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局長に聞く79 教育長2015年06月20日号
教育長 中井 敬三氏
東京都の各局が行っている事業について局長自らが説明する「局長に聞く」。79回目となる今回は教育長の中井敬三氏。議会の同意を得て今年4月1日に就任したばかりの中井教育長に、教育の質の確保などについて率直なお話を伺った。
(聞き手/平田 邦彦)
キャリア教育に早期から重点
—教育は「国家百年の計」と言われるほど重要なものですが、反面、均質性を保つのは難しいか と思いますが。
小学校と中学校の設置者は各区市町村ですから、各教育委員会が学校運営については第一義的な責任を有しています。東京の場合は私学も多いので、制度的に東京の教育の均質性の確保は難しいところがあります。しかし、教育には、ある程度の自主性、多様性は本来的に必要なものです。その点で東京の現状に大きな問題があるわけではないと思います。
東京都教育委員会は区市町村教育委員会を指導する立場でもあるので、個々の教育委員会の自主性を尊重しつつ、助言や財政的な支援をしています。こうしたことによって東京都全体の教育水準を上げていくことにつながっていきます。
ちなみに東京都教育委員会の教育目標は、「互いの人格を尊重し、思いやりと規範意識のある人間」「社会の一員として、社会に貢献しようとする人間」「自ら学び考え行動する、個性と創造力豊かな人間」の育成に向けた教育を重視する―です。
現在、親の経済状況や親子関係など、家庭環境は多様です。また、個々の子供の能力や希望も様々です。そうした子供たちの状況にいかにきめ細やかに対応するか、これがしっかりとできないと子供の潜在的な力や将来の可能性を引き出すことができないと思います。
—文部科学省は大学の設置に関してドラスティックな規制緩和を検討しているとのことです。専門職に特化した教育を実施し、「即戦力」となる人材の育成が重要と思うのですが。
教育には次の時代を担う人材を育てるという大きな使命があります。これからの日本を担う若い世代にどれだけの力を付与できるか、教育が果たす役割は大きく重たいものがあります。
大学教育の重要性は勿論ですが、高校生あるいは中学生の頃から、「自分は将来何になるのか」という目的意識を、もっと持たせるべきだと思うのです。
単に「勉強しなくてはいけないから」「上の学校に行かなくちゃいけないから」というだけで日々の学習をしていては、学習意欲も続かないし、自分に合った効率的な勉強もできないと思います。
東京都教育委員会はキャリア教育に早期から力を入れています。
キャリア教育をやることのねらいは、できるだけ多くの子供に、自分の具体的な将来像について考えてもらうことにあります。悩んで悩んで結論がなかなか出ない子供もいるでしょうが、悩む過程も大事なことですね。ただ漠然と勉強することは本人にとっても社会にとってもあまり効果的な教育にはならないと思います。
常に高みを目指す教育を
—少子化が進んでいます。子育てがやりやすい教育のあり方というのはあるのでしょうか。
仕事も子育ても男女が共に行う生活パターンは以前に比べると随分定着してきたと思います。今の子供たちは小さいうちから女の子がリーダーシップを取り、クラスの中で存在感を示しているケースも多くありますからこれからも男女平等、家事・育児の同等な配分は着実に進むでしょう。
むしろ、これとは別に、生きる力といいますか、困難を乗り越えていく力が若い世代に欠けてきているように見受けられるのが気がかりです。大学を出ても非正規社員のままであったり、いつまでも職に就かない若者がいる、こうした現象がこれからも長く続けば、社会の活力は確実に失われていきます。いかに自立した社会人となるかをしっかり意識付けすることが重要です。
—人を育て、教育することは難しいですね。
おっしゃる通りです。一朝一夕で出来るものではありません。膨大な時間と労力がかかりますが継続して行うことが非常に重要です。
日本人は戦後の高度成長期と今を比べると、確実に気質が違っています。特に若い世代は、諸外国と比較しても目的意識や自己肯定感が低いと言われています。
日本は国際競争の中で自分たちの存在を維持、向上させていかなければならない宿命にありますが、海外に出て成功を収める、いわば「一旗あげる」という積極性を持つ若い人材が減ってきているということは、まさに亡国の危機だと思います。
—教員の質の向上という意味では、社会経験のある人材の登用も重要と思いますが。
都庁では人材の確保が大きな課題となっていて、中途採用を積極的に行っていますが、都教育委でも同様に社会経験のある人材を数多く採用しています。
今、民間企業では新卒者の3分の1が3年以内に辞めてしまうと言われていますが、こうした人たちの中で教員免許を持っている人材が教員採用試験をかなり受けに来ています。社会経験を積んでいる人材は教員集団の多様性を拡げ、子供の教育にも大きなプラス効果があると考えています。
教育には「これでいい」というものはないと思います。様々な時代の変化の中で教育に求められる要求も変化していますからね。また、親や子供たちがより良い教育を望むのも当然です。ですから、我々は、昨日よりも今日、今日よりも明日という形で常に教育の向上を目指す努力を続けていかなければなりません。
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