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NIPPON★世界一 The66th2014年05月20日号

 

●株式会社ブレスト ●神奈川県平塚市
●設立:2001年 ●URL:http://www.blest.co.jp/

油化装置の製造・販売

 日本にある世界トップクラスの技術・技能−。それを生み出すまでには、果たしてどんな苦心があったのだろうか。もともと石油からできているプラスチックを、加熱することで石油に戻す「油化装置」。かつて日本でも多くの企業が開発・販売に参入したが、その大半は撤退。しかし今、株式会社ブレストの奮闘により、世界のゴミ問題を解決する、革新的な技術として再び注目を集めはじめている。

(取材/種藤 潤)

 


株式会社ブレスト 伊東昭典代表取締役

 きっかけはインターネット動画だった。2009年国連大学ウェブマガジンで紹介された同社製「卓上油化装置」の実演動画に、世界中からアクセスが殺到。メールの問合せも1万件を超え、一躍その技術は世界に広まった。そして現在、約30カ国で同社の技術は取り入れられている。

 「多くの国々でゴミ問題が深刻化していますが、この技術があれば廃棄されるプラスチックが“油田”になる。もちろんそれは日本も同じで、みなさん次第で暮らしている街に“油田”が生まれるのです」

 そう語る株式会社ブレストの伊東昭典社長は、世界に広まりつつある現状を認めながらも、満足している様子はなかった。

 

油化の仕組みはシンプル
問題は分別のコスト

卓上油化装置

操作パネルも、誰でも操作できそうなシンプルさだ。

 プラスチックから油を作る「油化装置」の仕組みは、ごくシンプルだ。プラスチックの原料は石油。だから、プラスチックを約400度の高熱状態にして気化し、水で冷却すれば液化して石油(混合油)になる。機械の構造自体もさほど複雑ではない、と伊東社長。

 ただ、どのプラスチックでも石油にできるわけではなく、その分別こそがこの技術を活用するポイントであり、同時に最大の難しさでもある。

 「石油に戻せるプラスチックはPP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PS(ポリスチレン)の3種。それらを選別することが、油化装置を使用する大前提になります」

 油化装置そのものの開発は、ゴミの増大が社会問題化しはじめた1990年代に多くの企業が参入。廃棄されるだけの大量のゴミが資源になるというメリットから着目されたが、前述の通り分別のコストや輸送コストなどにより、大半は撤退を余儀なくされた。

 同社が進出したのは2001年と後発。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の助成事業としてスタートしたが、やはり事業化の難しさに直面していた。

 そんなときに舞い込んだ、学校教育での油化装置の実演授業の依頼。これが今日の躍進へとつながった。

 

“分別”の教育が世界に油田を生み出す

卓上油化装置

学校などでの実演同様に「卓上油化装置」でゴミを油化する様子を見せてくれた伊東社長。

 「学校でゴミを出す子どもたちが分別すれば、そのコストは削減されます。同時に、分別場所の近くに油化できる装置があれば、運ぶ時間やコストも省ける。ならば学校でも使用できる装置を作れば、学校に“油田”ができる、と思いました」

 それまで大型が主流だった油化装置の小型化に着手。「卓上油化装置」を開発し、「スクール油田」と称して積極的に学校を回り、子どもたちへ“分別”の教育を行った。同時に子どもでもすぐに操作できるようシンプルな操作方法を設計していった。

 前述のインターネット動画で注目を浴びはじめるのと前後して、海外からの問合せが来るようになる。そこでさらに小型化、操作のしやすさを目指すことにした。

 「どの国にも輸送しやすく、かつどの国でも操作しやすい設計にすれば世界中で油化装置が使ってもらえる。そのためにも、どこでもメンテナンスができるよう構造や部品を極力シンプルにしました」

 メンテナンスこそ収益になるとの指摘も受けたが、伊東社長は意に介さなかった。

 「大切なのは“分別”する意識を定着させること。それが世界中に“油田”ができる可能性につながるのですから」

 

国内に、世界により多くの油田を作りたい

 現在、学校教育や企業のデモンストレーション、イベント等の実演で使用されている「卓上油化装置」と、大量処理に適した「連続式油化装置」を製造・販売。ゴミ約1kgに対し約1リットルの石油が生成でき、その石油をガソリンや灯油などに生成する蒸留機や、その石油で電力を作れる発電機も開発している。

 「通常、不要なプラスチックは焼却処分され、大量のCO2を輩出しますが、油化装置ならそれも削減できる。その点も評価いただいています」

連続式油化装置

「卓上油化装置」で油化の仕組みや分別の重要性を知ってもらった上で、大量処理が可能な大型の「連続式油化装置」導入を提案。同装置は最小のものでも1日200kgのゴミを処理できるという

 また、この技術はプラスチック容器を製造するカップメーカーをも動かした。旭化成カップスが、油化に適したPP製カップを独自に製造、多くの場で導入がはじまっている。それと連動して、同社では専用ダストボックスを設置し回収、油化につなげる環境活動にも着手。同社の地元・湘南でも、茅ヶ崎市と市観光協会が主催した「サザンオールスターズ茅ヶ崎公演 パブリックビューイング」会場での電源を、すべてプラスチックゴミでまかなった。

 この環境活動を、ぜひ2020年のオリンピックでも導入してほしい、と伊東社長は真剣な眼差しで語る。

 「この油化装置によるリサイクルにより、日本がエコロジー先進国であることを世界に発信すると同時に、世界中の人にゴミを“分別”する意識を広めたいですね」

 油化装置の必要性はますます高まると、伊東社長は全国の学校や企業、団体を巡り、そして世界中を駆け回る。創業13年。その挑戦は、ようやく本格的に動き出した。

 

 

 

 

タグ:(株)ブレスト スクール油田 卓上油化装置 プラスチックから石油を生成

 

 

 

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