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大庭麗のイタリア食材紀行 第8回2015年01月20日号
第8回 貴族たちが愛したカボチャ料理
収穫されたのち“追熟”と呼ばれる数カ月の貯蔵により、でんぷん質が変化することでさらに甘くなるこの時期のイタリアのカボチャ(イタリア語名:ズッカ)。
イタリアで最も有名なカボチャ料理と言えば、北部エミリア・ロマーニャ州の“トルテッリ・ディ・ズッカ”というカボチャのペーストの詰め物をしたパスタです。パスタの詰め物には、加熱したカボチャ、この地域で作られるチーズの王様“パルミジャーノ・レッジャーノ”、卵黄、ナツメグなどのほか、“モスタルダ”(マスタードエッセンスの入った果物のシロップ漬け)や砕いた“アマレッティ”(アーモンドをベースにしたお菓子)などを加えたりと、近隣の地域でもそのバリエーションが異なります。パスタにからめるソースもまた、同様に変化するため、ほぼ必ず料理名の前に“どこどこの地域の”と地域名が入ります。
この料理がここまで多様化した理由は、当時この地域に多くの貴族が住んでいたことにあります。貴族たちは、その権威をアピールする手段のひとつとして、良い料理人を抱え、クオリティーの高い料理を客人に振舞うことをステータスとしていました。偉大さの象徴として作らせていた、美味しくオリジナリティーのあるトルテッリが、それぞれの地域の伝統料理になったというわけです。
このようにイタリアで古くから愛されてきたカボチャですが、現在は美容やダイエット効果のある食材としても人気があります。一見、甘くて炭水化物を含むカボチャにダイエット効果? と不思議に思いますが、アンチエイジング効果のある栄養素を豊富に含み、サツマイモに比べて30%も低カロリーと、まさにこの時期に食べたくなる食材です。
<大庭麗(おおばうらら)プロフィール>
東京都生まれ。2001年渡伊。I.C.I.F(外国人の料理人のためのイタリア料理研修機関)にてディプロマ取得。イタリア北部、南部のミシュラン1つ星リストランテ、イタリア中部のミシュラン2つ星リストランテにて修業。05年帰国。06年より吉祥寺にて『イル・クッキアイオ イタリア料理教室』を主宰。イタリア伝統料理を中心に、イタリアらしい現地の味を忠実に再現した料理を提案し、好評を博している。
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