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大庭麗のイタリア食材紀行 第5回2014年10月20日号
第5回 城壁にケッパーの木が生える風景
南イタリア料理に欠かせない伝統的な食材“ケッパー”(イタリア語名:カッペリ)。私の好きなイタリア食材のひとつなのですが、残念ながら日本では、スモークサーモンの付け合せに添えられる酢漬けの小さな粒くらいのイメージと、その知名度は低いようです。そもそもケッパーは実ではなく、春先から秋にかけて芳しい香りの白やピンクの小ぶりな花が次々と咲く、風蝶木(ふうちょうぼく)と呼ばれる低木の花のつぼみを収穫、加工したものです。
古代ギリシャの医師ヒポクラテス(紀元前460頃~370頃)が書物に記していたほどその歴史は古く、石灰質の地質を好む特性から、主に地中海沿岸地域の断崖絶壁や岩壁に自生してきました。伝統的に城壁や石壁などの建築には、必ずその地の土や岩、石などが用いられてきたイタリア。古い城壁はその地域の土壌が反映されており、そのことから、沿岸部の城壁にはケッパーが原生している光景が昔からよくあったそうです。その話を聞いて以来、いつの日か城壁にケッパーの木のある光景を見たいと願ってきたのですが、残念ながら私が今までに見たケッパーの木は、いつも南イタリアなどのリゾート地などで、小さな花や実がたわわに生るような可愛らしい光景のものばかり。
先月、仕事でイタリアを訪れた際、偶然通りかかった城壁の上の方に目を向けると、原生するカッペリの木があったのです! まさに夢にまで見たこの組合せ。何百年も昔のイタリアの光景を一瞬垣間見たような、そんなうれしい経験となりました。
次号では、ケッパーの伝統的な加工方法、そして薬としても用いられてきたそのさまざまな効能についてお話ししたいと思います。
<大庭麗(おおばうらら)プロフィール>
東京都生まれ。2001年渡伊。I.C.I.F(外国人の料理人のためのイタリア料理研修機関)にてディプロマ取得。イタリア北部、南部のミシュラン1つ星リストランテ、イタリア中部のミシュラン2つ星リストランテにて修業。05年帰国。06年より吉祥寺にて『イル・クッキアイオ イタリア料理教室』を主宰。イタリア伝統料理を中心に、イタリアらしい現地の味を忠実に再現した料理を提案し、好評を博している。
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