HOME » トップインタビュー一覧 » トップインタビュー Vol.83 東京都議会 議長 髙島 直樹さん
1 The Face トップインタビュー2014年11月20日号
東京都議会 議長
髙島 直樹さん
通年議会の必要性、地方法人課税の暫定措置の撤廃、そして何より東京2020年オリンピック・パラリンピックなど、様々な課題を抱える東京都議会にあって、前議長の突然の辞任により今年10月、議長に就任した髙島直樹さん。どのように議会を運営していくのかうかがった。
(インタビュー/津久井 美智江)
都民も理事者も議会も理解できる
通年議会のあり方を検討中
—前議長の突然の辞任により思わぬ形での議長就任となりましたが、現在の心境はいかがですか。
髙島 吉野前議長には非常に感謝もしていますし、ご尊敬も申し上げています。私は、同志の先生方からご推薦をいただいて議長になったわけですから、吉野先生も含め、多くの先輩の議長たちが築いてきた都議会の権威を失わないように、微力ですが努力していきたいという思いです。
—野次問題もあり議会の品位が問われていますね。
髙島 就任の挨拶に「議会の品位」という文言をあえて入れさせていただきました。私ども127名の議員が全員、1300万都民の代表ですから、きちっとした自覚と責任を持って、議会に臨むことが必要です。私は、応援の野次は「議会の花」とは言いませんけれど、許容範囲ではあると思います。個人の人格をおとしめるような野次は、これは議員云々の問題ではなく、人間としてのモラル、道徳観ではないでしょうか。各会派、議会運営委員会でいろいろと議論がなされていますので、議長としてはその推移を見ながら考えていくべきだと思いますが、私の個人的な意見は、今申し上げたことと理解していただきたいと思います。
—議会では様々な課題があると思いますが、通年議会の開催についてはどのようにお考えでしょうか。
髙島 地方議会は、第1回定例会から4回に分けてやっているのはご存知と思います。もちろん都議会でも、災害時や緊急を要する場合はどうなのかなど、4回しかない定例会については考えさせられるところがあります。
しかし、通年議会を導入するだけで、すべてが解決するかというと、そうではない。費用弁償の問題、政務活動費の問題、また当然、予算編成の問題もありますし、理事者の考え方もありますから、そういう意味では「検討中」とご理解いただければ結構です。
ただ、いろんな専決処分がありますから、本当に専決処分でいいのか、議会の議決は必要なのかという課題はありますよね。
例えば、オリンピックの様々な作業を時間的に非常にタイトな中で進めなければなりませんが、契約案件が出た時、定例会で議会の議決をもらわなければ作業を進められない。その時に、専決処分で本当にいいのか。議員や各会派の意見を聞く場面が必要なのか。
プラスもあればマイナスもあるので、全体の中で、ただ通年議会をやることが目的ではなく、都民も理事者も議会も、お互いがきちっと理解できるような、そういう通年議会にしなくてはならないと思っています。
46対1ではなく、地方と東京がウィン―ウィンになる関係を築く
—地方法人課税の暫定措置撤廃についてはいかがですか。
髙島 本来、地方が受け取るべきものを、一部国税化しました。つまり地方自治体が得るであろう税金を国が吸い上げてしまうということで、このことは地方分権を阻害する大きな弊害だと思っています。この暫定措置は、消費税を10%に上げる時には廃止する約束ですが、それに代わる方法で東京から財源を取るという趣旨の文言が、平成26年度与党税制改正大綱にあります。これまで、暫定措置を含めて累計1兆円もの東京都の税金が国税化されてしまっており、たいへん残念に思っています。
また、同時に法人実効税率を引き下げていくということもありますから、これについても東京都税制調査会でいろいろ議論をして、消費税がどうなるのかも含めて、国に物申していかなければならないと思っています。
—東京が独り勝ちで46の地方自治体は負けているという、46対1の構図も否定できないのではないでしょうか。
髙島 東京は地方交付税の不交付団体、残り46自治体は交付団体です。東京は独自に努力をして、都民の皆さんに福祉やサービスを提供しています。例えば今、都民が払っている国税は、年額約17・5兆円。しかし、還元額は約1・6兆円で、残りは全部地方に配られています。
だからといって東京がえらいということではありません。46対1の構図ではなく、東京が日本をリードする自覚、自信、責任が必要であると同時に、例えば、羽田に来る外国のお客様を、東京だけでなくて地方に送るという協力体制をとるとか、東京と地方が手を組んで共にがんばっていこうという姿勢が問われていると思います。
—観光立国という面でも、東京だけに来てもらえばいいわけではないですものね。
東京都南方地域戦没者追悼式に出席
髙島 そうなんですよ。一方で、外国の航路を持っている地方があるんです。松山もそう。松山で遊んだら、その後東京へ来てもらう。東京に来たら、今度は沖縄に行ってもらう。そういう連携ができることでお互いがウィン―ウィンになる。そういう努力をしていくことが大事なのではないでしょうか。
世界の都市総合力ランキングで1位ロンドン、2位ニューヨーク、3位パリ。で、4位は東京ですが、シンガポールに追いつかれそうですよね。東京都も、JETROや経産省の外郭団体を使って一生懸命PRしています。
—ある国にPRしたいのであれば、その国の人を日本に招いて発信してもらうのが一番の早道だと思います。
髙島 おっしゃる通りですね。テレビ番組で日本に来ている外国人を紹介する番組がありますが、いくら我々が「ここがいいですよ」と言っても、やっぱりピント外れなんですよ。その国の人がその国に向けて情報を発信することが、すごく大事なんだと思います。
2020年のオリンピックは、成熟した東京を世界にアピールする好機
—都議会議長として、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会(以下オリンピック)にかける想いをお聞かせください。
髙島 まず、2020年のオリンピックは必ず成功させなければならないと思っています。このオリンピックはアスリートだけの祭典ではありません。バリアフリー、技術、文化、伝統、科学、環境、ボランティアなど、日本という国が、東京という都市が、成熟した社会であるということを世界にアピールできる大事な時機だと思っています。
その第一段階は、施設整備です。今まさにスタートしたところですが、知事から発言があったように、半径8キロ圏内という計画を検証し、その呪縛を外したことは良かったと思います。それから、既存施設を使う、経費を最小限に抑える、レガシーを尊重する……そういうことを踏まえた施設の見直しも進んでいます。なるべく都民のお金をつかわないで施設整備をしっかりやっていく必要があるだろうと思っています。
—大会期間中はもちろんですけれど、「世界一の都市」を目指す上で安全対策やテロ対策ついてはどうお考えですか。
髙島 海外からの観光客を2000万人にするという目標には賛成です。しかし、その分、不測の事態も考えなければなりません。今回のエボラ出血熱のような感染症だけではなく、テロや治安も含め、全体を考えなければならないと思っています。
オリンピックの安全・安心について言うなら、組織委員会だけでもだめ、警視庁だけでもだめ、消防庁だけでもだめ。すべてが連携できるよう、都庁が横串を刺してマネジメントすることが重要になると思います。
いずれにしても、2020年のオリンピックは通過点です。でも成功させる。そして、その10年先、20年先の東京を考えていかなければならない。だから今が一番大事な時期なんですよ。
—議長に就任されてお忙しいとは思いますが、息抜きには何を?
髙島 映画が好きなので、家で録画したり、娘にレンタルしてもらったりしているんですが、全然見る暇がない。家に帰って1杯飲んだら寝ちゃうから(笑)。それに、この間の日曜日なんかは、築地市場に行って、明治神宮に行って、農業祭に行って、それから駒沢公園に行ってラーメン食べて……。
—ブログを拝見すると、1日何カ所に顔を出していらっしゃるのかと……。
髙島 あんなのは軽いもんです。自分でブログを書いているので、都の職員さんから「先生、誤字があります」なんて言われたりしますが、それも愛嬌ということで(笑)。
—たくさんブログを書く時間があるなら、映画館に行かれては?
髙島 思ったことを書けばいいので、1時間もかからないから。書き過ぎかなとも思うんですが、本音を書きたい時があるんです。
—それがストレス解消になっているのかもしれませんね。
髙島 そうかもしれません(笑)。
<プロフィール>
たかしま なおき
昭和25年、足立区千住生まれ。48年、獨協大学経済学部卒業。58年5月、足立区議会議員選挙に初当選(以後連続3期)、平成9年7月、東京都議会議員選挙に初当選(以後連続3期)、20年8月、東京都議会自由民主党幹事長就任、平成25年10月、東京都議会オリンピック・パラリンピック推進対策特別委員会委員長就任、平成26年3月、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会理事就任、同年10月東京都議会議長就任。
タグ:東京都議会議長 髙島直樹氏