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局長に聞く73 下水道局長2014年12月20日号
下水道局長 松田 芳和氏
東京都の各局が行っている事業のポイントを局長自らが紹介する「局長に聞く」。73回目の今回は下水道局長の松田芳和氏。下水道管の老朽化対策や震災対策など、都民の目に触れにくい事業の他、下水の水質改善や海外ビジネス展開などにも積極的に取り組んでいる。今後の進展についてお話を伺った。
(聞き手/平田 邦彦)
75ミリ豪雨の対応を推進
—下水道は都市生活を支える重要なインフラで安全、安心に対する都民の期待も高まっています。東京の神田下水は建設から130年目になりますが、老朽化対策は大変重要ですね。
インフラの老朽化問題への対応は、下水道に限らず、様々なところで関心が高まっています。現在、東京23区の下水道管の総延長は約1万6000キロメートルですが、そのうちの1500キロメートルは既に法定耐用年数を超えています。今後20年間で新たに6500キロメートル増え、総延長の半分が耐用年数を超える計算になります。
勿論、耐用年数を超えたらすぐに下水道管が使えなくなってしまうわけではありませんが、老朽化に伴い下水道管にヒビが入ったり破損してしまうと、道路陥没が発生する可能性が高まるわけです。
そうなる前にロボット等を活用して下水道管の内部の痛み具合を定期的に調査し、程度に応じて補修工事を実施します。これにより耐用年数を30年程度、いわゆる経済的耐用年数(80年程度)まで伸ばすことが可能です。事業を平準化し、計画的に古くなった管の再構築を推進しています。
—震災対策も重要な取り組みです。
過去の被災状況を見ると、緊急輸送道路などでマンホールが液状化により浮上しないようにすることが重要です。地震で強い揺れが発生すると、地中では水圧により砂と水が混合され液体のような状態になり、マンホールを浮上させます。このような状況を防ぐため、地下水圧が上昇するとマンホールの内側に予め設置した弁が自動的に外れ、マンホールの内部に地下水を取り込むという対策を実施しています。
また、水再生センターやポンプ所では揚水、簡易処理、消毒、放流といった地震が発生しても必ず確保すべき機能を担う施設を対象に施設の耐震化を進めています。あわせて、非常用電源の確保も行っており、2020年のオリンピック・パラリンピックまでには全ての水再生センターで確保する予定です。
—浸水対策はいかがですか。
区部では、都市化の進展に伴う下水道への雨水流入量の増加に伴い、時間あたり50ミリの降雨に対応する下水道幹線やポンプ所等の整備を計画的に進めてきました。しかし近年、特に平成25年は700棟を超える甚大な浸水被害が生じたことから、地形や河川整備状況、被害規模などを踏まえ、時間75ミリの降雨にも対応する施設整備を含めた「豪雨対策下水道緊急プラン」を策定しました。
特に一度被害があったところは再び被害に遭う確率が高いので、そういうところを優先して、75ミリあるいは50ミリ強の豪雨に対応できる浸水対策を進めていきます。
更なる水質改善に向けて
—水質の改善に向けた取り組みは。
合流式下水道の改善と下水の高度処理といった二つの取り組みがあります。
汚水と雨水を一つの管で流す合流式下水道では、降雨初期の特に汚れた雨水を河川に流さないように貯留施設を整備し、雨が止んだらその水を水再生センターに送って処理しています。
これに加え、汚濁物を二倍程度多く除去できる高速砂ろ過施設を、区部で合流式を採用している全センターに整備していきます。
また、水再生センターでは再構築などに合わせて窒素やリンをこれまで以上に除去する高度処理施設を導入しています。高度処理された水はずいぶん綺麗になって多摩川では鮎が戻ってきました。
汚れていた河川が綺麗になることで、地域の活性化にもつながると思います。例えば川の水質が改善されれば、水に親しむ機会が更に増えていくでしょう。
下水道は地下にあり、事業内容が見えにくいですが、水質改善は目に見えるものですから今後も頑張ります。
—下水道局は東南アジア諸国にビジネス展開をしていますが。
これまでも震災時の液状化対策や合流式下水道においてゴミを取り除く装置など個別の技術について海外で展開しているケースがあります。
今回、マレーシアでやろうとしているのが、下水道がほぼ未整備な地域に下水道管を布設し、処理場を建設し、維持管理をすることです。いわば一括のプロジェクトですね。
これが成功すればひとつのモデルケースとなりますから、特にアジアの新興国の中で進展するのではないかと期待しています。
世界的に見ると、下水の未処理地域というのは非常に多く、経済発展に伴い必然的に下水道整備のニーズが高まることは間違いないと思います。
—下水道局は様々な技術を持っています。技術開発による事業の推進への思いは。
下水道の技術開発は、国内では東京都が最も進んでいます。その意味では我々下水道局に課せられた役割、使命は大きいと自覚しています。技術開発は今後も重視していきますし民間事業者の参加や連携も不可欠です。
ベーシックな老朽化対策や浸水対策などを進めて安全安心を支えつつ、さらなる水質改善に取り組むことで東京のまちづくりに貢献していくことができるのだと考えています。
タグ:東京都下水道局 浸水対策 豪雨対策下水道緊急プラン