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仕事に命を賭けて Vol.612013年07月20日号
航空幕僚監部 広報室 広報班
3等空佐 赤田賢司
文字通り、仕事に自分の命を賭けることもある人たちがいる。一般の人にはなかなか知られる
ことのない彼らの仕事内容や日々の研鑽・努力にスポットを当て、仕事への情熱を探るシリーズ。
先月最終回を迎えた、航空自衛隊の広報をテーマにしたテレビドラマ『空飛ぶ広報室』をご覧
になった方も多いだろう。今号では、まさに現実の主人公にあたる人物に、実際の職務について
お話を伺った。
(インタビュー/種藤 潤)
ドラマで描かれた広報室は現実を忠実に再現
「このドラマの反響は本当に大きくて、相当な数の取材に対応しましたね」
航空自衛隊(以下・空自)の広報をテーマにしたTBS系ドラマ『空飛ぶ広報室』の放送が終盤に差し掛かった5月下旬。撮影の佳境だといいながらも、赤田3佐は疲れを微塵も感じさせず、にこやかな表情で取材に対応してくれた。
6月23日の最終回は15・3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)もの高視聴率(平均)を獲得。それにともない、空自の認知度は間違いなく上がったと言えるだろう。
ドラマを見ている方はおわかりだろうが、こうした空自全体の認知度を上げる役割が、俳優・綾野剛さん演じる空井の所属する航空幕僚監部広報室であり、現実には赤田3佐たちが行っている業務だ。
「見た目は綾野さんとは対称的ですが(笑)、ドラマの中で実務は非常に忠実に再現されています。一方でテレビ局側の要望にできるだけ対応するのも広報室の仕事。メディアと空自の現場との調整係です。雑務も多いですし、予定外なこともしばしば。でも『空飛ぶ広報室』のように形になり、しかも反響が大きいと達成感は大きいですね」
活動が理解されるからこそ命賭けの活動ができる
同ドラマの影響で、空自に広報という存在があることが広く認知されたが、それ以前は広報室そのものの存在すら知られていなかったと言う。
「今でも『自衛隊に広報なんてあるの?』という認識の人もいます。でも企業の広報と同じで、我々も広報活動をする必要があるのです」
企業の広報と違いがあるとすれば、彼らの活動の重要性を国民に理解してもらうことが、空自に限らず自衛隊の任務には必要不可欠だからだ。
「我々自衛隊は“専守防衛”が基本ですが、有事になれば出動しなければなりません。この際、必要なのは国民の理解と支持です。そのためには、我々が日頃どのような活動をしているのか、そして皆様の日常生活を守っているということを理解していただかなければなりません。一見自衛隊の活動と縁遠そうですが、我々広報室の活動は極めて重要だと、私は考えています」
所属する隊員全員が航空自衛隊の広報官
航空幕僚監部広報室は2つの班によって構成される。赤田3佐が所属する「広報班」は、空自の活動を商品と見なし、各メディアに企画等を提案、メディアミックスにより空自の認知度を上げていく“攻め”の広報だ。一方「報道班」は、主に報道関係のメディアに対応する。よって“守り”の広報と呼ばれている。
「今回のドラマのように“攻め”の部分のほうが目立ちますが、“守り”が安定して対応してくれることも、空自への信頼や認知度向上には不可欠です。“攻め”と“守り”のバランスがあってこそ、理想の広報活動ができるのです」
そのなかで赤田3佐は、ドラマでの片山1尉のように基地の広報班長を務めたいわば広報のスペシャリストといえる……が、広報室には特定のスペシャリストは必要ないと、赤田3佐は断言する。
「我々の組織では、広報官は定期的に入れ替わりますから、担当者によって仕事の質にムラがあってはなりません。自衛官なら誰でも広報のスペシャリストになれるシステムが広報室にはありますし、私もほかの担当者がいい広報ができるよう、常に人脈やノウハウを共有するようにしています」
空自の全隊員が広報官―それが究極の広報活動だと、赤田3佐は付け加える。
「仮に私たちが空自の認知度を上げたとしても、実際に接する隊員がひどい対応をしたら、何の意味もありませんよね? やはり一番重要なのは現場。それをメディアを活用して支えるのが、我々広報室の仕事なのです」
- 【プロフィール】
- 1974年神奈川県生まれ。防衛大学卒業後、1998年航空自衛隊に入隊。百里基地にて航空機整備を担当した後、人事・広報担当となり、入間基地にて広報班長として現地の広報活動に従事した。その後航空幕僚監部にて人事計画課などで勤務し、2011年8月より現職。民間の広告代理店での研修も経験している。
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