

第26回 地元の特産品としての復活をめざす
拝島ネギ
取材/細川奈津美
取材協力/江戸東京・伝統野菜研究会代表 大竹道茂
大竹道茂の江戸東京野菜通信 http://edoyasai.sblo.jp/

約3000坪の農地を持つ鈴木さん宅は勇作さんで7代目。昭島市の農業経営者クラブの会長でもある
昭和の初期に水戸で種を入手し、拝島で栽培を始めたことから名づけられたと言われる「拝島ネギ」。生では辛みが強いが、熱を加えると甘味が増すので鍋料理には最適だ。昭島市内では、拝島ネギの栽培が盛んだったが、葉が柔らかいため初秋の長雨による病気などに弱い拝島ネギにとって代わり、育てやすい新品種が出回るにつれ、拝島ネギを栽培する農家も減少していった。
昭島市では、この拝島ネギをもう一度市の特産品として復活させようと、平成21年に都の農林総合研究センターに種の品質調査を依頼。昨年厳選された種ができ、市内の農家7軒に配布された。
宮沢町の農家・鈴木勇作さん(63)もその一人。取材日は梅雨入りしても雨が降らない日が何日も続いていた時だった。
「本当はこの時期には苗がもっと伸びていないといけないんですけど、こんなに雨が降らないんじゃね……」と降りそうで降らない空を恨めしそうに見ながら話す鈴木さん。春に種が蒔かれた拝島ネギは、いかにも水が欲しそう。それでも必死に伸びようとしていた。
昨年、先行して拝島ネギを栽培した生産者が直売所で販売したところ、柔らかくて美味しいと評判も上々だったという。

鈴木さん宅の田んぼでは、親子米つくり教室の一環で市内の親子が田植えを行っている
「あと10センチくらい伸びたら定植します。今年の秋の農業祭には立派な拝島ネギを作り、昭島の特産品として出せるようにしたいですね」
このほか鈴木さんは、昭島市米生産者組合と市が協働で実施している親子米つくり教室にも協力。応募のあった市内の親子に種まきから田植え、草取り、稲刈りまでの指導を鈴木さんの田んぼで行っている。
「つい先日田植えが終わったばかり。10月に稲刈りをした後、皆さんに少しずつお米を配るのですが、種まきから参加している子どもたちは“お米ができるまではこんなに大変なんだ”と実感してくれます。そうやって農業のことを少しでもわかってもらえるのがうれしいです」