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大庭麗のイタリア食材紀行 第11回2015年04月20日号
第11回 地中海沿岸地方に伝わるスーパーフード ルピーニ
古代ローマ時代、イタリアの地ですでに栽培されていた豆の一種、ルピーニ。大豆や卵に優る高タンパク質に、豊富な鉄分、カリウム、ビタミンB1、オメガ3などの脂肪酸と、その栄養価は非常に高く、当時の人々にとっての貴重な栄養源でした。
その名の語源は、ラテン語で“狼”を意味する“Lupus”。土壌の養分を吸収しつくし、どんな土地でも育つこの植物の特性を、狼に例えたという説もあり、イタリア語名ルピーニも“小さな狼”を意味します。日本では、はうちわまめ(葉団扇豆)、ルピナスの名前で鑑賞用の植物として知られていますが、この豆を食用にする習慣はないようです。
地中海地方では食用として歴史のあるこの豆、実はアルカロイドと呼ばれる毒性があります。そのため、茹でた豆を塩水に漬け、その塩水を約5日間定期的に交換することで、その毒成分を取り除きます。もちろん、家庭でもできる工程ですが、塩水漬けで販売されるのが主流で、軽く塩抜きしたものを、まるで茹でたソラマメを食べるかのように、おつまみとして用いるのが一般的です。
近年、ミラノ大学などの研究により、ルピーニにはコレステロール値や血糖値を下げ、高血圧症、糖尿病を予防する効果が認められました。
ルピーニでつくったミルクを毎日500cc飲んだ被験者たちは、1カ月でコレステロール値が平均10%、LDL悪玉コレステロール値に関しては12%の低下がみられ、健康食品として豆乳やアーモンドミルクのように、ルピーニでつくられたミルクや加工品がこの先注目されるだろうと、ヨーロッパでは話題になっているそう。いつの日か日本にも、ルピーニの健康食ブームが訪れるのでしょうか?
<大庭 麗(おおば うらら)プロフィール>
東京都生まれ。2001年渡伊。I.C.I.F(外国人の料理人のためのイタリア料理研修機関)にてディプロマ取得。イタリア北部、南部のミシュラン1つ星リストランテ、イタリア中部のミシュラン2つ星リストランテにて修業。05年帰国。06年より吉祥寺にて『イル・クッキアイオ イタリア料理教室』を主宰。イタリア伝統料理を中心に、イタリアらしい現地の味を忠実に再現した料理を提案し、好評を博している。
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