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局長に聞く61 東京都下水道局長2013年12月20日号
東京都下水道局長 松浦將行氏
東京都の各局が行っている事業のポイントを紹介してもらう「局長に聞く」。61回目の今回は下水道局長の松浦將行氏。首都東京1300万人の生活と都市活動を地下から支える下水道は新規施設の建設から、老朽施設の更新という新たな段階に入っている。一方で、近年頻発する集中豪雨への対策、水質浄化、環境・エネルギー問題への取り組み、海外への技術提供など、ますますその役割は多様化している。下水道事業の現状について聞いた。
(聞き手/平田 邦彦)
老朽化施設の再構築に重点
—現在の下水道事業の課題は何でしょうか。
神田で最初に下水道が敷設されたのは明治17年ですが、以来、地道に整備が進められた結果、平成6年度末には都民の長年の悲願だった区部100%普及概成を達成しました。
これを機に下水道事業は「普及促進」から「再構築」へと、新たな段階に踏み出すことになります。普及の時代は、下水道管が詰まったり、破損して道路が陥没するなど、支障が生じた場合に補修する、いわゆる「対症療法」で対応してきましたが、これを「予防保全」に切り替え、支障が生じる前に「再構築」する事業に軸足を移しました。
区部には約1万6000㎞の下水道管が走っていますが、都心部には法定耐用年数50年を超えた管きょが集中しています。法定耐用年数を超えた下水道管は既に約1500㎞に達し、今後20年間で新たに約6500㎞増加することから、スピードを上げて取り組む必要があります。
そのため、昨年度までは広さでいうと、年間400ヘクタール程度で進めてきた再構築事業を今年度からは約倍の700ヘクタールにして進めているところです。
—新しい技術も導入されているようですね。
下水道局では20年前から再構築に取り組んでいますから、この間に技術開発もかなり進んでいます。
以前は老朽化した下水道管は掘り返して取り替えるしかありませんでしたが、現在は掘り返すことなく、マンホールから塩化ビニールの更生材(プロファイル)を送り込んで老朽化した管の内側を補強する「SPR工法」が導入され、コストの縮減、工期の短縮、交通への影響解消につながっています。
とくに日本の技術は下水を流しながらでも施工できるため海外からも注目され、すでにアメリカ、ドイツ、シンガポールなどで実績がありますが、今後も積極的に海外展開していきたいと考えています。
再構築事業の推進に当たっては、資産を効率的に運用する「アセットマネジメント」の手法を導入し、予防保全をさらに徹底して、施設の寿命を30年間伸ばし80年サイクルとして、ライフサイクルコストの一層の縮減を図っていく考えです。
下水道施設の「見える化」を推進
—浸水被害対策として、下水道の役割がますます高まっています。
現在の東京都の浸水対策は1時間50㎜の雨に対応できる施設の整備ですが、局地的な集中豪雨が増加したことから、平成11年に「雨水整備クイックプラン」を策定するなど、危険度の高い地域を優先して対策を実施してきました。
その後も平成16年に「新クイックプラン」を策定するなど、事業費を拡大して取り組んできましたが、1時間50㎜対応の整備率は現在67%にとどまっており、まだまだ充分でないのが現状です。
今年は全国各地で1時間に100㎜を超える降雨が相次ぎ、大きな浸水被害をもたらしました。そのため、対策のレベルアップをはかるべく、12月に豪雨対策下水道緊急プランを発表しました。
—下水道の役割をPRする取り組みについてはいかがですか。
水道局から分かれて下水道局が発足して半世紀、今年が51年目になります。そこで今年を「キックオフイヤー」として、いま一生懸命下水道の「見える化」に取り組んでいるところです。
4月には、日本で最初の近代的な下水処理施設で、国の重要文化財にも指定されている「旧三河島汚水処分場喞筒(ポンプ)場施設」を一般公開するとともに、有明にある「虹の下水道館」をリニューアルオープンしました。おかげさまで、来館者が1・5倍に増え、下水道事業のPRに役立っています。
さらに、10月17日には「北多摩一号・南多摩水再生センター間連絡管」が完成し、記念式典が開催されました。
これは多摩川をはさむふたつの水再生センターを結ぶ約3・3㎞の連絡管で、震災時のバックアップ機能を確保するとともに、施設の更新や維持管理の効率化を目的に建設されたものです。
お客さまに下水道や環境への理解を深めていただくための「見える化施設」も併設されていますので、ぜひ見に行っていただきたいですね。
—最後に今後の事業運営に向けた抱負を。
下水道局には、これまで培ってきた現場力、技術力、組織力があり、これによって、さまざまな壁を打ち破ってきました。
これからもそうした力を最大限に発揮して、お客様に安全・安心、快適な下水道サービスを提供していくことが大事だと思っています。
さらに、2020年のオリンピック・パラリンピック開催も視野に入れ、ゲリラ豪雨対策、東京湾の水質改善、高度処理を一層推進するとともに、太陽光や下水熱を活用した再生可能エネルギーの導入など環境対策にも積極的に取り組んでいく決意です。
タグ:東京都 水道局 水道経営プラン2013