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NIPPON★世界一 The71st2014年11月20日号
日本にある世界トップクラスの技術・技能―。それを生み出すまでには、果たしてどんな苦心があったのだろうか。今から約8年前、老化した建材「アスベスト」の粉じんの危険性が世間を騒がせ、以来各地で無害化処理や除去が行われてきた。株式会社エコ・24は、無機系物質を使用した手法を手がける唯一の会社だ。開発から約10年。その高い技術は国内はもちろん、世界でも注目されはじめている。
(取材/種藤 潤)
昨年より、「アスベスト(石綿)」処理を取り巻く状況が大きく変わりはじめた。
ひとつは2013年6月に環境省から出された「改正大気汚染防止法」。アスベストなど粉じん処理作業の届出義務者が、工事の施工者から工事の発注者または自主施工者に変更されるなど、アスベスト処理の責任がこれまで以上に明確化されることになった。もうひとつは、2014年6月に厚生労働省が施行した「改正石綿障害予防規則」。これによりアスベスト処理の規制が、一層強化された。
こうした状況を踏まえ、株式会社エコ・24代表取締役の波間俊一社長は、アスベスト処理の今後を次のように予測する。
「“早く”“安く”が中心だったアスベスト処理が、“安全”を重視するものになります。それにともない、安全性が特徴でもある『CAS工法』に、より注目が集まることになるでしょう」
作業中でも粉じんが舞わず、耐火耐熱を維持しながら無害化
同社が手がけるアスベスト無害化工法『CAS(Ceramic Asbestos Solidification)工法』は、業界唯一の無機系素材「ストレートシリコーン」を主成分とした含浸固化材『エコベスト』を使用、アスベストに低圧で噴霧することで建材層の奥深くまで浸透させ、老朽化したアスベストを無害化させる(左上写真参照)。
「老朽化したアスベストは、髪の毛の1/5000の大きさの繊維状になり、体内に侵入。それが肺や胸膜に突き刺さり、肺ガンなどを引き起こす危険性があります。『CAS工法』では『エコベスト』でその繊維を“包み込み”、太くすることで安全な状態にします」
メリットは多岐にわたる。まず、『エコベスト』が無機物でできているため、鉱物理学的にも医学的にも安全性が認められている。次に、『エコベスト』は浸透性が高く、アスベスト奥深くまで確実に浸透、さらに粉じんが舞わずに安全に作業できるため、除去工法では困難な場所でも施行をすることができる。そして吹き付けるだけの作業のため、従来工法にはない短工期が実現、土日祝日、夜間作業も可能だ。さらに一度処理をすれば、半永久的にその効果は持続し、かつアスベストが本来もつ耐火耐熱性を損ねることなく、無害化が実現できるという。
理解されない状況でも地道に客観的評価を蓄積
『CAS工法』を手がけるきっかけは、今から12年前。別会社で建物などをキズや汚れから守る無機系コーティングを開発・販売していたところ、取引先のひとつから「それをアスベスト処理に使ってほしい」と提案されたのだ。
「環境に負荷のない商材でビジネスをしたいと思い、コーティング材を開発したのですが、アスベスト処理に使おうなんて想像もしませんでした。でも使ってみたら驚くほど効果がありました」
2003年に同社を創業、『CAS工法』を本格事業化。当初は他の処理法よりコストが高く、受け入れられない状況が続いた。しかし、2006年頃からアスベストが社会問題化。より安全な処理法が求められるようになり、『CAS工法』にも注目が集まるようになったが、他社製品に比べ、あまりのメリットの多さに、理解されるまでには時間がかかったという。それでも波間社長は粘り強く事業を継続。2007年には東北大学理学研究科と共同研究を行い、同年に飛散防止剤が国交省大臣認定を取得。2012年には国内初となるアスベスト無害化工法技術の審査証明も取得(右下写真)。客観的にも理解される土壌を構築していった。
そんな中、前述のようなアスベスト処理を取り巻く環境が“好転”。ようやく条件が揃ったと、波間社長はほっとした表情で語る。
「本当にいろいろありましたが……。あのときアドバイスしてくれたお客様がいなければ、今の私たちはいません。感謝してもしきれないです」
無害化することでアスベストの価値を引き出したい
ドイツやイタリアなど、『CAS工法』はヨーロッパを中心に評価されている。その背景には、建物に対する価値観が深く影響していると、波間社長は話す。
「我々の技術のメリットである、建物を継続利用しながら工事が行える点が、建物を維持しながら利用するという、ヨーロッパの“共存共栄”思想とマッチするようです」
一方でアメリカは“スクラップアンドビルド”の考え方が強く、日本も今のところその考えが主流。これからはそうした建替にも対応する予定だという。
「『CAS工法』を応用することで、アスベストを飛散させずに建物を解体することを可能にしました。東京では2020年にオリンピック・パラリンピックも控えていますから、必要な建替需要にも我々の技術を活用していきたいと思っています」
今後は発展著しい中国も視野に入れる。そして、その先に目指すのは、無害化しながらアスベストを有効活用できる世の中の実現。そこには、アスベストを本当に理解する波間社長だからこその想いが隠されていた。
「かつてアスベストは耐火耐熱材に優れた“夢の建材”と言われていました。老朽化の課題はあるものの、『CAS工法』でしっかり処理すれば、今もその高い能力は発揮できるはずです」
波間社長にとって『CAS工法』でアスベストを“包み込む”ことは、実はその価値を引き出すための“優しさ”なのであった。
タグ:株式会社エコ・24 エコベスト アスベスト処理法 CAS工法