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NIPPON★世界一 The72nd2014年12月20日号
日本にある世界トップクラスの技術・技能―。それを生み出すまでには、果たしてどんな苦心があったのだろうか。特に都市部の駅周辺に自動車で出かける際、困るのが空き駐車場の確保。それをスマートフォンなどインターネット端末で確認、予約できてしまう新システムが誕生した。同時に駐車場オーナーにとっても、新たな土地活用のメリットをもたらすという。「かながわビジネスオーディション2014」審査員特別賞を獲得した、注目のシステムに迫る。
(取材/種藤 潤)
「まず会員登録していただき、地図から目的地近くの駐車場を探してクリック。あとは空き状況を確認して、利用したい時間をクリックすれば……予約は完了です」
『Parkbook』を運営する株式会社LITENの榮枝(さかえだ)純一社長の丁寧な説明のもと、同システムの試験画面で実際に予約までの行程を体験してみた。従来の時間貸駐車場をインターネットで検索しているのとほぼ変わらない感覚で、作業が終了した。
これで予約した時間に現地に行けば、『Parkbook』の専用の標識の立った駐車場に自動車を停めることが可能なのだ。駐車後、退出10分前には通知メールが届き、延長したい場合はその場で最大3時間まで対応できるという(予約時に先の予約が入っていない場合のみ)。
「オンライン決済なので事前に金額が確認でき、現金を持たずに駐車場が利用できる。それもメリットですね」
この駐車場検索・予約システム。当初は駐車場に特化していた訳ではなかったという。
駐車場を探すユーザーと未使用の月極駐車場をつなぐ
そもそもは不動産関連のシステムを開発していたが、事業化が困難と判断。そのシステムを応用して別のビジネスができないかと模索したところ、榮枝社長自身だけでなく、父親も空き駐車場探しに困っていることに気づいた。それを解決できるサービスができないかと考え、再び開発を進めた結果、『Parkbook』が完成した。
「都市部の駅前に駐車場はたくさんありますが、高額でしかも常に満車状態。一方、駅から少し離れたところには時間貸よりも月極駐車場が多く、でも未使用が目立った。その駐車場を事前予約できたら便利だな、と思ったのがきっかけです」
このシステムは、駐車場オーナーにも従来にないメリットをもたらす。これまでの時間貸駐車場は、専用のフラッパーや精算機など多額の初期投資が発生するが、『Parkbook』はシステム登録のみで設置機器はゼロ。早ければ申込当日から駐車場利用が可能だという。そして設備がない分、休止や停止の手続きも簡単に行えるそうだ。
「月極駐車場が一台余っているのであれば、契約までの間『Parkbook』に登録いただき、契約次第停止してもらうこともできます。また、夜だけ利用する自身の駐車場を昼間だけ提供する、という時間貸の利用も、このシステムなら可能です」
大切なのは安心して利用してもらうこと
実は『Parkbook』のような空き駐車場検索・予約サービスは、すでに先行してスタートしている。
ただ、まだ知名度も低く、課題も多いと榮枝社長は指摘する。
「浸透しない要因はさまざま考えられますが、個人的にはこのサービスは、地域での認知度が最も大切だと感じます。先行するサービスは全国の駐車場を閲覧でき、それはそれで便利なのですが、契約した駐車場に特に目印を付けないため、その駐車場周辺の人々に存在をPRできていない。しかし『Parkbook』では駐車場に専用の標識を置き、その存在をPRしています。そしてまず神奈川・横浜エリアに限定して駐車場を増やし、認知度を高め、ユーザー様を増やしていきたいと考えています」
機器等の設置は不要だが、その分「人」ができる限り駐車場に関わるようにしているという。契約前に必ずスタッフが現地に向かい、駐車場の現状を確認。契約後は定期的に掃除などメンテナンスも徹底する。
「オーナー様にとっては、見たこともない人が駐車場を利用する訳ですから、少しでもその不安を取り除いてあげたい。一方で、ユーザー様には、より気持ちよく利用できる環境を提供したいと思います」
契約駐車場を増やすことが第一
会員化を活かしたサービスも
現在、横浜限定でサービス開始に向けて準備中。今後は隣接する東京都内も視野に入れながらも、月極駐車場、病院、商業施設など、駐車場スペースを保有するさまざまな土地オーナーに働きかけていくという。
「ユーザー様の利便性を高めるためにも、駐車場を増やすことが第一ですが、ユーザー様、オーナー様がより安心して利用できるよう、運営体制も強化していきます。また、今後は1週間、半月など、月極まではいかないまでも中長期的に利用できるシステムも、対応していきたいと考えています」
さらに榮枝社長は、会員サービスという特徴を活かし、情報配信など新たなサービスも視野に入れているという。ただその口調は、あくまで控えめだ。
「やはり大切なのは、横浜や東京の地域でシステムが受け入れられること。そのためにもひとつひとつ駐車場を増やし、認知度を高めることに全力を注ぎます」
あくまで地域の信頼獲得が第一―この誠実な姿勢こそ、『Parkbook』という新システムの最大のメリットなのかもしれない。
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