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【島嶼特集】大島2015年07月20日号
東京都大島支庁は、伊豆諸島のうち大島、利島、新島、式根島、神津島の5島4町村を所管しており、東京都離島振興計画を踏まえ、道路・砂防・海岸・公園などの基盤整備を行っております。
さて、大島町では平成25年10月16日未明に台風26号が接近し、24時間雨量824ミリ、最大1時間雨量122.5ミリという記録的な豪雨により土石流が発生しました。これにより死者行方不明者は39名にのぼり、多数の負傷者や住宅等にも大きな被害が発生しました。
この災害に接し、今まで整備を進めてきた土木構造物の効果と限界について改めて考えさせられることになりました。自然災害が頻発する島しょ部における基盤整備とソフト対策についてご紹介いたします。
砂防事業
大島の三原山は、過去から幾度となく噴火を繰り返しており、昭和61年噴火の際には、約1か月間の全島避難となるなど、島民生活にも大きな影響がありました。この噴火を契機に、都では平成2年に伊豆大島総合溶岩流対策基本計画を策定し、溶岩流や降灰後の降雨による土石流対策として、これまで特に緊急性の高い元町、野増地区の渓流から砂防設備の整備を進めてまいりました。
平成25年に発生した土砂災害は、平成2年から進めてきた砂防設備の整備効果により、相当程度被害の抑制が図られたものと思われます(写真1、2)。しかしながら、元町地区では大きな人的被害が発生したことも事実であり、都ではこの土砂災害を受けて「伊豆大島土砂災害対策検討委員会」を設置し、平成26年3月に報告書を策定しました。
委員会報告における土砂災害対策の基本方針、元町地区の基本計画にもとづいて、大金沢本川堆積工の除石工事や堆積工の嵩上げ工事(写真3)、仮導流堤の設置工事は平成26年5月末までに行い、降雨期までの応急対策を完了いたしました。現在は短期対策として大金沢左支川の山腹工、中流・下流導流堤(写真4)の工事を実施しています。また大金沢の流路工改修については、大島町の復興事業などと連携しながら平成28年度着工にむけて準備を進めています。同時に、北の山川、差木地沢、滝川沢の各渓流において総合溶岩流対策事業による砂防設備の整備も進めています。
ところで、土砂災害による被害を最小限に抑えるためには、砂防設備の整備等の基盤整備と連携して、ソフト対策も進めていかなくてはなりません。
都では、大島において平成26年度から土砂災害防止法に基づく基礎調査に着手し、平成27年6月30日に土砂災害警戒区域等の指定を行いました。他の管内各島においても順次基礎調査、区域指定を進めていき、平成30年度には管内全島において指定を完了させる予定としています。
道路整備
土砂災害のみならず、様々な災害の発生時に重要な基盤整備は、砂防設備にとどまりません。
島内道路の骨格をなす都道は、各集落と島の玄関口である港湾、空港を結び、島民の日常生活を支え、観光をはじめとする産業振興を図るとともに、災害時には避難路となる重要な基盤施設であります。
このため、島特有の地形条件による急カーブや急勾配、すれ違いが困難な狭隘な箇所において、道路拡幅や線形改良、複数ルートを確保する代替路の整備などを進めています。
集落内が非常に狭隘である大島の泉津地区では、1期の現道拡幅区間が完成し、現在は2期区間において、観光名所である椿トンネルを保全するため現道に並行した新設道路の整備を進めています。さらに、大島の間伏地区でもバイパス整備を進めています。橋梁を含む1期区間が完成しており、続く2期区間において早期完成を目指し、整備を進めています。
神津島においては、平成12年の新島・神津島近海地震で多くの斜面が崩壊し、都道が寸断されました。このため、鉄砲場地区で都道のダブルルート化を図る新設の道路及び橋梁整備(写真5)を実施しており、早期完成を目指しています。
道路保全
大島支庁管内は、5島で8路線総延長94㎞の都道を管理していますが、島しょ特有の厳しい自然条件下にあり、さらに一昨年には土砂災害も経験したことから、道路施設の補修や維持管理といった道路保全の重要性が増しています。
道路を常時良好な状態に保つため施設の点検調査を行い、道路や橋梁の補修を実施するとともに、風水害など災害を未然に防ぐ道路災害防除事業にも取り組んでいます。また、歩行者や車両ドライバーの通行安全確保のため、歩道整備や標識整備等の安全施設事業も推進しており、より一層の安全確保を図っています。
今後も住民要望を踏まえつつ、車道舗装の路面状況、舗装履歴、道路斜面調査等をもとに、道路施設の状況を的確に把握し、緊急性・重要性の高い箇所から順次計画的に事業を推進していき、更なる安全で良好な道路の保全を行ってまいります。
海岸整備
管内の各島は、崩壊しやすい地層から形成されています。冬季を中心に西寄りの季節風が強く吹くことが多く、波浪による海岸浸食も著しいものがあります。
このような厳しい自然条件から国土や人々の命、財産を守るため、大島支庁では海岸保全事業を進めています。
その一方、管内の海岸は美しい自然の象徴であり、その自然環境の保全と安全利用にも配慮しつつ事業に取り組んでいます。
近年は、新島の和田浜海岸で離岸堤(人工リーフ)設置を、若郷海岸では養浜など継続的に進めるとともに、その他各島の海岸保全区域において既存の護岸等の維持保全事業を実施しています。
公園整備
管内のほとんどが富士箱根伊豆国立公園に属し、総面積の約8割が自然公園法の特別地域に指定されています。自然環境豊かな景観は、島の経済振興に大きく寄与する観光資源です。大島公園事務所では大島支庁管内の大島、利島、新島、式根島、神津島の園地の整備事業や大島公園の動物園と椿園(写真6)の管理運営を行っています。現在、ほぼ整備は終了していることから、老朽化した施設の改修がメインとなっています。平成27年度は式根島大浦の便所改修、新島羽伏浦の滑りやすい園路の改修、キャンプ場の便所、管理棟の新築、大島海のふるさと村のふれあい橋の改修等が主な事業内容となっています。
今後も老朽化した施設の改修をメインとしながら、島の魅力を最大限生かし、観光面でも大いに貢献できるような整備を行ってまいります。
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