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仕事に命を賭けて Vol.632013年10月20日号
警視庁 警備部災害対策課 特殊救助隊 巡査部長
杉本健太
文字通り、仕事に自分の命を賭けることもある人たちがいる。一般の人にはなかなか知られることのない彼らの仕事内容や日々の研鑽・努力にスポットを当て、仕事への情熱を探るシリーズ。警視庁といえば防犯、治安維持などがまず連想しがちだが、救出救助活動も重要な任務だ。機動隊内にレスキュー隊を配置し、東日本大震災でも活躍。そしてさらにその活動を強化すべく、2012年に全国初の専門部隊を設立。その中核を担う人物に、お話を伺った。
(インタビュー/種藤 潤)
東日本大震災を契機に救命の専門部隊を設置
2012年9月に、警備部災害対策課内に設置された特殊救助隊。その名の通り特別な救出救助の技術を持った専門部隊であり、都内全域の救助事案に対応するのが任務だ。
隊員は総勢35名。庁内屈指の救出救助の精鋭たちであり、今回取材させていただいた杉本巡査部長も、そのうちの一人だ。
「非常に狭き門ですので、選ばれたことは本当に光栄です」
警察で救助? とピンと来ない人もいるかもしれないが、警視庁ではこれまでも機動隊内にレスキュー隊を配置し、救出救助活動を行ってきた。ただ、今回のような専門部隊は存在しなかった。
そうしたなか、2011年に起きた東日本大震災により、庁内でも救出救助の強化が叫ばれ、同隊の結成に至ったという訳だ。
救出救助を行うだけでなく庁内隊員の指導も任務
杉本巡査部長を含む特殊救助隊は、3交替制で都内の災害へいつでも出動できるように待機。日頃はレスキューツールが搭載されたレスキュー車の整備や、救助を想定した訓練を中心に行っている。
また、同隊は都内だけでなく、広域緊急援助隊、国際緊急援助隊としての役割も担っているため、都外の大災害、さらには海外で起きた災害に対しても、状況によって出動する体制を調えている。
「近年、海外でも大きな地震が起きていますが、そういう現場にも、いつでも出動できるように常に準備しています」
こうした自身が救助のスペシャリストとして現地で活動する「実施」面も重要だが、一方で「指導」を行うのも大切な任務だ。
「大災害の際は、庁内の人間すべての救助事案への対応のレベルアップも必要となります。そうした隊員たちの技術指導、育成を行うのも、我々に与えられた重要な仕事です」
常に向上心を持ちチームプレーを磨く
都内だけでなく、日本全国、世界各国の災害に赴く—言い換えれば、それだけ災害現場で活躍できる高い能力を持った部隊、という証拠だ。
事実、この隊が結成される以前だが、国際緊急援助隊捜索救助の能力評価において、警察庁、消防庁、海上保安庁で編成された日本チームは、最高ランクを取得。その時、警察庁で編成されたチームの大半が、現在の警視庁特殊救助隊に所属しているという。
「専門部隊となって、救出救助の能力は間違いなく、格段に上がったと思います」
それは、専門部隊として個々が救出救助の能力を磨くことに専念しやすくなった環境もある。そしてそれ以上に、常に同じチームとして訓練ができる、というところがポイントだと、杉本巡査部長は話す。
「救出救急はチームプレー。常に仲間と連携し、場面を想定しながら訓練することはとても大切です。救助現場は、助ける我々も命懸け。その命を預ける仲間との信頼関係は、一日二日で築けるものではありませんから」
無論、個人のスキルアップが、そのチームプレーに貢献することは言うまでもない。杉本巡査部長自身、この隊に配属されてから、さらなる救助の能力アップに注力している。
「最近は海や川での救難も想定し、潜水士の資格も取りました。もっと技術を磨き、救出救助のスペシャリストとしてレベルアップしていきたいですね」
- 【プロフィール】
- 1982年、東京都生まれ。2001年、警視庁に入庁、翌年、光が丘警察署にて交番勤務。2004年より第七機動隊に。2009年に立川警察署に配置後、翌年、再び第七機動隊にてレスキュー隊に配属される。2012年に災害対策課に配置となり、同年9月、特殊救助隊設立より現職。
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