会議」と「経営サポート会議」からなっており、「全体会議」は、参加している各機関との中小企業の経営改善に関する情報共有を主な目的に、「経営サポート会議」は個別の企業と取引金融機関とが一堂に会し、早期経営改善に向けて話し合うことを目的としています。
3つ目は、当協会をご利用されているお客さま同志の結び付きや、新たなビジネスチャンスのきっかけづくりなどの場を提供し事業の拡大につなげていただこうという、ビジネスフェア「江戸・TOKYO 技とテクノの融合展」の開催です。
当協会が主催して毎年開催しており、今年で9回目となります。伝統工芸品からIT関連等の先端産業まで、幅広い業種が一堂に集結する中小企業の総合ビジネスフェアです。
これまでに延べ約2千の企業が出展されていまして、出展された企業からは毎年、「新規顧客の開拓につながった」、「商品やサービスなどのPRができた」、「大手メーカーと共同開発に向けた商談ができた」などの声をいただいています。
—今年のビジネスフェアは、いつ行われるのですか。
村山 10月2日です。今年のビジネスフェアでは、新たに「創業支援企画」を実施し、創業をお考えの方や創業間もない方にスポットをあて、先輩経営者による講演や専門家、支援機関による個別相談の実施なども行う予定です。創業の夢を実現するための様々な応援プログラムを用意しておりますので、多くの皆さまにご来場いただけるとうれしいですね。
東京都と連携した取り組み「創業融資」と「事業承継支援融資」
—東京都との連携としては、どのような取り組みがございますか。
村山 「東京都中小企業制度融資」を東京都との連携の大きな柱と位置付け、その推進に積極的に取り組んでいます。平成27年度は、都内で事業を始める方の増加、事業の承継でお困りの方などへの支援として、さらに制度の新設や拡充がなされました。
ひとつは、これから事業を始める方や始めたばかりの方を対象とした「創業融資」です。創業初期における事業の安定化というのは、創業者の皆さまにとって決して容易なことではありません。これまでの融資制度が拡充され、利用されるすべての方を対象として、都が信用保証料の2分の1を補助することとなりました。
次に、後継者に事業を引き継ぐ際に必要となる資金を支援する「事業承継支援融資」です。事業承継の際の長期的な資金繰り安定のための資金や、新しい商品を開発するために必要となる先行支払資金など、経営者の交代や後継者への事業引き継ぎ前後に発生する資金需要に幅広く対応することで、事業承継を円滑に進められるよう新設されました。この融資制度を利用される場合も、都が信用保証料の2分の1を補助します。
さらに、せっかく取引先からまとまった発注を受けたものの、売上入金と支払とにズレが生じ困っている場合など、入金時の一括返済や入金予定に合わせた返済日の設定が可能な制度を始めました。それが、「一般事業資金融資」(受注対応特例)です。柔軟な返済方法の設定により、受注獲得を後押しできると考えています。
—本当にいろいろな取り組みをされているのですね。
村山 これらに加え、最近、多くの都内中小企業者の皆さまにご利用いただいている「特別借換」という融資制度もあります。
既にご利用中の保証付き融資を借り換えることにより、資金繰りの安定化や経営改善につなげることを目的としたもので、返済期間(返済ペース)を見直すことで、中小企業者の皆さまの月々の返済額の軽減を図ることができるといったメリットがあります。さらに、従業員数が製造業等20人以下(卸・小売・サービス業では5人以下)の小規模企業者に対しては、都が信用保証料の2分の1を補助します。
平成26年度のご利用は、約6千3百件、約2千億円にのぼり、中小企業者の皆さまの資金繰り改善のお役に立っていると思っています。
—全国信用保証協会連合会の会長も兼任され、大変お忙しいとは思いますが、息抜きにはどんなことをされているのですか?
村山 ここ数年は朝5時に起きて散歩をしています。寒くても暑くても、多少雨が降っても歩くようにしています。
—お一人で? どのくらいの時間を?
村山 妻と一緒に。一人だとなかなか続きませんし、不審人物に思われてもいけませんのでね(笑)。平日は30分、休日は1〜2時間歩きます。平日は歩くだけで精一杯ですが、休日などは、歩いているうちに思いもかけないアイデアが頭に浮かぶことがあります。
—健康のためにもぜひ続けてください。最後に都内の中小企業者の皆さまへ、一言お願いします。
村山 はじめにもお話しましたが、当協会は「東京は中小企業が元気にする」との想いで、中小企業者の皆さまへさまざまな支援を行っています。これからも、金融機関や関係機関との連携の強化を図り、信用保証による金融支援とともに、経営支援にも組織を挙げて積極的に取り組み、都内経済の活性化に貢献できるよう力を尽くしてまいります。
都内に本店と11の支店がございますので、どうぞ、お気軽にお越しくださるようお願いいたします。
<プロフィール>
むらやま かんじ
1951年生まれ、東京都出身。東北大学経済学部卒業後、東京都入都。環境局長、財務局長を経て、東京都副知事。東京地下鉄株式会社 代表取締役副社長などを経て、2014年9月、東京信用保証協会理事長に就任。同月、一般社団法人全国信用保証協会連合会の会長に就任。
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