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NEXT東京 街づくり 第1回2014年09月19日号
新宿区
2020年にオリンピック・パラリンピック開催が決まり、国際都市としてますます注目が集まる一方、過密化した住宅環境やインフラの老朽化、交通渋滞……東京は今まさに、時代に則した都市のあり方が求められているといえる。そんなこれからの東京を担う新たな街づくりに取り組む事例を、このコーナーでは紹介する。今号では、新宿区の「観光」「産業」による街づくりについて、先日行われた「平成26年度 新宿区産業振興フォーラム」を元に見ていく。
(取材/種藤 潤)
染物や印刷など多様な地場産業が息づく新宿
新宿区が「産業」と「観光」のコラボレーションによる街づくりに注力する―その情報を発信する「平成26年度新宿区産業振興フォーラム」が、2014年8月29日「新宿区立産業会館(BIZ新宿)」内で開催された。
会場入口付近では、新宿の地場産業が紹介されていた。実は新宿は「染の王国・新宿」と呼ばれるほど、染物文化が息づく街。会場には和の雅が凝縮した着物や帯、職人の技術を活かした和小物などが並べられていた。また、印刷事業も代表産業であり、地元印刷会社による新宿・早稲 田の風景イラストを用いた販促ツールや、点字技術を活かしたバリアフリーカレンダーも展示されていた。
観光のさらなる充実を目指す自治体・企業一体の街づくり
フォーラムは2部構成。はじめに2014年6月に発足した一般社団法人新宿観光振興協会理事長であり、株式会社三越伊勢丹ホールディングス代表取締役社長の大西洋氏による、『「産業」と「観光」~相乗効果がもたらす地域経済活性化~』をテーマとした基調講演が行われた。
同振興協会の設立趣旨と現状について説明した後、まず訪日観光の現状について解説。10年間で観光客が急増していること、彼らの旅行出費額の高さ、旅行満足度および再訪希望が9割超であることなど、日本の観光ポテンシャルの高さを示した。
そのような現状を受け、国が観光立国実現に向けた6つのアクション・プログラムを推進、その中で各地域が担うべきこととして、大西氏は「世界に通用する魅力ある観光地域づくり」「外国人旅行者の受入環境整備」「MICE(集客効果の高いビジネスイベントの総称)の誘致・開催促 進と外国人ビジネス客の取り込み」の3つを挙げた。
そしてこれらを新宿で実現することが重要だとし、街づくりに寄与する人材育成やICTの観光利用促進、海外発行のクレジットカード利用拡大、ホテル・デベロッパーと連携した観光パッケージ開発など観光客向けコンテンツ開発が必須であり、具体的な展開として「クールジャパン等高 価値のコンテンツ」「日本独自のおもてなしとサービス」「観光客との接点確保・PR手法の工夫」を、自治体と企業が一体となって進めて行くとした。
その上で新宿には、前述の「染物や印刷などの伝統技術」に加え、「文豪が愛した街」「大学・専門学校の多さ」「大型商業施設の充実、飲食店・宿泊施設の多様性」「外国人居住者数の多さ」など多様なポテンシャルがあり、さらに「国内の外国人旅行者の訪問率」「東京で最も満足した街」がいずれも新宿が1位であるという新宿ブランドの高さも確認。これらの価値を活かした街づくりを、原宿や鎌倉などの先例を参考にしながら行っていくとした。さらにこれらの取り組みは、地場産業の活性化にも繋がると、大西氏は付け加えた。
2020年に向け新宿には多くのビジネスチャンスがある
続いて、新宿区産業コーディネーターを務める柴田徹氏の司会のもと、大西氏に加え、中山弘子新宿区長、新宿区産業振興会議会長の植田浩史氏、藤田観光株式会社取締役執行役員の北原昭氏、愛国製茶株式会社代表取締役社長の馬場章夫氏による、『ビジネスチャンスを掴め!!~新 宿Power~』と題されたパネルディスカッションが行われた。
まず、中山区長による官民一体となった“ALL新宿”体制による街づくりを区が推進している話からスタート。続いて、新宿の「今」と「今後」に話が移り、大西氏が商業施設運営の立場から、「新宿には東西南北それぞれの顔があり、そのなかで西口、東口の開発は遅れ気味。渋谷の ような今にフィットした開発が必要」と語った。植田氏はホテル運営について言及、「団体客と個人客の割合は完全に逆転した。今は個人旅行に則した情報発信が大切」とし、それに対し北原氏が「西口がビジネス向け、東口が観光向けと、ホテルごとの棲み分けと連動性を高めていくべ き」と付け加えた。
馬場氏は地場産業の立場から、「新宿のどの商店街も厳しいが、地域に60代前後のリタイア組が増え、町会に力がつきつつあり、連携すれば十分パワーになる」と期待を覗かせた。そして中山区長は「従来の観光とは一線を画す、新宿ならではの観光の構築を目指し、夏目漱石生誕1 50周年を記念した復元アトリエなど、“土地の記憶と文化の創出”をテーマにした街づくりに着手している」と、区の具体的な街づくりの方向性を示した。
話題は2015年にコマ劇場跡地に完成予定の「ホテルグレイスリー新宿」にも及び、同ホテルを運営する北原氏は、「完成後は新宿の人の流れは大きく変わる」とし、「新宿が東京の観光拠点として存在感を示す上で、観光案内が最も重要。新宿に加え東京全体の魅力スポットを同ホ テルでも発信したい」と話した。
こうした各パネリストの意見を踏まえ、植田氏は「2020年に向け、新宿には多くのビジネスチャンスが出てくる。ぜひ多くの企業が挑戦してほしい」と、新宿の地場企業へエールを送った。
タグ:新宿区 新宿区産業振興フォーラム 地場産業 2020年