HOME » NEWS TOKYO バックナンバー » 【座談会】高齢者住宅対策 特別座談会
特集
2013年5月20日号

 

高齢者住宅対策特別座談会
座談会出席者:

司 会 株式会社アライブメディケア 専務取締役 三重野真 氏

 高齢社会の到来に伴い、高齢者が安心して快適に生活できる場としての住宅対策はきわめて重要な課題となっている。高齢者の居住の場については、これまでの単なるスペースの提供から、近年はそれに加えて介護サービス・医療サービスが適切に提供されるいわゆる「ケア付き住まい」の推進という考え方が主流を占めている。
 現在、特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、都市型軽費老人ホームなどの施設のほか、サービス付き高齢者向け住宅やシルバーピアなどの住宅の推進が図られている。これらの多くは社会福祉法人や株式会社など民間事業者が担っているが、運営にあたっては要介護者や認知症高齢者の増加、また「終のすみか」としての看取りへの期待など利用者の状態や社会の状況に応じた対応が求められている。
 本紙は、これらの問題に光を当て、高齢者住宅対策の推進に資することはきわめて意義あるこ とと考え、関係者の座談会を企画した。

都の福祉施策における高齢者の住まい
〜高齢者保健福祉計画と高齢者居住安定確保プラン〜

三重野 まずは自己紹介からということで。

 私は、企業の中で有料老人ホーム事業を担当しており、また高齢者住宅経営者連絡協議会(高経協)が入居一時金の問題について建議を挙げた時の委員長を務めた経緯もありまして、今日は司会ということで参加させていただきます。

中山 私は、東京都福祉保健局で高齢者の福祉保健を所管しております。

 介護保険制度に基づく施策や元気な高齢者のための施策を行うとともに、介護基盤の整備という大きな課題に取り組んでおります。

福山 私は、昨年6月に全国有料老人ホーム協会(有老協)の理事長に就任いたしました。協会自体は老人福祉法に規定された団体で、この4月には公益法人として認定されました。

 私どもの大きな役割は、一つにはご入居者の保護、それから入居を検討している一般消費者の皆さんに対する情報発信、それともう一つ業界の事業者の方たちをサポートすることです。

 それによって、業界が健全に発展していければと考えております。

市原 私は、一昨年の6月に全国特定施設事業者協議会(特定協)の代表理事に就任いたしました。

 特定協は、特定施設(有料老人ホームやケアハウスなどのうち、介護保険事業所の指定を受けた施設)事業の健全な発展のために各事業者が切磋琢磨し、交流することを支援しています。

 全国での組織率は、法人が約24%、施設ベースで44%加盟。東京都では、547施設中417加盟していますので、加盟率は76%強です。

三重野 それでは、中山部長から都の福祉政策について、第五期東京都高齢者保健福祉計画を念頭にご説明いただけますか。

中山 東京都は高齢化が現在急激に進んでいる自治体です。将来の高齢化を見据えたさまざまな施策を、今から可能な限り行っていく必要があると考えています。

 昨年策定した東京都高齢者保健福祉計画では、「介護サービス基盤の整備」、「在宅療養の推進」、「認知症対策の総合的な推進」、今期の大きな柱である「高齢者の住まいの確保」、「介護人材対策の推進」、「元気高齢者を中心とした地域の担い手としての高齢者支援」という6つの大きな柱を立てて施策を行っています。

東京都の施策「東京都高齢者保健福祉計画」冊子「高齢者の居住安定確保プラン」

 それから、住まいに関しては都市整備局と福祉保健局が共同で策定した「東京都高齢者居住安定確保プラン」があります。これは、「高齢者向けの賃貸住宅・老人ホームなどの供給促進」を目指し、サービス付き高齢者向け住宅や、特別養護老人ホーム(特養)、介護専用型有料老人ホーム、認知症高齢者グループホーム、都市型軽費老人ホームの設置を、目標値を定め都の補助金も活用しながら設置促進を図っていくものです。

 この中で、介護専用型有料老人ホームについては特別養護老人ホームの機能を補完、もしくは代替する施設として、定員1人あたり200万円の整備費を補助しています。平成21年度からスタートして、計画中のものも含め8件くらい実績があります。こうした補助を行っているのは、おそらく東京都だけだと思います。

 そういう意味で介護付き有料老人ホームは、現実に特養と同じく重要な施設だと見ていますので、こういった補助制度を使いながら促進を図っていくということです。

 

特定施設の総量規制について
〜都のスタンスは広域的自治体としてもっと特定施設の整備が必要〜

三重野 有料老人ホームを特養に代わる重要な施設として位置付けていただいたことは非常にありがたいのですが、一方で総量規制ということが問題になっています。都としては総量規制についてどのように考えてらっしゃるのでしょうか。

中山 特定施設は、計画上では圏域ごとに必要数を見込んでいて、可否についてはその圏域を構成するそれぞれの自治体の判断に任せています。

 ですから、見込み数を上回った状態でも地元の自治体が必要と判断すれば、それを尊重します。逆に、必要ないと自治体が判断した場合が問題になるのですが、都としてはその圏域全体として枠があるということであれば、引き続き自治体と十分な調整を図ることを指導はしますが、指定は拒否していません。圏域としても足りている、地元ももちろん駄目だという場合は、それを覆してまで指定することはありません。

 しかしながら、広域的自治体として都全体を見れば、まだまだ足りない状態ですので、もっともっと整備が必要だというスタンスです。

三重野 プラスの場合のほうが多いということですね。

中山 そうですね。私どもとしては、できるだけ事業者の計画については尊重していくというのが基本的な立場です。

市原 急速な高齢化の中で、行政の立場、事業者の立場で、情報公開をし、意見調整をしながら、住みやすい社会を作っていくというスタンスを維持することが大切だと思います。

 ですから、総量規制についても法律で縛られるのではなく、柔軟性を持って考えていただけたらありがたいと思います。

中山 現在の介護保険制度では、給付費の増大は保険料にダイレクトに跳ね返る仕組みとなっているので、次期改正において保険料をいくらに設定するかは、保険者である区市町村にとって非常に悩ましいというか頭を使う。

 その前提となるのが先ほど申し上げた介護サービス供給の必要見込み数なんですよね。区市町村が適切なサービス見込み量を設定できるよう、都としても働きかけていきたいと思います。

 

認知症対応の受け皿として
〜家族のレスパイトケアとしても期待される有料老人ホーム〜

三重野 都は、オレンジプランに先駆けて認知症のケアに取り組んでらっしゃいました。改めて先進的だなぁと思いましたが、やはり助けがあっても、家族が24時間認知症の方と一緒にいるのは精神的ストレスが高いと思います。

 そこで、有料老人ホームや特定施設といったプロが支え、そこに家族がくるという関係が成り立つと思うんですが、認知症の取り組みについてはいかがですか。

福山 私どもの施設は介護付きですので、入居いただいている方の半数以上は認知症の方です。改善はなかなか難しいでしょうが、悪化を遅らせるいろいろな取り組みは行っています。

 公文の学習療法とかアクティビティや運動など、業界全体としても積極的に取り組んでいかなければならないと思っています。

三重野 認知症は病気なので、本人も不安でしょうがない。だから、いつも誰かが側にいてあげて、確認したいときに確認ができる状況が望ましいわけですが、在宅ではやはり認知症はハードルが高いと思います。

中山 認知症対策は、高齢者保健福祉計画の6つの柱の一つであり、今年度は総額で約33億円の予算をつけています。都としては、認知症の方が可能な限り在宅で生活できる環境を整えていくことが重要と考えます。ただ現実には家族の負担が重くなっていることも確かです。

 そういった方の一時的なレスパイト(休憩・休息)ケアとして、有料老人ホームなり特定施設には大いに期待したいところです。

 25年度は家族介護者の負担を減らすために、認知症疾患医療センターの近くに家族会の交流できる場を設けて、レスパイトができるような仕組みを実施する予定です。

 

看取りの場としての有料老人ホーム
~介護と医療、その先にある看取りということ~

三重野 有料老人ホームは、介護と医療が住宅の中で両方機能しているというのが一つの特徴だと思いますが、医療・看取りの取り組みについてはいかがですか。

市原 有料老人ホームでも特定施設でも、看取りに対しては積極的に取り組んでいく方向でしょう。

 どの施設も、職員のレベルを上げる、入居者とのコミュニケーションを良くして最期をどうするかというコンセンサスを図っていく、というような看取りの対応を強化する努力をしています。

福山 有老協の意識調査でも有料老人ホーム入居者の約6割が、「このホームで看取ってほしい」というニーズをお持ちです。また入居者の「病院で死にたくない」といったニーズも非常に多くなってきました。

 そのニーズにきちんと答えていかなければならないというのが、事業者として当然のことで、サービスの領域を広げていく、職員の質を上げていくことは、今まで以上に強化していかなければならないと思っています。

中山 今日現在で特定施設は都内547か所あるんですけれども、夜間看護体制加算を取られているところが385施設、看取り介護加算を取られているところが300施設。この数字からも看取りに対して一生懸命取り組まれていることは分かりますね。

三重野 最近は、医療の側から自然に亡くなるのはいいことだと、肯定的な表現をしていただいくのはすごくいいことだと思うんですけれども、やはり早く病院に連れてくべきじゃないかというような逡巡があるのが事実ですよね。

中山 都の医師会の先生たちと話をすると、やはり普通の生活の場で人生を全うすることが理想であり、当たり前のことだと、どなたもおっしゃいますね。

 ところが国民の意識としては、最期の最期は病院だという考え方が8割を占めており、医師会としては、その考えを変えたいと言っておられます。私も同感です。

福山 現在は医療機関も在宅向けに非常に力を入れてらっしゃいますが、有料老人ホームもそういったところと上手く連携を取りながら、看取りに取り組んでいかなければならないと思います。看取りはまさにドクターのご支援をいただかない限りはできませんからね。

 

入居一時金問題と消費者保護
~行政と事業者と消費者の新しい関係性の構築に向けて~

市原 利用権という住まいとしての不安定性についていろいろ指摘されましたが、事業者としては、住まいの安定だけでなく、いかにして最後まで責任を持ってサービスを提供するかということ考えているんですよね。

 ただ、入居者の権利を保障することについてはさらなる取り組みが求められていると思います。

高齢者住宅対策についての座談会風景

左から順に:市原俊男氏、福山宣幸氏、中山政昭氏、三重野真氏

三重野 短期解約特例や前払金の保全措置など、消費者保護の観点から2010年12月に消費者委員会の建議が出され、老人福祉法も改正されて厳しくなりましたが、まじめにやってきた事業者にとっては非常にありがたいことでしたね。

中山 老人福祉法が改正になって、都でもガイドラインをつくりましたが、これは有料老人ホームの運営に関して行政の指導を強めるというものではなくて、良好な質の高い運営を、今後とも主体的に行っていっていただきたいという趣旨なんです。そして、業界全体として、さまざまな意味で底上げをしていってほしいと思っています。

三重野  入居一時金の初期償却の問題など、細かいところでは東京都と業界で意見の相違があるところはありますが、おっしゃるとおり底上げは非常に重要なキーワードだと思います。

市原 昨年度には、厚生労働省・国土交通省、東京都などの地方自治体、消費者団体の皆様にもご協力を得ながら、業界団体「―高齢者向け住まいを選ぶ前に―消費者向けガイドブック」を作成し、事業者に契約前の十分な説明を促しています。

福山 有老協では、有料ホーム110番や苦情処理委員会を開いて、全国の苦情内容をきちんともんで、フィードバックしていますので、行政ともタイアップしていく価値があるのではないかと思っています。

市原 事業者の加盟率を上げて行くとともに、入居一時金の算定根拠など契約内容に関する説明責任についての業界、事業者の取り組みを東京都にもさらにご理解いただけるよう、努力していきたいと思っています。

中山 急激に高齢化が進んでいる東京にあって、それに備えるための介護基盤の整備は一番の課題です。都としては地域包括ケアシステムの中で、有料老人ホームあるいは特定施設といった施設の設置促進を図るというのが基本スタンスです。

 東京のこの高齢社会に備える施策のために、あらゆる民間の皆さまには、ぜひともパートナーとして一緒にやっていただきたいと思っています。

 

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