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NIPPON★世界一 The68th2014年07月18日号
日本にある世界トップクラスの技術・技能-。それを生み出すまでには、果たしてどんな苦労があったのだろうか。電力を使わず発光する「蓄光」の技術と、「有田焼」という伝統工芸とを融合させることで、「蓄光」の可能性を大きく広げた注目の発光素材『ルナウェア』。2014年6月には生産拠点の福島県・川内第一工場が竣工。その挑戦は本格的にはじまろうとしている。
(取材/種藤 潤)
部屋の電気を消した瞬間、暗闇にくっきりと浮かび上がる、非常口誘導灯のデザインをはじめとするさまざまな形状に、目を見張った。
「今は日中なので若干日光が入りますが、暗闇なら本当にくっきりと見えますよ」
この『ルナウェア』の製造販売を手がけるコドモエナジー株式会社の岩本泰典代表取締役社長は、その発光の強さを強調する。
「電力を使わずにこれだけ発光でき、さらにそれが半永久的に劣化せず、防水性、耐熱性もある。特に災害など厳しい環境を想定した発光材として、これ以上の素材はないと自信を持って言えます」
「蓄光」技術を伝統技術でさらに明るく、使いやすく
「蓄光」というこの技術は、光をエネルギーとして蓄え、光がなくなった時にそのエネルギーを放出する物質の力を活用するもの。その結果、電力を用いなくても暗闇で光を放つことができるのだ。
「蓄光」そのものは従来から存在していたが、耐久性や原料のコストなどの面から見て、用途は限られていた。
その「蓄光」の常識を打破したのが、有田焼という伝統技術との融合であった。
「『ルナウェア』は、有田焼の釉薬を塗る技術を応用し、蓄光の原料を磁器性タイルの表面に焼き付けることで、これまでにない発光の強さや持続性に加え、耐水性、耐摩耗性、耐熱性などを実現したのです。丈夫かつ安全・安心の発光素材なので、あらゆるシーンで使用が可能。人が多く通る床材としても使用でき、屋外装飾やアクセサリーとしても活用できます」(岩本さん)
従来は大半が樹脂と混ぜ合わせて製品化していたので、熱に弱く耐久性にも限界があったが、磁器との融合によりそうした課題もクリアできた。だが、製品化は決して容易ではなかった。
「原料を磁器に焼き付ける際の、焼き物特有の熱膨張が大きな壁になりました。でも決して諦めませんでした」(岩本さん)
苦節7年。ようやくできあがった『ルナウェア』は、磁器の強度を生かしつつ、高い発光力と蓄光時間約8時間という持続性を達成した。
被災地の福島を『ルナウェア』発信の拠点に
『ルナウェア』は2012年「第四回ものづくり日本大賞」内閣総理大臣賞をはじめ、数々の賞を受賞。その技術力は一躍脚光を浴びた。
次に岩本さんが着手したのが、量産体制を整え、コストを抑え、より多くの場で利用できるようにすること。その拠点として選んだのは、復興に向けて動き出した、福島県双葉郡川内村だった。
「被災地の産業や雇用創出を応援したいという思いもありましたが、『ルナウェア』の掲げる安全・安心を発信する場所として、被災地こそ最も適した場所だと感じました」(岩本さん)
2014年6月に工場は完成、県内採用のスタッフのもと、『ルナウェア』の本格的な量産ははじまった。
防災の街・東京のシンボルに『ルナウェア』を
『ルナウェア』は、すでに関東近郊においては横浜市営地下鉄の避難誘導の「セーフティマーク」など各所で導入されている。今後は東京も含めより多くの場所で『ルナウェア』が採用されることで、安全・安心都市の形成を支えていきたいと、岩本さんは力を込めて語る。
「現在、他の自治体でも導入を進めていただいています。また、海外のメーカーなどからも問い合わせが多く、世界的にも注目される技術だと実感しています。2020年のオリンピックもありますので、ぜひ都内でも活用いただき、次世代の安全・安心の街として、世界に発信してほしいですね」
岩本さんは『ルナウェア』だけでなく、他社製品も含め、電力ゼロの「蓄光」素材の普及こそ、次世代の防災には欠かせないと確信している。
「そのためにも、『ルナウェア』をきっかけに蓄光の技術を広めることも、私の使命だと思っています」
電力を使わず、暗闇でも明るく、安全・安心な世の中を作る―その実現に向け、岩本さんは『ルナウェア』開発時と同様、決して諦めずに挑戦し続けることだろう。
タグ:コドモエナジー株式会社 ルナウェア 蓄光