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NIPPON★世界一 The62nd2013年11月20日号
アピアガード
株式会社LIXIL鈴木シャッター
日本にある世界トップクラスの技術・技能―。それを生み出すまでには、果たしてどんな苦心があったのだろうか。近年、突発的に発生する集中豪雨は、建物への浸水被害も引き起こしている。急に起こる浸水に対し、迅速かつ確実に対応する手段はないか―その可能性を担うであろう商品が、新しく登場した。
(取材/種藤 潤)
ここ数年、日本各地で局地的な集中豪雨が起こり、多くの被害が出ていることはご存知の通り。特に東京都の市街地は、コンクリート中心の建物や道路に覆われ、さらには地下空間を活用した施設・建物が多いこともあり、豪雨後の建物への浸水被害が数多く見られている。
そうした浸水を防ぐ手段として、まず思い浮かぶのは「土のう」。極めてシンプルかつ物理的な対処法であり、一定の効果はあると言えるが、人力でひとつひとつ設置・撤去しなければならず、その労力はもちろん、迅速な対応が求められる浸水対策としても、決して万能とは言えない。
実はすでに我々の身の回りには別の防水方法が存在する。「防水板」といわれる装置だ。金属製の板やシートタイプのものなどさまざまあり、オフィスビルや集合住宅、地下鉄の入口など、浸水が想定される箇所に設置し、効果を発揮している。
急な豪雨でも自動的に防水板が浸水を防ぐ
とはいえ、従来の防水板も必ずしも万全ではない、とLIXIL鈴木シャッターの販売促進部防災グループ長の猪野孝志さんは語る。
「我々もこれまでシート式防水板『防水シート』とアーチ式防水板『ラクット』の2タイプの商品を販売してきました。設置が容易で、十分な防水機能を発揮しているのですが、最大の課題は必ず人が対応に関わらなければならないこと。常に防水板近くに人がいる訳ではありませんので、急な災害の際、人がいないことで対応が間に合わない場合があります」
そこで同社が新たに開発した防水板が、『アピアガード』オートバランスタイプ。降雨による増水を自動的に判断、無人の状態でも防水板が上がる仕組みになっている。
「一定量以上の雨水が侵入すると、『取水溝』から水があふれ、『集水バケット』に流れ込みます。そしてバケット内の水が一定量を超えると、その水の重みでバケットが下がり、防水板を上昇させる仕組みになっています」と、猪野さん。
電気を必要とせず作動時には安全も確保
仕組みは違えど、自動的に作動する防水板は、すでに他社でも商品化されているが、この新商品はより現実的な災害を想定、かつユーザー目線が盛り込まれているのが特徴だという。
「浸水時に電力が使えなくなることも想定されるため、『アピアガード』オートバランスタイプは、電力を使わない仕組みを採用しています。さらに自動で作動する際、近くに人がいた場合の安全面も配慮し、作動直前に回転灯が作動し、注意を促すようになっています」(猪野さん)
人を必要とせず、かつ電力も要らず、安全面も確保。これらの機能を実現するには2年の歳月がかかったと言う。
「どのぐらいのスピードで防水板が作動するのがちょうどいいのか、『集水バケット』への流れ込み方はどういう構造がいいのか……ほどよいバランスに調整するのには時間がかかりましたね」(猪野さん)
その甲斐あって発売以来、その機能を知ったクライアントからはおおむね高評価を得ており、都内でもすでにオフィスビルやマンションでの導入が決定しているという。
シャッターメーカーとして防災の事業を強化
しかし同社は日本最古の老舗シャッターメーカー。どうして防水板の商品化に着手したのだろうか。
「実はシャッターと防水板は、技術的な共通部分が多いんです。今回販売した『アピアガード』オートバランスタイプにも、シャッターメーカーとして培ってきた技術が活かされています」(猪野さん)
また、シャッターメーカーだからこそできる防水板のサービスがある、とプロモーションチームの上原奈歩さんは付け加える。
「シャッターは24時間365日、常に正常に作動している必要がある商品で、そのため年中無休のサポート体制を構築しています。このメンテナンス力を防水板でも取り入れ、いざという時の安心も提供しています」
新たに発売した『アピアガード』オートバランスタイプを中心に、今後は防災事業を会社の新たな柱のひとつとして展開していくそうだ。
「集中豪雨などが問題化し、防災に関心が高まっている今こそ、防水板を皮切りに、さまざまな防災商品を展開し、より多くの場で防災対策のお手伝いができればと思っています」(上原さん)
明日、否、今日これから起こるかもしれない災害。特に都内では切実な豪雨対策を考える上で、同社は貴重な存在となっていくことだろう。
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