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大庭麗のイタリア食材紀行 第14回2015年07月20日号
第14回 イタリアの旬のアンズは格別な味わい
イタリアでの修行時代に、フレッシュのアンズ(伊:アルビコッカ)を口にして、その凝縮された豊かな風味に感動した覚えがあります。その収穫シーズンはたったの2~3週間、そして完熟したものは3、4日しか持たない、非常に旬の短い果物。今シーズンはちょうど、その時期にイタリアを訪れ、アンズの生産者とお話をする機会がありました。
イタリア人お得意の“マンジャ、マンジャ(まぁ、食べて、食べて!)”の言葉につられて、朝摘みの完熟のアルビコッカを堪能しつつ、“なぜか日本では、こういった風味のアンズに出会えなくて”と話すと“それはそうでしょう”とすぐに答えが返ってきました。
中国が原産のアンズは、ヨーロッパ系とアジア系の2つの品種が各国に伝わったとされています。香りと甘みの強さに特徴があり、生食に適した品種が、イタリアやギリシャなどの地中海地方に紀元前60~70年頃に伝わったそう。豊富な太陽の日差しを好み、雨や湿度を嫌うその特性は、まさに地中海性気候に適した品種。
逆に、湿度の高い日本をはじめとしたアジア諸国には、香りと酸味が強く、生食よりも加熱調理に向いた別の品種が、平安時代に東アジアを経由して根付いたのだそう。
“せっかくだから、いっぱい食べていくといいわ”と言われたものの、そんなにアンズを大量に食べたらお腹を壊さないかしら?と冗談まじりに聞くと、“アンズには身体を温める効果があり、女性には最適な果物。また老化防止や発ガン予防、免疫力を高めるカロテンやミネラル、ビタミンAに、クエン酸をはじめとした有機酸を多く含み、疲労回復や風邪の予防効果もあるから、大丈夫よ”と言われました。
そんな言葉を信じて、甘酸っぱく香り豊かなイタリアのアルビコッカをたっぷり味わってきたのでした。
<大庭 麗(おおば うらら)プロフィール>
東京都生まれ。2001年渡伊。I.C.I.F(外国人の料理人のためのイタリア料理研修機関)にてディプロマ取得。イタリア北部、南部のミシュラン1つ星リストランテ、イタリア中部のミシュラン2つ星リストランテにて修業。05年帰国。06年より吉祥寺にて『イル・クッキアイオ イタリア料理教室』を主宰。イタリア伝統料理を中心に、イタリアらしい現地の味を忠実に再現した料理を提案し、好評を博している。
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