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大庭麗のイタリア食材紀行 第10回2015年03月20日号
第10回 春の訪れを知らせるホワイトアスパラガス
春の訪れを告げるイースター(復活祭)までもう少し。日本同様に四季のあるイタリアにも、待ちわびる春を知らせる食材が数多く存在します。その代表が、ホワイトアスパラガス。イタリアの人々にとって、春先に初物を見かけると手を出さずにはいられない、その存在はまさに、私たち日本人にとっての春先の筍のようです。
イタリアで最も有名なホワイトアスパラガスの産地は、D.O.P.(保護原産地呼称)に指定されている、北イタリア のヴェネト州、バッサーノ・デッラ・グラッパ(イタリアの葡萄の蒸留酒グラッパ発祥の地として有名な村)です。D.O.P.の規定では長さ18㎝~22㎝、中央の太さの直径が11㎜以上、全体が真っ直ぐで穂先が密であり、若干尖ったものとされています。通常のアスパラガスより大ぶりですが、細かい繊維に覆われたその質感は水々しく、食感は柔らかく、甘みとほのかな苦味の伴う繊細な味わいで、ホワイトアスパラガスの王様とも呼ばれます。
そもそもイタリアにおけるアスパラガスの歴史は古く、メソポタミア文明を起源に、すでに古代ローマ時代にはそれらが食されていた文献が残っています。もちろん、当初は日光を浴びて育った緑色や紫色の物が主流でしたが、16世紀のある年、北イタリアで大規模な雹害(ひょうがい)が発生。ベネト州にもその被害が及び、穂先が折れて出荷できなくなってしまったアスパラガスは、やむなく畑に放置されました。後日、土を被って通常の色と異なるそれらを口にした生産者たちは、より繊細で、甘みの際立ったその味わいに感動。そんな偶然の産物として、遮光して栽培をするホワイトアスパラガスがこの地に根付いたと言うわけです。
お勧めの食べ方は、最もポピュラーでシンプルなもの。半熟卵を添え、パルミジャーノ・レッジャーノと良質のオリーブオイルをかけたその一皿は、まさにイタリアの春の味わいです。
<大庭 麗(おおば うらら)プロフィール>
東京都生まれ。2001年渡伊。I.C.I.F(外国人の料理人のためのイタリア料理研修機関)にてディプロマ取得。イタリア北部、南部のミシュラン1つ星リストランテ、イタリア中部のミシュラン2つ星リストランテにて修業。05年帰国。06年より吉祥寺にて『イル・クッキアイオ イタリア料理教室』を主宰。イタリア伝統料理を中心に、イタリアらしい現地の味を忠実に再現した料理を提案し、好評を博している。
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