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局長に聞く75 青少年・治安対策本部長2015年02月20日号
青少年・治安対策本部長 河合 潔氏
東京都の各局が行う事業のポイントを局長自らが説明する「局長に聞く」。75回目となる今回は、青少年・治安対策本部長の河合潔氏。防犯ボランティアの育成、深刻化する高齢者犯罪などの対応について、さきごろまとまった「安全安心TOKYO戦略」での取り組みを伺った。
(聞き手/平田 邦彦)
弱者を保護し地域を守る
—東京の治安の現状は。
刑法犯の認知件数を見ますと、平成14年は30万件ありましたが、年々減少しています。平成26年には16万件と約半分になっています。
しかしながら、都民の都政要望を見ると、治安対策の充実はいまだ高いのです。その一方、内閣府の平成25年2月及び26年1月実施の社会意識に関する世論調査の「日本の誇り」の1番は、「治安のよさ」なのです。治安が良いことを誇りと思う反面、治安の不安を感じているという結果が出ています。
—不思議な現象ですね。
実は高齢者、女性、子供といった社会的弱者が狙われています。高齢者の場合は振り込め詐欺、女性の場合はストーカーやDV、子供の場合は連れ去りなどの被害に遭っています。
振り込め詐欺の場合、東京での被害額は他道府県と比較して減ってきていますが、ストーカーやDVは減っていません。子供の連れ去りは今まで減少していたものが最近は増加傾向にあります。
こういうことが治安に対する不安の素になっているのではないかと。東京から対策をはじめないといけないと思っています。
—本部では「安全安心TOKYO戦略」をまとめられました。
2020年の東京オリンピック・パラリンピック大会も見据えて今後10年間の取り組みの方向性を示すため「安全安心TOKYO戦略」を策定しました。
東京の治安の現状を分析した上で都民の治安に対する不安を解消することに目を向けています。弱者を保護し地域の安全安心を確保するために策定した計画です。
通常、「安全」と「安心」の間には「・」が入るのですが、安全も安心も一体で良くするということをはっきりさせるため、「・」を外しました。安全も安心も実感できることが必要です。
—五輪を控えテロ対策も重要だと思います。
2020年の東京オリンピック・パラリンピック大会までに、地域のコミュニティを再生し、外国人も含めて皆で守ろうということです。
私は以前、三重県警察本部長をしていましたが、三重県には100カ国の外国人がいました。日本の社会生活のルールがわかっていない人も多かったのですが、リーダーたる人物を地域の中に取り込むことが必要でした。まずは外国人にルールを教えることから始めなくてはなりません。
都では、外国人が学ぶ日本語学校等へ出向いて説明したりなどの取り組みを行っています。ゴミの出し方など社会的なルールや交通ルール、ネットバンキングの不正送金事案の加害者や被害者にならないための注意点なども含んでいます。
この取り組みは来年度からはもっと拡張する予定です。
高齢者の万引きが大きな問題
—防犯ボランティアの高齢化が深刻です。
防犯ボランティアの活動によって侵入犯罪や街頭犯罪は減ったのですが、高齢化によりボランティアが減少すればこれらの犯罪が増えてしまうおそれがあります。ある意味、東京の治安は防犯ボランティアにかかっていると言ってもいいのです。
「安全安心TOKYO戦略」では防犯ボランティアの育成にも重点を置いています。高校生にも参加して欲しいですね。若者が参加することで、子供たちが犯罪に巻き込まれることを防ぐことも期待できます。40代や50代の方にも参加して頂きたいです。定年後の居場所として地域のコミュニティを意識せざるを得ないのですから。
—高齢者の万引きが増えているようですが。
万引きの被害額は全国で数千億円にものぼります。これは振り込め詐欺などの特殊詐欺の被害額約560億円の数倍に達しているのです。このことはあまり報道されませんが大きな社会問題だと思います。
この問題では、「高齢者の規範意識の問題として厳しく対処すべきだ」という意見に対して、アンケートでは否定的な回答が多いのです。子供の万引きでは厳しい意見があるのに、高齢者の万引きを容認するかのようなアンケート結果が出たことにびっくりしています。
—高齢者の規範意識が薄れたのでしょうか。
子供に対しては規範意識の徹底を求めているのに違和感があります。
高齢者の場合、認知症だけの問題ではなく、本人やその周辺も万引きに甘くなっています。ですから再犯者率も高いのです。万引きをした理由についても以前は「孤独感から」というものもあったのですが、最近はそういうわけでもないし、生活に困っているわけでもない。高齢者の規範意識が下がっている可能性があります。
ルールやマナーの徹底が、改めて高齢者や外国人を含めたすべての都民に求められていると思います。
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