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社会に貢献するために 第5回 (株)ヒューマネクス/(株)LALLヒューマンホールディングス2013年07月20日号
来る超高齢社会に備え、企業を退いたシニア層の“第二の人生”の活用が叫ばれる昨今だが、そうした課題が注目される以前から“第二の人生”に着目し、すでにその活用を定着させつつある企業がある。そこにはこれからの社会で求められるであろう、高齢者と若者が共存するひとつの理想のスタイルが提示されていた。
(取材/種藤 潤)
オフィスや昼食の場で若者と高齢者が共に過ごす
毎月第1金曜日の昼間。午前中の仕事を終えたLALLグループのオフィスビルの会議室では、若手社員とともに、昼食をとるヒューマネクス代表取締役の田口守さんの姿が見られる。取り立てて特別なことをするわけでもなく、雑談を交わしながら食事をするのみ。しかしそこでは若手社員から自然に職場や業務に関する悩みや相談が出てくる。それに田口さんはじっくりと耳を傾け、田口さんなりの言葉で返していく。
「明確な解決策を語れるわけではありませんが、40年以上企業に勤めた経験をもとに、私だったらこうする、と自分なりの意見を述べる。要は家族でいうおじいちゃんの役割ですね(笑)」
昼食以外でも、同グループの社内には田口さんをはじめ、現役を退いたシニア層の人々の姿を見かける。勤務日は週3回などフルタイム勤務ではないが、企業で培ってきた経験や知識を元に、経理面のサポートやコンサルティングなどを行っている。
高齢者と若者が共生できる企業−LALLグループにとって今でこそ当たり前のこの風景は、今からおよそ10年前、田口さんと原川久司グループ代表が出会ったことからはじまったという。
想いを持った高齢者が共生できる場を提供
「私は40年ほど企業戦士として生きてきましたが、現役を退いてから正直何もすることがなかった(苦笑)。そんななか何気なくはじめたゴルフがきっかけで、原川代表にお会いしたんです」(田口さん)
せっかくの“第二の人生”。すべきものが見つからないものの、それでも何か社会の役に立ち、有意義に過ごしたい——そんな田口さんの“想い”に、LALLグループ代表の原川さんは触発されたと言う。
「田口さんのような“想い”を持った高齢者の方に、弊社の若手社員と共生できる場を設け、これまで培った経験や知識を役立ててもらえればと思いました」(原川さん)
そしてグループ内に「アメニティ事業」を設立。田口さんをはじめとする現役を退いた高齢者の集いの場『共生を考える会』を設け、昼食の場を中心に若手社員との交流をスタート。一方で各分野で活躍した経験や知識を元に、高齢者ならではの事業開発にも着手。高齢者でもゆっくり楽しめる海外旅行企画や、福島県いわき市での有機野菜栽培など、事業化も視野に入れつつ、高齢者が交流できる場の創出を模索した。
「正直、社会情勢の問題や我々の経験不足もあり、この2つは形にはならなかったのですが、そこから学んだことも非常に多い。何よりやりたいことを考え、話し合う場があることに意義があると思います」(田口さん)
日本にかつてあった大家族を企業の中で実現
現在「アメニティ事業」は4つの事業体を中心に構成されている。まず「高齢者と若者の共生の場」のセッティングや、高齢者の経験・知識を活かしたビジネスコンサルティングおよび雇用を行う「ヒューマネクス」。次に『共生を考える会』により立案された企画を事業化していく「アビリティコーポーレーション」。さらにそこから派生し有機野菜の販売を行う「農業法人ケイエーラボ」。そして道玄坂にて飲食店を運営する「プレジャーネットワーク」である。
今回取材させていただいた田口さんは、創業からヒューマネクスの代表取締役を勤め、今も「アメニティ事業」の中核を担っている。
「正直、当初はすぐに終わると思いましたが、気がつけば約10年。本当、ここはとても居心地がいいんですよ」
高齢者における「アメニティ事業」の存在の大きさを実感する田口さん。一方、LALLグループにとっても「アメニティ事業」は欠かせない存在になっていると、原川さんは言い切る。
「我がグループは新卒が中心なので、経験ある人との交流はとても意義あることです。上司には相談できないことも高齢の方々ならば、気兼ねなく相談できる。もちろん人生の大先輩ですから、知識も経験も豊富で、仕事的にも学ぶことが多い。言い換えれば、日本にかつてあった大家族の形を、企業内で実現してきたということです」(原川さん)
近年はグループ社員向けにはじめた弁当事業が好評で、飲食事業も新たな展開がスタート。一方でゴルフや散歩のコミュニティーをNPO化するなど、事業化とは異なる形のスタイルも構築。企業で実現する「大家族」は、今も進化中のようだ。
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