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NIPPON★世界一 The65th2014年04月20日号
日本にある世界トップクラスの技術・技能―。それを生み出すまでには、果たしてどんな苦心があったのだろうか。商業施設、博物館、公共施設、イベント……あらゆるジャンルの空間の創造と活性化事業を手がけてきた乃村工藝社。創業以来122年間変わらぬ「歓びと感動」へのこだわりは、今新たなステージへと歩みはじめている。
(取材/種藤 潤)
東京・台場の乃村工藝社本社屋の1階受付前で、ひときわ存在感を示しているのが、昔ながらの演劇場の舞台模型(右写真)。大正から昭和にかけて両国国技館で行われた菊人形の「段返し(舞台の奈落に用意された大がかりな演出装置)」を再現したもので、同社創業者の乃村泰資(たいすけ)氏が実際に手がけた舞台演出といわれている。
中央のボタンを押すと、約11分間の演目がスタート。当時の「段返し」が実際に目の前で進行する。同時にそれが天井の吊り下げや舞台袖の書き割りを駆使して成立していることがわかるようになっており、その緻密かつ大胆な仕掛けに、模型ということを忘れて見入ってしまった。
「弊社の空間づくりへの想いは、この『段返し』の時代から変わりません」と語るのは、取締役副社長の榎本修次さん。「段返し」に端を発する同社の空間づくりについて語る表情は誇りにあふれている。
創業時から続く人を歓ばせる空間づくり
明治から大正期の「段返し」をはじめとする大衆娯楽の舞台装置からスタートした同社は、昭和期に入ると百貨店や展示会を手がけ、1970年に開催された「日本万国博覧会」を機に、国際博覧会の空間プロデュースにも進出した。その後も市場の多様化に常に対応。あらゆる空間づくりに取り組み続け、日本を代表する空間創造企業へと発展した。商業施設やショールームのみならず、博物館・美術館などの文化施設、展示会やイベント、オフィスなど、すべての空間を調査・企画からデザイン・設計、制作・施行、運営・管理まで、一気通貫で手がけている。
「『段返し』の意匠を受け継ぐ、340名のクリエイティブ職の企画・デザイン力はもちろん、調査・企画という準備段階、そして実際に空間を運用する運営・管理も手がける点が弊社の特徴です。つまり、お客様の望む空間づくりを最後まで責任を持って担っているのです」
東京スカイツリーや「奇跡の一本松」など話題の空間を創造
同社が手がけた近年の例を見ると、その空間づくりにかける想いの強さ、こだわりを、どの案件からも感じる。2012年に開業し今なお多くの人が訪れる東京スカイツリー・東京ソラマチをはじめ、藤子・F・不二雄ミュージアム、原鉄道模型博物館……どれも話題の空間ばかりである。さらには、東日本大震 災のシンボルとして残された「奇跡の一本松」も担当。改めてその守備範囲の広さを感じる。
そして現在、多くのジャンルに対応し培ってきた技術・経験を、全社的に共有し活用する取り組みもスタート。「This is NOMURA ! 」というスローガンのもと、これまでの事業展開を14のカテゴリに整理し、同社が提供するあらゆるフィールドで活かせる土壌を整備した。
「122年という歴史に甘んずることなく、お客様の満足を目指す。その想いは弊社の全スタッフが共有しています」
都内の高齢者施設やパラリンピック会場にも
これまで同社はメーカーではなく、あくまでも顧客のニーズに応える受注事業に特化してきたが、さらなる飛躍を目指し、自社製品の開発にも着手。「マチハコ」も、「This is NOMURA ! 」のひとつ。低コスト・短期間で建設可能なコンテナ式建築工法の自社ブランドで、これまでにはない新たな空間プロデュースを可能にした。また、動画と位置情報が一度に閲覧でき、観光地等の集客につながる目的地検索アプリ「Lookinfo(ルックインフォ)」も製品化した。
昨年は日立製作所と共同で、ビッグデータを活用した空間づくりのプロジェクトも始動。センサーによって人の動きを定量評価することで、人がより自然に、快適に感じる空間づくりへとつなげていく。
今や世界各国に支社を持ち、世界のあらゆる場所の空間づくりを手がける同社だが、その飛躍のきっかけとなったのは、前出の国際博覧会などの世界的イベント。もちろん2020年開催予定の東京オリンピック・パラリンピックでも、人を歓ばせる空間づくりで貢献したい、と榎本さんは熱く語る。
「今年度から社内に専門部署を発足、我々の力で世界中から集まる方々を歓ばせ、どう感動させる空間ができるかを模索しはじめています。ぜひご期待ください」
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